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具体的な人権相談事例

DV加害者の認識がない高齢の夫から、妻の居場所を教えてほしいとの相談

<相談のあらすじと対応のポイント>

  • キーワード:配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律、傾聴
  • 相談者:夫からの相談
  • 家庭状況:夫(相談者、70代後半)、妻(70代前半)、息子(38歳、前妻との子、連絡とれない)
  • 相談の主訴:DV被害者である妻の行き先について知りたい

          家庭状況の図


●相談の経過

  • 夫が人権文化センターの相談所へ来所し、面接相談を行った。

●相談内容および生活歴

  • (1)相談につながった経路・きっかけ
    • 妻が他市で夜中に徘徊しているところを警察が巡回中に保護し、自宅へ送迎したものの、夫の暴言などから警察がDVの可能性ありと判断し、妻を保護。警察は妻を居住市へ通報し、妻は一時保護施設へ入所。現在は高齢者施設に入所。
    • 夫は妻が帰宅しないことから一時保護をされたとわかる。妻が保護されたことを知り、居場所を教えてほしいと市高齢福祉課に来所し、人権推進課へ連絡が来てつながる。
    • 夫は妻を返してほしいという相談で来所。相談者が加害者であるため、教えることはできないと回答するとともに、今後の生活について人権相談窓口で対応。
  • (2)背景・経緯
    • 家庭状況
      • 夫婦とも高齢で、2人だけで生活している。現在は夫のみひとり暮らし。
      • アパート住まい。
      • 前妻との間に一人息子がいるが、離婚後から会っていない。
      • 昔かたぎ風な人物。
      • 面倒見がよく世話焼きタイプで頑固な人で、妻も若いころから面倒をみてきたという意識が本人にはある。
      • DV加害者の認識はない。長年勤めた工場を退職しているが、健康で元気である。一人で生きる力はあり、介護サービスは現状必要ない
      • 人付き合いをあまりしない人。仕事はしていない。
      • 疾病等の有無は不明。
      • 現在は、高齢者施設に措置入所しており、帰る意思は示していない。ただし、離婚についての意思も示していない。

●対応

  • 相談員として、まずは傾聴、相手の気持ちを静めること、行き先については誰も答えられないこと等、丁寧に対応していった。時間をかけて相談に応じることで、関係性もでき継続的な相談対応となる。当初は毎週1回(約2時間)の相談を受けていたが現在は1~2回/月程度。夫は一人で不安になったときや怒りが出てきたときに来所。現在は妻が帰ってこないことはどうしようもない、行政に言ってもダメとあきらめの気持ちを持っている。人権協会の相談には夫と同じ世代で男性の相談員であることから話しやすく、世間話もする関係にある。しかし保護したと思っている市高齢介護課には不満がある。
  • 地域包括支援センターや健康福祉課、社会福祉協議会とも連携して支援体制があることを紹介して、少しずつ関心をもってもらった。同年代の方との関係づくりのため、地域のふれあい喫茶や高齢者活動なども紹介を行った。また、地域包括支援センターを中心に地域ケア会議を実施し、ケース検討を行い民生委員や校区福祉委員のメンバーにより見守り活動を実施することが決定した。

●評価および今後課題

  • 本人に妻の居場所を伝えることが出来ないことを伝えるなか、本人の気持ちを静めていくことが必要な難しい相談対応事例である。DVを行った本人を否定するのではなく、しっかりと傾聴、受容するなかで相談員との関係性が構築され、継続相談へとつながったのだと思われる。本人の今後の生活支援として、地域包括支援センターを中心に見守りネットワークを構築し、継続的支援に結び付けている。
  • 今後は、継続的な相談対応の実施とともに、本人の生活や身体状況が変化したときの対応などについて整理しておく必要がある。また今後、妻が離婚の決意や本人が死亡した際に本人の財産等の分与などの問題も発生するため他機関との連携も必要となる可能性もある。


●連携が想定される資源

  • 地域包括支援センター
  • 市社会福祉協議会および校区福祉委員
  • 民生委員
  • 高齢者施設
  • リーガルサポート(後見支援センター)*司法書士を活用した財産分与に関する資源

●利用が想定されるサービス

  • 高齢者見守りネットワーク