知事: |
中坊先生には、大阪府のアドバイザリー・スタッフとしてお世話になっていますが、このたびは、(財)大阪府人権協会の会長にもご就任いただき、本当にありがとうございます。 |
中坊: |
いやいや、一弁護士として40数年やってきた私の経験や考えが、少しでもお役に立てばと思てます。 私は、よく色んなところで「人権を重んじていけば平和になる」と言うておりますが、これは、どういうことかというと、第一次世界大戦の後、世界の人々は、つくづく戦争ほど悲惨なものはない、戦争をなくすにはどうしたらいいのかと考えたわけです。その結果、バランスオブパワー、つまり国どうしの力の均衡さえとれれば、戦争は防げるということが世界の共通認識となっておったんですが、なんとまた、第二次世界大戦が起こってしまった。 そこで、各国が今度こそはと集まって、なぜ、戦争が起きるのか、どうしたら戦争をなくすことができるのかと考えて、出した結論が、国際連合の1948年の「世界人権宣言」で、つまり、それぞれの国の中で人権が尊重されないと世界の平和を維持することができないということにやっと気がついたわけです。 |
知事: |
確かに、国連以前は、誰にどのような人権を認めるかといった問題は、各国がどこからも干渉を受けずに自由に決められる、いわば国内問題にすぎなかったのでしょうが、それではいけないということですね。 |
中坊: |
そうです。世界の平和は人類共通の願い、お互いの人権を認め合い、いたわりあってそういう活動をずうっと永く続けていくと、結果的に平和になるんですな、これが。 |
知事: |
わたしも同感です。しかし、残念なことに現代に至っても人権問題はなくなっていない。 そのひとつの例がハンセン病の問題で、私も昨年、岡山にあるハンセン病療養所を訪問しまして、そのときに元患者の皆様とお会いして、いわれなき差別や偏見がいかに人を傷つけるかということを実感しました。 |
中坊: |
そういう不条理に泣く人をたくさん見てきて、およばずながら力を貸したいと、そう思ってやってきたわけですが、人権を守るということは、たやすくないというのが実感です。 時には身に危険が及ぶ場合もある。オウムの事件の坂本弁護士なんかもそう。不幸な事件やったけど、みんな多かれ少なかれ、そういったことを乗り越えてやってきている。 20世紀は国連や国や自治体がこぞって、さまざまな人権に関する条約や規約、条例をつくったわけですが、相変わらず差別や偏見はある。つまり中身、人の気持ちがついていってない。人権の意識が根付いていないということで、これは、条例ができたから、はい明日から変わりますよというようなわけにはいかない。 |
知事: |
人権というとどうしても難しいものとか、私は関係ないとか思いがちなんですが、そうじゃないと…。いかにして人権が一人ひとりの身近にあって大切なものかということを浸透させるか。そこが難しいですね。 |