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人権が尊重される社会をめざして ~提言~

(2)人権相談システムの充実に向けて

1.人権相談ネットワークの確立

 人権にかかわる相談は、多種多様であるため、1回の相談で複数の人権侵害について相談されたケースや複数の要因が複雑に絡み合ったケースなどがあり、これらの解決には単一の相談機関だけでは困難な場合が多くあります。こうした相談に迅速かつ的確に対応するためには、身近で当事者の立場に立った、きめ細かな相談窓口の整備とともに、行政機関だけではなく、柔軟で機動的な取り組みをしているNPO等さまざまな団体とのより一層の連携、共働を図り、こうした相談機関が密接に連携・協力するための、ネットワークシステムの確立が必要です。
 また、これら相談窓口がより相談者に信頼され安心して相談できる窓口として有効に機能するためには、相談者が真に望む解決が図られているかなど、相談者の視点に立った相談体制(ソフト・ハード面等)の点検・評価システム等を構築し、相談体制の質的向上につなげていくことが求められます。

2.人権相談員の資質の向上

 人権にかかわる相談は、複数の要因が複雑に絡み合っているものも少なくないことから、相談者の立場に立って解決のための手立てを本人が主体的に選択できるよう、きめ細やかな対応が求められます。そのため、人権相談を実施するに際して必要な知識や技能を幅広く修得し、相談担当者の専門性の確立を図る研修に加え、相談員の実践能力の向上を図り、専門性のより一層の向上を図るためのスキルアップ研修などが必要です。

3.援助者(相談員)の支援

 人権相談にあたっては、人権侵害を受けた相談者の気持ちを受け止め、サポートする能力が求められていますが、一方で、相談者の気持ちを理解しようとする援助者(相談員)の思いが強ければ強いほど、援助者(相談員)は共感疲労や二次的ストレスなどを受けやすいと言われています。援助者(相談員)の共感疲労やストレスを軽減するためには、援助者(相談員)自身が心身に余裕を持って相談者の話を聴くとともに、相談者の力を信頼し、相談者の自己決定を尊重しながら、相談者の歩みに沿ったサポートを展開することが、対等で継続的な援助関係の維持につながります。
 援助者(相談員)相互の経験交流(会)などを通じて経験を分かち合うとともに、スーパーバイズする機能やカウンセリングマインドを備えた新たな人材を養成することによって援助者(相談員)の心のケアを図るなど、援助者(相談員)のための支援を計画的に行っていくことが求められます。

4.事例分析手法の確立

 人権相談には、人権相談を通じて人権侵害の実情や課題、ニーズの把握や、相談に対する解決方策を蓄積する機能を有しており、これらの機能を充実させることが必要です。また、相談を通じて現れた課題・問題点を解決するために、現行の施策やシステムの改革が必要になることや新たな施策やシステムを創出しなければならないこともあります。こうしたことから、これからの人権施策を有効かつ効果的に推進していく上でも人権侵害等の実態把握機能や、相談を通じて明らかとなる課題に関する問題提起機能の充実が求められます。
 事例集約分析にあたっては、相談事業の情報化(ハード・ソフト導入)を推進することにより、相談事例の集積や相談員のスキルアップによる相談対応の充実を図るとともに、相談事業を通じた行政ニーズの的確な把握が必要です。また、相談事業の情報化を通じて、人権ケースワーク事業、総合生活相談事業、地域就労支援事業、進路選択支援事業の相互連携を図ることにより、より効果的な相談体制の構築を図ることが期待されます。

5.人権相談・救済システムの確立へ

 「人権の世紀」といわれる21世紀において、すべての人の人権が尊重される差別のない社会を実現するため、人権侵害の予防・救済など人権擁護に資する施策の推進は重要な課題です。
 大阪府内においては、行政機関やNPOなどの民間団体の連携による人権相談機関ネットワークが構築されており、人権相談を通じて人権侵害に直面した人が自らの主体的な判断に基づいて課題の解決が図られるよう支援していますが、人権相談は複雑多様化しており、安心、信頼できる人権相談機関ネットワークとして、より充実させていくことが必要です。
 こうしたなか、大阪府では、平成19年度から、人権に関わる事象を早期に把握し解決を図っていくためコーディネートする機能やカウンセリングマインドを備えた、新たな人材として「人権擁護士」の養成を始めました。
 国に対しても、独立性、迅速性、専門性を備えた実効性のある人権救済制度に関する法制度の確立や地域レベルにおける人権侵害に対して、迅速かつ効果的にきめ細かく対応できるよう、地方人権委員会の組織化などの法的措置を、あらゆる機会を通じて働きかけるなど、総合的な人権相談救済システムの確立に取り組んでいく必要があります。