HOME >> 人権相談についてTOP > 具体的な人権相談事例 > (2) 女性に関する人権相談 -3.虐待の通報をされた際の警察の対応について謝罪してほしい。→DV相談へ

具体的な人権相談事例

(2) 女性に関する人権相談

~ 虐待の通報をされた際の警察の対応について謝罪してほしい。 ~

<相談のあらすじと対応のポイント>

  • キーワード:虐待通報、行政対応、DV、貧困、継続相談
  • 相談者:隣人からの相談
  • 家庭状況:妻(相談者、40代後半)、夫(46歳)、長男(高校2年生17歳)、長女(小学5年生11歳)
  • 相談の主訴:夫(別居中)のDVや虐待、生活上の困難について相談の入口は、虐待の通報をされた際の警察の対応について謝罪してほしいというもの

●相談の経路

  • 電話相談にて、人権文化センターの相談窓口へ通報がある。
  • 後に、相談内容から、夫からの子ども・妻(母親)への暴力・暴言についての相談として2007年から受けていた相談であることがわかる。

●相談内容および生活歴

  • 夜遅くまで起きていることを注意しても言うことを聞かない長女に対して、母親が声を荒げるぐらい叱っていたところ、「通報があった」として警官4人が来宅。
  • 家の中は暗いからと母親は拒んだが、玄関の中に入ってきて、母親である自分と娘を分けて、話を聞かれた。
  • 娘は身体に傷がないか見られ、近所にもその様子を見られてしまった。虐待なんかしていないのに、こんなことになり外に出られないし、悔しい、謝ってほしいという訴えであった。
  • もともと、夫(40代後半)、本人(46歳)、長男(17歳)、長女(11歳)の家族4人暮らしであったが、夫からの暴力や子どもへの虐待もあったため別居となり、現在は長女とともに生活している(長男は夫宅)。
  • 以前から、両親は子どもへのしつけをつけるために子どもを叱ることが度々あった様子であったが、夫は、ひどい時は子どもを殴ったり蹴ったりするなどの暴力を幼児期からおこなっていた。夫は妻に対しても暴言があり、夫との喧嘩が絶えなかった。夫の離転職もあり経済的にしんどく、夫は機嫌が悪くなることからが1つの要因と考えられる。
  • 日常的に夫からの児童虐待がおこなわれていたことから、妻も子どもに対して周囲から虐待と言われるようなしつけを行ってきたようである。
  • また、別居後は夫からの経済的援助がないため、パートをしているが月に2~3万円の収入しかない状況である。そのため、家賃が滞納となり今日にでも家を出なければいけないという訴えであった。離婚が成立すれば、長男も引き取り、夫から養育費をきちんと貰いたいと考えている。

●対応

  • 通報以前より大きな声で子どもをしかっていたとのことに対して、本人は「誰だって怒っていたら声が大きくなるはず」といった認識であった。相談者は傾聴と受容を中心に対応し、痛ましいケースが後を絶たない昨今、周囲が心配したのではないだろうかと伝えると、自分も近所から大きな声が聞こえれば気になるとの答えで、通報について一定の理解を示した。
  • また、通報があれば、真偽を問わず警察は動き、虐待の有無を確認するのが務めであると話すと「夫の時の方がひどかったのに!」と言われる。このことから、離婚に向けて別居中の夫からのDV(主に身体的暴力)が明らかになり、そちらに焦点を当て、傾聴する。
  • 虐待やDVへの傾聴を行う中で、怖い父親から離れ安心している娘がわがままに見え、どう接したらよいか戸惑って声を荒げてしまうということや、自分は父親のようには決して手を挙げないといった決心も聞かれた。
  • 相談者や子どもの年齢、DVや虐待の状況、地域の状況を伺うことから2007年から年に2回ほど継続して電話相談で入っている事例であることが分かった。

●評価および今後の課題

  • 傾聴をしていく中で、最も大きな生活課題が見えてくる事例である。相談場面では、必ずしも相談員が主訴を明確に訴えず、相談員が相談を重なることで見えてくることがある。
  • 虐待通報をされ、感情が高ぶっている状況に対して受容的な関わりで本人が冷静になっていく様子がわかる。相談員が丁寧かつ適切に対応していたことが伺える。また、関係性ができたところで、あなたなら同じ場面をみてどうですかといった相談員からの促しも評価できる。
  • 年に2回程度の電話相談でありながら、継続相談であると気づけたことが評価できる。電話相談や面接相談も期間が空いたり、相談員が変わったりすると継続相談であることに気付かないことがある。各相談事業所において、相談事例のデータ処理を行い、キーワードなどで検索ができるような体制を取っておくことが、今後、求められる。
  • 今後の対応として、面接相談へつなぐこと、生活の安定のための生活保護制度の紹介、子育てについての悩みに対しての相談対応などを行っていく必要がある。また、夫からDVや虐待などの再発や経済的困窮など緊急時の対応も想定しておく必要がある。
  • 離婚後の母親の就労支援や福祉サービスについての検討も必要である。

●連携が想定される資源

  • 福祉事務所
  • 市生活保護担当課
  • 民生児童委員
  • DV相談窓口、緊急一時保護機関
  • 警察署
  • 子ども家庭センター(児童相談所)
  • 弁護士等の法的専門家
  • 就労支援機関

●利用が想定されるサービス

  • 生活保護制度
  • 児童扶養手当
  • 母子福祉資金貸付金
  • 生活福祉資金貸付制度
  • 母子家庭への就労支援サービス