主な相談機関別の人権相談の状況

1一般財団法人 大阪府人権協会「人権総合相談窓口事業」

当協会は、大阪府の推進する人権相談・救済事業の中で、特に、「身近な相談窓口である市町村が設置している人権相談窓口への各種支援」や「専門的な人権相談窓口の整備」「人権相談にかかる人材育成」「相談内容の集約・分析」等の役割を担っています。

○人権総合相談窓口

 一般財団法人大阪府人権協会(以下、「当協会」)では、2011年度に人権侵害を受け、または受けるおそれのある府民が、自らの主体的な判断により、課題を解決することができるように、事案に応じた適切な助言や情報提供などを行うこととともに、人権相談を通じ、課題解決のための施策の有効かつ効果的な推進に資することを目的として、専門の相談員による人権相談を実施しました。


  • 相談日:毎週月曜日~金曜日の9時30分から17時30分(年末年始、祝日を除く)
  • 相談方法:専門の相談員による電話及び面接相談、メール・ファクス等による相談

*特にこの時間帯での相談が難しい場合には、一度ご連絡いただき、ご都合の良い時間帯、日程等をお聞きし、相談を受けています。


<法的相談>

人権問題に取り組む弁護士による面接相談(予約制)を実施しました。
 ・毎週金曜日の13時00分~16時00分 (年末年始、祝日を除く) 


当協会職員が人権相談の中で、法的アドバイスを受ける必要があると判断した場合に、相談者と当協会職員が同行して弁護士等の相談を受けています。


<その他>

 人権相談の中で、専門的支援を受ける必要がある場合に、弁護士や社会保険労務士等の専門職へつなぎ、当協会の職員が同行して相談・アドバイスを受け、支援を実施しました。

 市町村や地域人権協議会等の要請や協力のもと、弁護士や精神保健福祉士等の専門家の協力を得て、各市町村・地域に出向いての「出前相談会」を実施しました。

 聴覚障がいのあり手話通訳が必要な人々の人権総合相談や法的相談等の相談を支援するため、手話通訳者派遣サービスを実施しました。


■相談件数

2011年度は、「延べ件数」で688件、「実件数」333件となり、前年度に比べて実件数が減少したものの、延べ件数が増えました。これは相談者1人あたりの対応回数が増加したことによる増となっています。

1.各年度の人権相談の総件数 グラフ・表

■相談形態別

相談形態別では、「電話」による相談が250回(約75%)と最も多く、次いで「面接」による相談は43回(13%)、「手紙・メール」は40回(12%)となっています。前年度に比べ、回数が減少しています。

*当協会での形態別の回数は、相談者に最初に出会ったときの相談形態のみの回数を算出しています。


  •  面接による相談では、特に相談者から直接具体的な内容や問題点の主訴及び相談者の意思等を聴くとともに、問題解決のための対応等について相談者とともに考え、助言や専門機関に繋ぐことや法律相談に誘導する等の対応を行っています。

2.相談形態別相談件数 グラフ・表

■相談者の性別の割合

 相談者の性別では、「女性」からの相談が177人(約53%)と多くなり、「男性」は150人(約45%)となっています。また、「不明」は6人(約6.2%)で、手紙・ハガキ・FAX・メールによる相談で匿名による性別が不明な相談者、セクシュアル・マイノリティの人々からの相談者です。

3.相談者の性別別状況 グラフ・表


■相談者の性別の割合

相談者の年齢は、年齢を確認できた中では、60歳以上の相談者が51人(約15%)が最も多くなっており、次いで40歳代が38人(約12%)、30歳代が23人(約7%)となっています。


4.相談者の年齢別状況 グラフ・表



■人権課題別の相談の割合

人権課題別では、「その他」の相談が287件(約68%)ともっとも多く、次いで「障がい者に関する問題」の相談が42件(約10%)、「女性に関する問題」の相談が29件(約10%)、「子どもに関する問題」の相談が28件(約7%)となっています。

 「その他」の相談の中では、「労働に関わる問題」がもっとも多く43件、次いで「介護保険に関わる問題」、土地等の不動産に関する「不動産の問題」、「離婚の問題」、「インターネット上での書き込み問題」、「住居の問題」、「行政に関する問題」などが主にあげられます。また、東日本大震災で被災され大阪等の関西圏に避難された人々からの相談、刑務所や拘置所に入っている人々からの相談、自殺・自死を考えている人からの相談など、多岐に渡る相談も受けています。
 当協会に寄せられた相談内容は、様々な人権課題を抱えた相談者をはじめ、いくつもの人権問題が複雑に絡み合い、複合化している相談者もおられます。これに対して、絡み合った問題を一つひとつ相談者と整理したり、相談者と一緒に考えたりするなどの丁寧な対応を心がけ、その問題の解決に近づけていくことをめざしています。また、問題解決に中長期にわたって時間が必要な相談者においては、その相談者と共に考える形での継続した相談や支援を取り組んでいます。


5.人権課題別(7つ)の相談件数 グラフ・表

(総括)
  • 当協会が実施している人権総合相談事業は、あらゆる人権問題について相談者が一人で悩むことなく、問題解決の為の手立てを、相談者が主体的に選択できるように、専門の相談員が、きめ細かな対応を心掛け、問題解決のための一助とすべく実施しています。
  • 2011年度においては、結婚差別やエセ同和行為の被害、インターネット上での差別書き込み等の「同和問題」に関わる相談、配偶者からの暴力(DV=ドメスティック・バイオレンス)やストーカー被害等の「女性問題」に関わる相談、精神障がいや性同一性障がいのある人からの「障がい者問題」に関わる相談、独り暮らし高齢者や高齢者虐待、認知症等の「高齢者問題」に関わる相談、子どもの進学や児童虐待等の「子どもの問題」に関わる相談、在日コリアンへの誹謗中傷がインターネット上で書き込まれている等の「外国人問題」に関わる相談、職場でのいじめやパワハラを始め、ひきこもりがちな人や軽度の発達障がいのある人、児童養護施設を経験した人の就労問題等の「労働問題」に関わる相談、医療機関の対応問題やギャンブル依存症の治療などの「医療問題」に関わる相談などがあります。
  • また、その他の人権課題としての特徴となる相談は、東日本大震災で被災され大阪等の関西圏に避難された人からの悩み、刑務所や拘置所における処遇問題、社会から孤立し自分の障がいをマイナスに考えてしまう等の悩み、生活保護ケースワーカー等の行政窓口や機関とのトラブルなど、さまざまな状況での相談が寄せられています。
  • 全般的に相談内容を見ると、中高年齢層や障がいのある人々からの相談が多く見られます。なお、グラフには出ていませんが、相談の中にはうつ病等の疾病のある人や精神障がい等の精神疾患がある人からの相談など、社会的弱者の置かれている立場の人々からの相談が多くなってきています。これらの背景には、社会から孤立している、人間関係がうまくいかず人を信じられなくなるなどの福祉的な課題や現代社会を映し出しているような背景が見受けられます。
  • このように、当協会での人権に関わる相談は、多種多様で、複雑化・複合化しており、一つの相談機関だけで対応することが困難な場合が多くなっています。一方、市町村人権協会等をはじめとする各相談機関においても同様の傾向が見られていることから、各自治体や機関、公益法人、NPO法人等のさまざまな相談機関との連携を一層図るために、大阪における「人権相談機関ネットワーク」のより充実した取り組みの必要性やネットワーク間の強化、体制の整備をおこなうことが不可欠であると考えています。
  • 今後、さらに当協会が相談者に紹介・取り次いだ各機関との連携をより進めることにより、社会で起こっている様々な人権問題の解決に向けた取り組みが必要であるとともに、各機関との情報共有や解決方策等の蓄積と共有化を進める必要があると考えています。