主な人権侵害事象(差別事象を含む)状況

(2)大阪で起っている差別の現実 ~実際の差別事象から~

同和地区に関する問い合わせ

【事例 その2「交際相手の住まい先が同和地区であるかどうかを調べたい」】

◇事例の概要

  • ご紹介する事例は、2012年に堺市で起こった差別事象で、交際相手(彼女)が同和地区のことを話していたことで彼が交際相手の住んでいる地域が同和地区ではないかと気になったため、市役所に問い合せた事例です。

    ■発生日時:2012年2月1日(水) 午前9時00分
    ■場  所:堺市役所 市民人権局 同和行政課

男性:同和地区っていったい何ですか?

職員:同和地区が何かということですが、何故お調べになっているのですか。

男性:付き合う人の関係で、どういう意味なのかと。

職員:付き合う人の調査をするということなのですか?

男性:いや、相手が同和地区のことを言っていたので、どういう意味かと。堺市の東区ってそういうところなんですか?

職員:付き合う人の身元を調査する、ということでお電話いただいてるのでしょうか。そういうことでしたら、相手の人の人権もあることですから、そういったことを調べるということは、差別につながる可能性がありますので、一度...

男性:あ、そうですね。プライバシーに関係することですよね。分かりました。それなら結構です。すいません。失礼します。


◇事例の差別性

  • この事例では、「交際相手が同和地区かどうかを知りたいので同和地区かどうかを教えて欲しい」という差別事象に近い問い合わせ事象と言えます。
  • まず、市職員が「付き合う人の身元調査る、ということでお電話いただいてるのでしょうか。」「差別につながる可能性がありますので、一度...」との問いに対して、問合せた彼は、「あ、そうですね。プライバシーに関係することですよね。」と答えています。
     これらのことから、彼は「プライバシーに関係すること」とは、「交際相手が同和地区に住んでいることを調べること」=「調べてはいけない情報である」ということを認識されたからこその発言です。
  • 次に、彼が問合せのきっかけとなった「いや、相手が同和地区のことを言っていたので、どういう意味かと。」の発言にあります。彼と彼女との話のやりとりがどの様なものであったのか、その話のときに周りに他の人がいたのか等の状況はわかりません。しかし、彼女がどういう意味で同和地区のことを言っていたのかが問題ではなく、彼女が同和地区のことを言うことで彼の発言にある「どういう意味か」というところがポイントになります。
  • 彼が思った「どういう意味か」の背景に、彼の中でいくつかの思考が働いていたと考えられますが、その思考がどの様なものかはわかりません。しかし、彼が「同和地区」というキーワードが気になったことは明らかであり、差別をするつもりはなくても、同和地区が気になった彼の内にあるものを彼自身がわからなくてはなりません。
  • 更に、彼は問合せた最初のときに「同和地区っていったい何ですか?」と問い合わせており、その後の市職員との電話でのやりとりでの彼の発言からしても、彼は同和問題(部落問題)や部落差別の充分な理解が持てていないまま、彼女の話で彼は気になっていると言えます。彼は「その気になったことをなくしたい。市に問い合わせたらわかるだろう。」、と思われて市に問合せたと考えられます。
  • しかし、同和地区であるかどうかを問合せることは同和地区出身者であることを明らかにすることであり、同和地区出身者を不利益にしようと考えなくとも、同和地区出身であることを理由に結婚や就職の際に差別する意識は残念ながら今も完全にはなくなっていません。そうした社会環境の中で、同和地区の地名情報と特定の個人の情報を照らしあわせることで、現状の社会では「その人が同和地区出身である」と認識してしまうことから、大阪府では「大阪府個人情報保護条例」と関わって、「差別につながる情報」いわゆるセンシティブ情報の収集を原則禁止しています。つまり、同和地区の地名情報は「差別につながる情報」としており、同和地区の地名を調査したり教えたり公開することは、同和地区に住む人たちの生活を脅かす悪質な人権侵害となります。

◇事例の対応

  • 最初に対応した同和行政課職員が問い合わせの意図を確認し、交際相手の身元を調査するようなことは、そのことが差別につながる可能性があることを伝え、男性に正しい認識を持っていただけるよう、「一度お会いしてお話できませんか。」と聞こうとしたところ、男性が話をさえぎり発言した後、一方的に電話を切られた。
  • 同様の問い合わせが発生する可能性もあり、市役所職員に対して事例の周知と対応について徹底した。