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具体的な人権相談事例

(5) 子どもに関する人権相談

子どもの人権相談 ~K市人権協会への相談~

<相談のあらすじと対応のポイント>

  • 父子家庭での父親による息子へのネグレクトのケースで、一時保護も視野に入れながら、家族機能(親類)の再調整や児童相談所相談員、市の家庭児童相談室の相談員、小学校教員などの連携強化等を図った。
  • 次に、父親に関する就労支援や、それまでの経済的不安を解消するために生活保護の受給の支援を行った。
  • この父子家庭を精神的、経済的に支えることができるように制度と結びつけ、また情緒的な支援ネットワークの構築をめざす支援を行ったソーシャルワークのケースである。

相談前・相談後のイメージ PDFファイル


●相談者からの相談と情報提供の内容

  1. 小学校の担任から、担当の父子家庭の男子児童の体や衣類の汚れが目立ちだしたので家庭訪問をすると、父親はルスが多く、電気やガスも止まった状況になっていることが判明する。
  2. 男児生徒(以下、息子)に事情を聴くと、祖母が亡くなってから二人の叔母宅の世話になっていたこともあったが、従兄弟たちとの関係が悪くなったので、自宅に帰ってきた。
  3. 父親は夜間しか帰ってこないこと、深夜に飲酒して帰宅することも多いということが判明した。

●相談からわかってきたこと

 相談員と小学校教員がその後、この家庭の状況を調査した結果、次のことが判明した。

  1. 両親が離婚後(母親は外国籍で母国に帰国)、父親は息子の養育に熱心ではなく、祖母にまかせていた。
  2. その祖母が亡くなり、近隣の親類(父親の姉妹)が支援していたが、親類の子どもと息子との関係が悪く、親類も引き取って支援することができず、息子の養育が行きとどかない状況である。
  3. そのような状況で、本人の体や衣類の汚れが目立つようになった。また、小学校の担任が夕方や夜間の早い時間に家庭訪問すると父親はほとんど不在で、帰宅は深夜になることも頻繁にある。さらに、経済的にも困窮しているようで、自宅の電気とガスも止まっている状況にある。
  4. 父親は、以前にギャンブルが原因だと思われる借金問題から自己破産したこともあり、体調不良から現在も失業状態であることも分かった。
  5. このままの状態では、息子の一時保護も視野に入れ、問題解決のため、まず父親と小学校教員と同伴で面会することから相談支援を開始する。

●対応

  1. 父親の状況を確認するため、小学校教員と同伴で家庭訪問をおこなったが、父親の帰宅が遅いため午後10時に家庭訪問をおこない、父親と面談を実施した。
  2. 現在、父親は体調が悪い(腰椎の痛み)ため、半年間就労できず経済的に困窮している。
  3. 子どもにも不自由な思いをさせていると、一応は子どもへの関心を示すような言動はあった。しかし、就労していないにもかかわらず、昼間は外出しており、その内容についての説明はない。
  4. また、深夜にまで飲酒して帰宅しないことについての具体的な説明や、子どもの養育に関する責任についての自覚を感じさせる内容を、父親から聞くことはできなかった。

<支援の経過と結果>

  1. 現在、失業中で体調も悪く、就労の見込みも立たないこと。(現在までは、祖母が残した預金を崩して生活していたが、それも底をついている)
  2. 経済的困窮を解決するために、生活保護の相談及び申請を働きかける。
  3. 市の家庭児童相談室の相談員に情報の提供を行い、支援を受けるべく働きかける。
  4. 児童相談所にも市の家庭児童相談室から情報提供を行い、支援の輪に入ってもらう。
  5. 父親の姉妹にも再度の情報提供をおこない、支援の分担を依頼し、了解を得る。
  6. 地域の民生児童委員にも情報を提供し、今後の見守りの対象として認識をもってもらう。

 以上、本人を取り巻く支援者の連携とケース検討を実施し、この父子家庭の見守り支援体制を構築し、いつでも危機介入できるように、小学校教員、父親の姉妹、近隣の民生児童委員との連携を強化する。また、父親には生活保護の受給申請をおこない、生活保護の担当者より今後の自立支援及び生活指導を担当してもらい、子どもの養育環境の確認も依頼する。
 支援の結果、現在はこの父子家庭は、父親の姉妹の協力(訪問や自宅への外泊)もあり、以前のようなネグレクトは回避され、本人も安定している。父親も以前のように飲酒して深夜に帰宅することも減り、養育に関する意識も出てきている状態になった。
 今後も危機介入が適切にできるように見守り支援の継続と連携の体制を、引き続き取り組んでいる。


●支援のために連携した機関等

  1. 小学校教員
  2. 児童相談所職員
  3. 市の家庭児童相談室相談員
  4. 民生児童委員
  5. 生活保護課相談員
  6. 父親の姉妹

☆大阪府における児童虐待の実態


☆児童虐待に関する相談窓口