2013年度(平成25年度)人権侵害事象(差別事象を含む)
はじめに(ご覧いただくみなさまへ)
1.2013(平成25)年度の人権侵害事象(差別事象を含む)の集約・分析について
大阪府と一般財団法人大阪府人権協会は、大阪府内における人権侵害事象(差別事象を含む)の傾向を把握するため、「差別事象集約会議」で集約された2013(平成25)年度分の人権侵害事象(差別事象を含む)について、整理をおこないました。
ここに掲載している件数については、「差別事象集約会議」で事実関係や差別性等を把握し、確認した上で、集計した件数のみを掲載しています。
(1)集約の対象機関
大阪府内の市町村人権担当部局、大阪府内の市町村教育委員会、一般財団法人大阪府人権協会
(2)集約方法
①集約方法は、大阪府内の各市町村及び公立学校において、2013(平成25)年4月1日から2014(平成26)年3月31日までの間に発生した人権侵害事象(差別事象を含む)のうち、各市町村人権担当部局や市町村教育委員会から大阪府人権局、大阪府教育委員会、大阪市市民局、大阪市教育委員会に報告された人権侵害事象(差別事象を含む)を取り扱っています。
②その人権侵害事象(差別事象を含む)について「差別事象集約会議」(※1)において構成団体で確認された人権侵害事象(差別事象を含む)の件数と事象内容を、大阪府人権局に集約しました。
※1「差別事象集約会議」構成団体
大阪府人権局・大阪府教育委員会、大阪市市民局・大阪市教育委員会、(一財)大阪府人権協会
③人権侵害事象(差別事象を含む)は、13個の人権侵害別に分類(※2)し、その発生状況(※3)ごとにまとめています。
※2 人権侵害別の分類
【部落差別】【外国人差別】【障がい者差別】【女性差別】【野宿生活者に対する人権侵害】
【職業や雇用(労働問題)における差別や人権侵害】【子どもに対する人権侵害】【高齢者に対する人権侵害】
【エイズ・HIV感染者に対する人権侵害】【ハンセン病回復者に対する人権侵害】
【犯罪被害者に対する人権侵害】【セクシュアル・マイノリティに対する人権侵害】
【刑を終えて出所した人々に対する人権侵害】【その他の人権侵害】
※3 発生状況別の内訳
「落書き」:壁や電柱などへの落書きのほか、本等に書かれたものを含んでいます。
「投書」:特定の個人・団体や機関への郵送や投げ込み(電子メール含む)などです。
「発言」:会話の中や一方的に発言しているものなどです。(電話での発言は「電話」に入ります)
「インターネット」:インターネット上での書き込みやホームページ等で発覚したものです。
「電話」:電話による問い合わせや発言などです。
「貼り紙」:不特定多数の人に見られる可能性があるものです。
「その他」:上記以外のものです。
④「全体の人権侵害事象別件数」と「全体の人権侵害別件数」は、1件の人権侵害事象に複数の事象(部落差別と外国人差別など)が含まれるものがあるため一致しません。なお、明らかに同一人物によるものと思われる連続事象は1件として数えました。
(3)集約内容の整理作業と傾向分析作業
大阪府人権局に集約された件数と事象内容を大阪府人権協会に提供され、「人権相談事案等集約・分析企画委員会」(人権侵害事例集約・分析作業部会)において、全体の件数の整理や傾向分析作業、事象内容のうち特徴的な事象内容の差別性などの傾向分析作業等をおこない、「人権相談事案等集約・分析企画委員会」で検討して情報発信しています。
次のとおり掲載しています。
①これまで5年間(2009・平成21年度~2013・平成25年度)の全体の件数を掲載しました。
②2013(平成25)年度分に発生した発生状況別と人権侵害別に整理しました。
(4)掲載内容に関するご注意
ここで掲載している人権侵害事象(差別事象を含む)は、一つひとつが重大な事象といえるものであり、件数の多少によって推し量るものではありません。また、ここで把握している件数は氷山のほんの一角にすぎません。
しかしながら、少しでも大阪における人権侵害事象や差別事象の現実を知る手がかりとなり、また人権侵害救済、差別撤廃にむけた取り組みの基礎資料として活用いただける一助となれば幸いです。
1.集約した人権侵害事象(差別事象を含む)の件数
(1)ここ5年間の発生状況別の全体件数
①ここ5年の間に発生した差別事象の内容の傾向
●「落書き」と「発言」が多い
ここ5年間の発生状況別を見ると、「落書き」が最も多く305件、次いで「発言」が237件となっており、この2つの発生状況が毎年、多く発生している傾向にあります。
●ここ5年間では減少してきている
全体的には減少傾向にあります。しかし、2012(平成24)年度と2013(平成25)年度とを比べると、「発言」と「電話」で発生した差別事象の報告数は前年度に比べて数件、増えました。
表1 2009年度~2013年度の5年間で発生した差別事象内容 *実件数
*これらの件数は、大阪府「差別事象集約会議」へ集約された件数であり、大阪府内すべての事象を集約したものではありません。
*これらの件数は、大阪府「差別事象集約会議」へ集約された件数であり、大阪府内すべての事象を集約したものではありません。
(2)2013・平成25年度の人権侵害事象(差別事象を含む)の特徴
①2013・平成25年度の発生状況別に見た傾向
2013・平成25年度における発生状況別を見ると、「発言」が最も多く39件で全体の33.9%を占めています。次いで、「落書き」が34件で29.6%となっています。
表2 2013・平成25年度「発生状況別」
*これらの件数は、大阪府「差別事象集約会議」へ集約された件数であり、大阪府内すべての事象を集約したものではありません。
②2013・平成25年度の人権侵害別の割合 *延べ件数
2013・平成25年度においては、全体で176件(延べ件数)もの人権侵害事象(差別事象を含む)がありました。また、「セクシュアル・マイノリティ」に関する差別事件が確認できました。
表3 2013・平成25年度「人権侵害別」
*一つの事象で複数の差別(部落差別と外国人差別など)が含まれている場合は、それぞれ1件とカウントしています。
これらの件数は、大阪府「差別事象集約会議」へ集約された件数であり、大阪府内すべての事象を集約したものではありません。
※4 本ページにおいては、人権侵害別の分類ごとの表記を簡略して、次の通り表しています。
【部落差別】【外国人差別】【障がい者差別】【女性差別】→そのまま表記
【野宿生活者に対する人権侵害】→【野宿生活者】
【職業や雇用(労働問題)における差別や人権侵害】→【職業や雇用(労働問題)】
【子どもに対する人権侵害】→【子ども】
【高齢者に対する人権侵害】→【高齢者】
【エイズ・HIV感染者に対する人権侵害】【HIV感染者】
【ハンセン病に基づく差別や人権侵害】→【ハンセン病】
【犯罪被害者に対する人権侵害】→【犯罪被害者】
【セクシュアル・マイノリティに対する差別や人権侵害】→【セクシュアル・マイノリティ】
【刑を終えて出所した人々に対する差別や人権侵害】→【刑を終えて出所した人々】
【その他の人権侵害】→【その他】
人権侵害別では、「外国人差別」が75件(42.6%)と最も多く発生しました。
次いで「部落差別」が68件(38.6%)と多発しています。この2つの事象は過去5年の間においても多発しており、「部落差別」と「外国人差別」の両方が書かれた「落書き」や「貼り紙」が見つかっています。
また、「障がい者差別」が18件(10.2%)、「野宿生活者」に対する事象が5件(2.8%)発生しており、「セクシュアル・マイノリティ」が初めて確認されたことが特徴的でした。
*これらの件数は、大阪府「差別事象集約会議」へ集約された件数であり、大阪府内すべての事象を集約したものではありません。
3.2013・平成25年度の人権侵害(差別事象を含む)の発生状況別の傾向
(1)部落差別
表4-① 2013・平成25年度「部落差別」
2013・平成25年度に発生して確認された部落差別は
68件で、「落書き」が27件(39.7%)と最も
多く発生し、次いで「電話」が13件(19.1%)、「発言」が10件(14.7%)でした。
内容としては、同和地区への忌避意識による同和地区の所在地がわかる図書や所在地を調べる問い合わせや身元調査、差別表現の文書の掲示、えせ同和団体から高額な書籍購読の強要をおこなう差別助長行為が確認されました。
また、前年度に比べると「落書き」と「電話」、「貼り紙」が増加しました。部落差別と同時に、外国人や障がい者への差別的内容が確認される事象が多く、これらの事象の中には地域社会や日本から排除しようとするものがありました。
*これらの件数は、大阪府「差別事象集約会議」へ集約された件数であり、大阪府内すべての事象を集約したものではありません。
表4-② 過去5年間の「部落差別」の発生状況
*これらの件数は、大阪府「差別事象集約会議」へ集約された件数であり、大阪府内すべての事象を集約したものではありません。
(2)外国人差別
表5-① 2013・平成25年度「外国人差別」
2013・平成25年度に発生して確認された外国人差別は75件あり、発生状況を見ると「落書き」などの匿名性のある方法によるものが多
く、内容では在日コリアンを地域社会から排除しようとするものが確認されました。
発生状況別の内訳としては、「落書き」が30件(40%)と最も多く占めています。次いで「発言」が13件(17.3%)
となっています。
前年度と比べると、「落書き」は減少したものの、「落書き」以外の「貼り紙」「投書」「発言」「インターネット」「電話」では増加しています。
表5-② 過去5年間の「外国人差別」の発生状況
*これらの件数は、大阪府「差別事象集約会議」へ集約された件数であり、大阪府内すべての事象を集約したものではありません。
(3)障がい者差別
表6-① 2013・平成25年度「障がい者差別」
2013・平成25年度に発生して確認された「障がい者差別」は18件であり、そのうち14件は教育委員会で 確認されました。 特徴としては、部落差別と外国人差別とが同時に発生した書き込みや入居拒否につながる発言などがありました。 発生状況別では、「発言」が最も多く13件(72.2%)を占め、次いで「貼り紙」が2件(11.1%)となっています。前年度と比べると、「発言」が4件増加しています。
*これらの件数は、大阪府「差別事象集約会議」へ集約された件数であり、大阪府内すべての事象を集約したものではありません。
表6-② 過去5年間の「障がい者差別」の発生状況
*これらの件数は、大阪府「差別事象集約会議」へ集約された件数であり、大阪府内すべての事象を集約したものではありません。
(4)野宿生活者に対する人権侵害
表7-① 2013・平成25年度「野宿生活者」
2013・平成25年度に発生して確認された「野宿
生活者」は5件発生しており、その内訳は「発言」が2件(40%)、「落書き」「投書」「インターネット」が1件ずつ確認されました。
内容としては、偏見をあおり地域社会からの排除しようとするものでした。
前年度に比べると、昨年度から確認された「発言」が少し増え、「インターネット」が初めて確認されました。
また、「投書」は2011・平成23年度から3年間続いて確認されました。
*これらの件数は、大阪府「差別事象集約会議」へ集約された件数であり、大阪府内すべての事象を集約したものではありません。
表7-② 過去5年間の「野宿生活者」の発生状況
*これらの件数は、大阪府「差別事象集約会議」へ集約された件数であり、大阪府内すべての事象を集約したものではありません。
(5)その他の人権侵害
2013・平成25年度における、「(1)部落差別」から「(4)野宿生活者に対する人権侵害」に対する人権侵害までの4つの人権侵害以外では、発生報告がなかった「セクシュアル・マイノリティ」に対する人権侵害が1件発生したとの報告があったのが特徴的です。
また、発生状況別でみると、「発言」が5件と最も多く発生しています。なお、人権侵害別の「その他」の内訳は、ツイッター上において沖縄出身であるとみなしての脅迫や排除する差別書込みなどです。
表8 2013・平成27年度の「その他の人権侵害」の発生状況
*これらの件数は、大阪府「差別事象集約会議」へ集約された件数であり、大阪府内すべての事象を集約したものではありません。