(5) 子どもに関する人権相談
いじめによる登校拒否と進学問題 ~ シングルの保護者からの相談 ~
<相談のあらすじと対応のポイント>
- キーワード:いじめ、不登校、母子家庭
- 相談者:母親(Aさん) 女性 30歳代
- 家庭状況:母子家庭 子ども3人
- 17歳高校生(女の子) 14歳中学2年生(男の子) 10歳(女の子)
- 父親の情報については不明であるが、経済的支援は受けていない状況。
- 相談の主訴
- 「長男の進路に対してどのように考えていけばよいのかわからない。
- 長女の進学に当たっても経済的な状況からどうしたらよいのか思い悩んでいる。」

●相談の経過
母親が市役所総合案内を訪ねたことにより、人権総合相談窓口にて面談を行う。その後、直接の面談のみならず電話相談なども通じて相談を行う。
●相談内容および生活歴
- 中学2年生の長男が小学校時代よりいじめを受け、不登校となる。中学校卒業は可能と見込まれているが、地元の中学生と同じ高校には行きたくないという本人の思いから、高校進学を前にして進路について悩んでいる。また、他人との接触に不安を抱えており、通学が困難であるため、自宅学習のできる環境を希望している。医療機関での受診経験もあるが、継続的な受診はしていない。
- 長女においても大学進学を希望しているが、母子家庭のなか金銭的に難しいのではないかと考えている。経済的問題の解決として、両親の実家への転居も考えているが、子どもらの意向が確認できていない。
- 次女も10歳と小さいため、今後の生活基盤についても悩んでいる。ただ、まずは長男の進学問題について優先的に解決したいと考えている。
●対応
- まず、長男の進学について通信高校の情報やフリースクールなどの情報を提供した。
- また、現在は母親のパート収入により生計を維持している状況であるが、経済的な支援として、「母子福祉資金貸付金」や「生活福祉資金貸付制度」、「奨学金制度」(大阪府育英会、日本育英会)などの紹介を行った。
- 親子間のコミュニケーション不安や母親の精神的安定を図るため、カウンセリングを実施している市男女共生センターを紹介した。
●課題・問題点
- 母親から子どもについての相談事例である。対応として通信高校や単位制高校、フリースクールなどについて説明を行っているが、長男本人の考えが重要である。できれば、長男を含めたなかで、現状や進路について確認を行いたい。
- また、その他の資源として不登校のためのセルフヘルプグループ(自助グループ)や支援活動の紹介、「ひとり親家庭児童訪問援助員(ホームフレンド)」(厚生労働省)などもあるため、様々な選択肢の中から本人が選択するような支援をする必要がある。
- 長男の不登校は長期間となっているため、医療的ケアの必要性についても検討すべきである。医療受診の経験はあるため、その際の状況や医療的ケアの現状について把握する必要がある。中学校や教育委員会との連携も必要となる。スクールソーシャルワーカーの対応状況や学校の考えについて支援の方向を一致させておく必要がある。
- 長女に対しても、本人に意向を確認する機会が必要だと考える。進学の方法として、貸付金や奨学金の利用で可能となることが考えられるが、祖父母の支援についても検討したい。
●連携が想定される資源
- 中学校、スクールソーシャルワーカー
- 教育委員会
- 福祉事務所
- 社会福祉協議会
- フリースクール、単位制高校
- 不登校支援の団体、NPOなど
- 大阪府教育センター「すこやか教育相談」)
●利用が想定されるサービス
- 大阪府育英会奨学金
- 日本学生支援機構奨学金
- 母子福祉資金貸付金
- 生活福祉資金貸付制度
- ひとり親家庭児童訪問援助員(ホームフレンド事業)