2015年度 人権NPO協働助成事業実践報告★交流会 報告
2015年度の人権NPO協働助成事業「実践報告★交流会」を、2016年3月26日(土)、HRCビルで開催しました。助成し協働した4つの事業について、参加者30人の前で、悩みや笑い喜んだプロセスを報告し、みなさんとデスカッションするなど、今後の活動のヒントを共有し合いました。
∽∽∽∽∽∽∽
1.三輪自転車を活用したコミュニティ活性化事業
NPO法人三島コミュニティ・アクションネットワーク(以下、愛称のM-CANで表します)。狭小な道で路線バスが通らない最寄駅にタクシー乗り場もない住宅から病院やスーパー、行政機関などが少し離れている
地域で暮らす独居高齢者や高齢世帯は、足の具合や体調によっては、医療福祉や行政サービスの利用を控えたり、買い物にも出かけられない
・・・という地域課題がある。M-CANは、これまで大阪北部にある三島地域を地盤にして地域活動を展開。地域コミュニティを活性化させたいと、三輪自転車(ベロタクシー型)の送迎サービスにチャレンジした。しかし、地元の会議では「三輪自転車の"こぎ手"をどうするのか・・」という慎重な声がでてくるなど、やりたい思いと現実の狭間で悩んだ。まずは、地域に、三輪自転車を「一度見てみたい、乗ってみたい」という話題を提供し理解者を増やすことをめざした。
話題提供の「自転車あれこれ勉強会」自転車を活用した生活支援や彦根市の先進的な活動について、研究者やNPOを招いて学習した。そして、彦根から三輪自転車(ベロタクシー型)を借りてきて試乗し、実感してもらう。そして6月の改正道路交通法施行、安全運転に関心が高まっていることから、「自転車安全教室」を開催。地域の子どもたちが自転車の安全運転を学んだり、保護者とともにダンデム自転車(2人用)、車いすが前にある自転車、手でこぐ自転車、そして三輪自転車など、多様な自転車に乗るなど、楽しんでもらった。地域に話題を提供したことで、漠然とした慎重な声から、具体的な意見が出てくるようになった。この助成金では、地域への話題提供にとどまったが、今後のとりくみとして、「自転車部」の創設、コンパクトな三輪自転車の製作、大学と連携した三輪自転車を活用した取り組みのコンペ、ゲリラ的に走行、子ども若者支援事業での活用などを検討していきたい。
2.堺市で、ブラジルにルーツをもつ子どもの居場所づくり事業に取り組むプロジェクト・コンストルイルさん。報告会には、母語教室(居場所)に通う中学生5人も参加。2008年のリーマンショック以降、減り続けた日系ブラジルの人たち経済的理由でブラジルに帰った友達
閉じこもりがちな保護者日本で生まれ育った子どもたちのアイデンティー高校への進学の壁
など、ブラジルにルーツにもつ子どもたちをめぐって課題がある。プロジェクトコンストルイルは、子どもたちを中心に展開した。
親から子どもへ、子どもから友達へ継承語と文化をつなぐ、
「子どもとおとなとでつくるブラジル料理」
自分たちのルーツを探る、「神戸移民ミュージアムへの遠足」
ブラジルの伝統的文化を楽しむ、「フェスタジュニーナ(収穫祭)」親と子どもの時間をつくる、「滋賀県のサマーキャンプ」子どもたちが自分を表現する、「第1回秋の文化祭」他国のブラジルのルーツの子どもをつなぐ、「半分の絵を交流」希望する高校へ進学するための、「中学生の勉強会」
たくさんのイベントを保護者たちが支えてくれた。
子どもたちは、イベントが楽しかっただけでなく、「家族とも話すようになった気がする。」「同じ学校のなかでは会っても話さない。この教室だからお互いに話せることができる。」「ブラジルが大好きだから、ブラジルのことを勉強してうれしかった。」・・・という感想があった。
この1年をふりかえって、プロジェクトコンストルイルは、これまで以上に活動がすすみ拡がった。そして、支えとなったのは家族の協力。子どもたちの家族のきずなが深まった。そして子どもたち同士のきずなも深まった。
これからは、プロジェクコンストルイルは新たな展開を迎える。4月から新たな場所での活動、ホームページの作成、そしてお母さんが活躍する場所をつくるなど、まだまだたくさんやっていきたい。
3.マイノリティアートフェスティバル~マイノリティがアートと出会うとき富田林編~のマイノリティーアートプロジェクトチームさん。被差別部落出身者、ひきこも り、セクシュアルマイノリティ、外国にルーツがある人、障がい者 など、さまざまなマイノリティが社会で暮らしている。
しかし、マイノリティ同士が相互理解する「場」がすくない・・・
マイノリティアートプロジェクトでは、
「アート」を通じた相互理解と連帯、エンパワーメントできるフェスティバルにチャレンジ。まずは、アーティストたちに呼びかけて、被差別部落のフィールドワークをおこなった。そして、マイノリティアートプロジェクトの拠点となる空き店舗をさがし、DIYというみんなのちからで改装してMAPカフェをひらいた。資金集めで、クラウドファンディングにも挑戦し目標金額に達成した。自分たちが発信すれば、いろいろな人が支援してくれることがわかった。
MAPカフェでは、ひきこもりの当事者たちが集まる「ひきこもり大学○○学科」と多彩なテーマで開催。11月のフェステバルは、みんなで何をしたいかをブレーン・ストーミングしながらプログラムをつくった。
イベント準備では、連絡ツールのLINEで、しばしば議論になったり、アーティストと連絡がうまくいかなかったり、苦労した。しかし、チラシ作りでは、ひきこもり当事者の中に、パソコンが得意な方がいて、チラシ作りには多くのひきこもりのが方がかわってくれた。彼らが手作りの地図、きっちりしたスケジュール表を作ってくれるなど、うれしかった。マイノリティアートティストが集うフェステバルの本番の3日間。地域を和太鼓・韓国太鼓・サックスのコラボパレード、バラエティ豊かなアーティストの方々の演目、フェステバルの情報をみて、何かお手伝いしたいという人も駆けつけてくれた。フェステバルがおわり、ふりかえりのブレインストーミングのワークショップを行った。フェステバルをやって、「やってよかったこと」「問題なところ」「次回にやりたいこと」をたくさん出し合った。次回の企画のアイデアがふくらんでいる。
4.よっしゃ!ほっとかへんで~地域の子ども個別支援準備事業~に取り組むNPO法人西淀川子どもセンターさん。
個別支援のきっかけは、西淀川子どもセンターの夜間サテライト事業に1年間参加していた子どもたちとの出会いから・・・虐待通報などで要観察状態の親子、ひとり親家庭の親の就職活動、親の病気や事故、親の疲労や不和などといった養育困難な状況にある子ども・・・が見えてきた。助成金を活用した事業では、子どもが自分の気持ちを身近なおとなに話せるように、生活の中での困難な状況で一緒に考えられる第3者のおとなと出会い、子ども自身がパートナーシップを感じるような地域の個別支援体制をつくることを目標にした。個別支援を行うスタッフには、具体的なニーズを実践するため、学習会とモデル実習を重ねる。「どんな場所なら安心して宿泊できる?」「知らない人がいない!!」ニーズを把握するために、 まず子ども説明会を開催し声を聴いた。「お風呂の入り方がわからへんねん」個別支援で、子どもからポロリとでてきた言葉。銭湯で一緒にお風呂に入ったとき、髪の毛の洗い方がわからなかった。お風呂が面倒くさいわけではなく、お風呂の入り方を「知らない」ということにきづく。また、寝る前の歯みがきの習慣がない子。
これまで、困ったことがあったら駆け込んでこられる場所だと思っていた・・・。「困難」を「困難」と感じないようにしているのか?「困った」という感覚がないのか?「困難」が日常化しているのか?子ども自身から聞いたわけではなく、一緒にやるなかでポロリと出でてくる。子どもたちと一緒に、朝ごはんを食べると、「食べてみたら体が、楽になった」や、早めに寝ると、「次の日、気持ちがすっきりしてる」など、言ってくれた。子どもたちにとって、「心地いい」「きもちいい」と感じる体験が必要。そこに至るまでには、いっしょにやる、という関係性を作ることが大切。人がそばにいる安心感が、やわらかい子どもの表情から読み取れる。家族や家での話を自然に話したり、困っていることを伝えてくれたり、心情を聞かせてくれたりした。ふだん自分のことをなかなか話さない子どもも、積極的に言葉にして伝えてくれた。個別のかかわりから、子どもとスタッフとの関係性が深まる機会、自分たちが尊重されているという気持ちを感じられたのではないだろうか。
このモデル事業を通じて、継続的に子どもと生活を共にする時間を持つことが大切と話します。次年度も子どものともに取り組んでいく。
デスカッション・・・
後半のディスカッションでは、4つの実践報告(episode)を受けて、参加者全員に質問カードをくばり、質問を書いていただきました。
質問では、30万円の具体的な使い方は?、他の団体とコラボは?、ボランティアスタッフの募集はどうしているか?などがでました。
3人のゲストスピーカーから・・・
奥田均さん(近畿大学人権問題研究所)部落問題に取り組んだ経験から、堺でとりくむプロジェクト・コンストルイルの報告を聞いて感動した。1960年代の部落子ども会、八尾のトッカビ子ども会のはじまりと重なった。子どもたちが胸の張って生きはじめていく姿。わき出てくる課題に対して精一杯の素直なとりくみを実践している。それは当事者性と必要性を明確にあって、うまく吸いあげられて、カタチにされていると思う。まだまだ、やりたいことが入道雲のように拡がっている。疲労感のない忙しさ、さわやかな疲れが毎日の中であるのかなと思う。佐々木妙月さん(情報の輪サービス株式会社)NPO法人を運営している立場から、4つの団体が、掲げた目標に対する達成をイメージしながら取り組むことの大切さ。そして、「やりたいんだ」という強い意志を持ったキーパーソンの力を感じた。収入のベースがある中での活動と収入のベースがなくてもやりたい活動とはおのずと違ってくる、数字に出来ないほどの価値がある。どうやって維持するかが大きな課題。これから見えてくる課題は、私たちへの課題でもある。また話を聞かせていただきたい。田村太郎さん(一般財団法人ダイバーシティ研究所)
4月の事業説明会で、できる限り事業を絞ることを話した。ふたをあけると、みなさん、たくさんやっている(笑)。だが、やればやるほど、やりたくなるのは健全なこと。それは、みなさんの1年の活動が、成果のあるものだったからでしょう。これから新しく見えてくる課題には、もっと人の力をかりてください。自分たちでやるだけでは活動が拡がらない。具体的にお願いごとを提示すること。そして、課題の対象を広げるのではなく、今の課題に機能を拡げることで、活動が広がっていきます。人権協会への期待として、この事業が3年目を迎える。人権NPOを企業や助成団体につないだり、共通な点をつなぐプラットホームを作ってほしいですね。
最後に、2016年度人権NPO協働助成金の4事業を発表しました。参加していた4事業の団体から、事業紹介とこれからの抱負を話していただきました。各団体の詳しい活動内容は下のページで、ぜひご覧ください。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
①2015年度人 権 N P O 協 働 助 成 金の助成事業が決定しました。http://www.jinken-osaka.jp/2015/03/_npo_1_7.html
②2015年度事業説明会&ワークショップ
http://www.jinken-osaka.jp/2015/05/2014npo_1.html
③とりくみほうこく 5月編 Part1
http://www.jinken-osaka.jp/2015/06/npo_1_5.html④とりくみほうこく 5月編 Part2http://www.jinken-osaka.jp/2015/06/npo_1_1_1.html
⑤とりくみほうこく 6月編 Part1
http://www.jinken-osaka.jp/2015/07/npo_1_6.html⑥とりくみほうこく 6月編 Part2
http://www.jinken-osaka.jp/2015/07/festa_juninanpo_1.html⑦とりくみほうこく 7月編 Part1
http://www.jinken-osaka.jp/2015/08/festa_juninanpo_1_1.html
⑧とりくみほうこく 8月編 Part1
http://www.jinken-osaka.jp/2015/09/npo_1_7.html
⑨折り返し地点の中間報告交流会
http://www.jinken-osaka.jp/2015/10/npo_1_9.html⑩とりくみほうこく 10月編 Part1
http://www.jinken-osaka.jp/2015/11/npo_1_10.html⑪とりくみほうこく 10月編 Part2
http://www.jinken-osaka.jp/2015/11/npo_1_13.html⑫とりくみほうこく 11月編 Part1
http://www.jinken-osaka.jp/2016/01/npo_1_1.html
⑬とりくみほうこく 11月編 Part2
http://www.jinken-osaka.jp/2016/01/npo_1_14.html
⑭とりくみほうこく 12月編 Part1
http://www.jinken-osaka.jp/2016/02/npo_1_15.html
⑮とりくみほうこく 12月編 Part2
http://www.jinken-osaka.jp/2016/02/npo_1_16.html⑯とりくみほうこく 1月編http://www.jinken-osaka.jp/2016/03/12npo_1.html
この人権NPO協働助成事業は、人権に取り組むNPO等のホップ・ステップ・・・を応援するために、事業収益の一部を活用して自主事業として取り組んでおります。より充実した内容へと発展させるために、皆様のあたたかいご支援・ご協力よろしくお願いいたします。