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人権問題を考えていただくために

高齢者に関する人権侵害の現状と課題

フィオーレ南海 施設長 柴尾慶次

1.高齢者虐待とは

 防止法は、第2条において対象者とその虐待内容を定義している。
 高齢者を65歳以上と限定した法律になっていて、実際に対応する地域包括支援センター等が第2号被保険者として対応している40歳から64歳の障がい者には、具体的な生活相談までは受けることができても、防止法での対応は想定されていない。法の隙間が存在し、防止法の附則において、「障がい者に関する防止法の速やかな検討と必要な措置」を謳っているのみである。
 また、養護者に関する虐待の内容も、分類列挙を行なっており、明確な人権規定とはなっていない。
厚生労働省老健局が平成18年4月付けで、「市町村・都道府県における高齢者虐待への対応及び養護者支援について」という、いわば「解釈通知」のような冊子を作成している。その中において、高齢者虐待の定義を明確に、「高齢者が他者からの不適切な扱いにより権利利益を侵害される状態や生命、健康、生活が損なわれるような状態に置かれること」と述べ、これぞ人権規定というようなものを示している。
 また、その下段において「地域支援事業の一つとして、市町村に対し、高齢者に対する虐待の防止及びその早期発見のための事業その他の高齢者の権利擁護のための必要な援助を行う事業の実施を義務付けて」いる。「このため、市町村は、高齢者虐待防止法に規定する高齢者虐待かどうか判別しがたい事例であっても、高齢者の権利が侵害されていたり、生命や健康、生活が損なわれているような事態が予測されるなど支援が必要な場合には、高齢者虐待防止法の取扱いに準じて、必要な援助を行なっていく必要」があるとしている。つまり、人権規定は、準用を可能にする。