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具体的な人権相談事例

(3) 障がい者に関する人権相談

聴覚障がい等がある方からの行政の対応に関する事例

相談者の主訴

 聴覚障がいのある高齢女性からの相談。
 夫が突然、高齢者関係の施設に入所させられてしまい、面会にいっても会わせてもらえない。また入所の事由も聞いていない、納得できないとのことであった。(相談機関の通訳を入れながら面談を行う。)

相談の経過

 夫の入所の事由を聞くため、相談者は何度か市に問い合わせに出向いている。
 市との話し合いの中で「市の手話通訳が本当に事実を通訳しているのか?」と市への不信感を持ち、通訳を見なくなっていき、ますます市とのコミュニケーションが難しくなっていった。

対応

 相談を受け、市に状況などの照会を行う。
 市は「夫を緊急避難的に入所などさせているのはそれ相応の事由があり、相談者にも何度も説明をしている。相談者が了承するなら、経過や事由を説明することはできる」との回答があり、説明の場を設定する。
 相談機関の手話通訳を入れながら、市福祉関係者より夫の入所事由の説明が行われた。
 相談者からの不適切な扱いが再三あり、夫の生命を守るため夫の希望に沿って市がこのような措置を取ったことが説明される。(相談者は相談機関を信頼しており、手話通訳の通訳は読み取ろうとするので、事由が正確に伝わった。)
 市は、入所は夫の希望であること、夫婦の問題は時間をかけながら解決していこうと提案し相談者は同意する。

課題・問題点

 聴覚障がいがあるため適切なコミュニケーションが取れなくて、小さな行き違いなどの積み重ねの中で関係者との関係がますます悪くなっていったケースである。
 今回、本人が相談機関の配置した手話通訳を信頼したことで、本人に状況が伝わり、また自分のいろいろな相談をじっくり聞いてもらえたと感じる中で落ち着いていった。
 その後、通院にも手話通訳をつけ、相談者の受診支援を行っている。
 情報障がい者といわれる聴覚障がい者にとっての手話通訳者は、本人のコミュニケーションを全面的に支援する者として、信頼関係が成立していることが必要である。当事者が信頼できる手話通訳を利用できるような柔軟なシステムが求められた事例である。