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具体的な人権相談事例

(3) 障がい者に関する人権相談

精神的不安定の中、自分自身や育児のことについて不安がある

<相談のあらすじと対応のポイント>

  • キーワード:精神的不安定な保護者の子育て・育児の悩み
  • 相談者:母親(Dさん) 女性 20歳代
  • 家庭状況:娘(3才)と2人の母子家庭
  • 相談の主訴
     「パニック障害やそううつ病から結婚生活や育児について不安を抱えている。
     3歳の娘に知的な障がいがあるのではないかと考えており、自分の情緒の
     不安定さから子どもへの関わりについて自信がない。
     騒音が気になりもっと静かなところで住みたいと考えている。」
家庭状況の図

●相談の経過

  • 会社内の人間関係に悩み、心療内科に通院しパニック障害とそううつ病の診断を受ける。現在は精神障害者保健福祉手帳も所持。
  • 夫との結婚を機に、馴染みのない土地に住むこととなり、友人など相談できる人が身近にいない状況の中、女の子を出産するものの、夫と死別。
  • 母親へ育児の負担がかかっている様子である。また、母親は娘の発達に対し不安があり、知的障がいではないかと考えている。乳幼児健診の際には、保健師から子育てサークルも紹介されている。
  • 母親は子育てに疲れた際には母子で実家に帰り、母親の親が子どもをみるなどもしていた。
  • 現在は、母親が市の保健センターに相談し、保健師とつながり、保健師による家庭訪問の支援を受けている。また人権相談の場において相談を行い、こちらとの関係ができた。

●対応内容

  1. 保健師とのつながりのなか、子どもの障がいははっきりしないものの、母親と子どものかかわりについて支援を行うために、知的障がい児の母子通園施設を紹介される。その施設では母子の関わりに対する教育指導も行っているため、子どもを預けるということだけではなく、母親の育児疲れやパニックへの対応などセルフコントロールできるようになることを目的とした。
  2. 保育所への入所については、保育料金が予想以上に高額となることから選択肢から外すこととなった。
  3. 相談員としては、保健師との連携の中、家庭訪問を増やすことの依頼や母親に対して自尊心を高める声掛けを行うこと。子育て支援の情報や女性相談の情報を知らせることなどを行った。

●課題・問題点

  1. 現在、知的障害児通園施設において、母親の子育てに対する不安の解消や関わりについて理解をしていくための機能を持つことも重要であると考える。ただ、子どもの障がいがはっきりとしないため、次の段階として母親が安心できる場所や子どもとの関わりについて理解ができるような場所が必要である。
  2. 母親の不安をセルフコントロールしていくことについては、医療機関との関係の中、整理していく必要がある。例えば、「ペアレンティング・トレーニング」の場、母親サークルなどが考えられる。また、母親のセルフコントロールの対応については、精神的な障がいもあるため、相談事業所と医療機関がしっかりと連携を行い、方法や関係すべき資源などについて検討を行うことが必要である。地域においても支えとなる人や家族との役割についても整理し、母親が少しでも安心ができ、つらさを言いやすい環境を作ることが求められる。

●紹介した機関

①こころの電話相談
②民生児童委員


●支援のためのサービス

  • 養育支援訪問事業
  • 短期入所生活援助事業 *施設でのショートステイ
  • 「ペアレンティング・トレーニング」
       親として子どもを育てるための理解や技術について身につけていこうとするもの。
      「ペアレンティング・トレーニング」や「ペアレンティング・プログラム」と称して、
      子育てについて学ぶことができる講座やサークルがある。