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毎日新聞大阪府内版掲載【2006年3月31日(金)朝刊】
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あなたの身近で起きています。
相手の痛みを感じる「想像力」を持つそれが本当の教養だと思います。
(プロフィール)
鳥越 俊太郎(とりごえ しゅんたろう)さん
ジャーナリスト

  1940年福岡県生まれ。京都大学文学部卒業後、毎日新聞社入社。新潟支局、大阪本社、東京本社の社会部を経て『サンデー毎日』編集部へ。82年から83年、アメリカ・ペンシルバニア州クエーカータウンフリープレス紙に職場留学。帰国後、外信部テヘラン特派員、『サンデー毎日』編集長。89年テレビ朝日「ザ・スクープ」キャスター、2002年テレビ朝日「スーパーモーニング」コメンテーター、2003年から関西大学社会学部教授を務め、現在 同大学客員教授。著書に『ニュースの職人 「真実」をどう伝えるか』(PHP研究所)、『報道は欠陥商品と疑え』(ウエイツ)など。


鳥越 俊太郎(とりごえ しゅんたろう)さん
現在でも差別的調査が行われている という事実にがく然とします。
 「差別」というのは根深い問題です。自由の国と言われるアメリカにだって多くの差別が氾濫しています。人が人を支配するという社会の構造がある以上、人間の差別意識は簡単には消えないと私は思っています。
  表面からは見えにくいけれども、社会に根深くはびこっている差別もあります。たとえば結婚や就職に際して、ひそかに行われている差別的な身元調査。最近もいわゆる被差別部落の地名を掲載した図書がひそかに利用されていたとか、本人の知らないところで不正に戸籍謄本が取られていた、といった事件が起こっているようですね。明らかに個人のプライバシー侵害であり、憲法違反なのですが、こうした事件がなかなかなくならないのは、人々の心に差別意識が根深く残っているからでしょう。21世紀になってもまだそんな行為が行われているということ自体にがく然とするし、非常に腹立たしく思いますね。もしこんな調査を実施している企業があるなら、企業名を即公表し、徹底的に追及していくべきです。


メディアはタブー視せずに 正面からきちんと取り上げるべき。
 被差別部落に対する差別意識は、世代交代が進むにつれ、ある程度は薄らいできているようです。でも、だからといって「寝た子を起こすな」と、問題の存在自体を知らせないことは誤りだと思いますね。表層から隠されることで、ゆがんだ情報が陰でひそひそと伝わり、差別意識が深いところに潜っていくのがいちばん怖い。正しい知識を持つことにより、馬鹿げた行為だとみんなが認識していく。それが問題解決への道だと思います。
  そのためには教育機関や各自治体の努力とともに、メディアやジャーナリズムの役割も大きいですね。かつてメディアはこの問題を取り上げることをタブー視していました。しかし、逆にそれが差別意識を潜行させ、助長したとも言えます。この問題をメディアはもっと積極的に取り上げ、人々に注意を促していくべきです。それも単に事件の表面を追うのではなく、問題に正面から取り組み、差別の背景やどこに問題があるのかというところまで、はっきり伝えていくべきだと思います。
「差別をしない」だけでなく「もし差別をされたら」という視点を
(プロフィール)
北口 末広(きたぐち すえひろ)さん
近畿大学 教授

  1956年4月大阪市生まれ。京都大学大学院(法学研究科修士課程)修了。国際法・国際人権法を専攻、近畿大学教授として人権法・人権論を教えるほか、ニューメディア人権機構理事兼事務局長を務める。著書に『人権ブックレット55 人権社会のシステムを 身元調査の実態から』(解放出版社、1999年)、『変革の時代・人権システム創造のために』(解放出版社、2005年)など多数。


北口 末広(きたぐち すえひろ)さん

いけない、とわかっていても 利害が関わると“差別する側”に。
 30年前の「部落地名総鑑」事件を原点に就職時において、「社会的差別の原因となる個人情報を収集してはならない」ことが1999年に法律で定められましたが、結婚の際など、残念ながらこうした差別調査は現在でも行われています。差別はいけない、と認めている多くの人々が、自分の利害に関わると“差別する側”にまわってしまうのです。社会の仕組みと人々の差別意識は相互に深く関連しています。さまざまな偏見や人権侵害をなくすには、それらを単に倫理的問題として捉えるのではなく、社会構造の問題として科学的に解明し、システムの変革にとり組んでいく必要があります。

さまざまな差別の現実を知り 「何が正しいのか」を自分で判断する。
 差別問題に対する人々の意識は30年前に比べればある程度高まりました。しかし差別する人の数が減っても“差別される側”の個々人が受けた深い痛みは変わりません。差別の「加害者にならない」だけでなく「自分がもし被害者になったら」という視点を持つべきです。まずはさまざまな人権侵害の現実を知ること。そして安易に世間に同調したり、物事を不当に一般化するのではなく「何が正しいのか」を自分で判断していく姿勢が大切です。「人権の世紀」と言われる21世紀。私たちが本当に人権を尊重できるのかが今、問いかけられているのだと思います。

【部落地名総鑑事件】
 1975年、全国の被差別部落の地名を載せた図書「部落地名総鑑」が販売され、企業などが購入していた問題が発覚。これに関して法務省が調査を実施し8種類の地名総鑑を確認するとともに発行者や購入者に勧告。1989年には法務省から同事件の終結宣言が出されていたが、2005年・2006年、大阪市内において第9、第10の地名総鑑が発見された。

【戸籍謄本不正取得事件】
 2004年、大阪府や兵庫県の行政書士らが戸籍謄本などを不正に取得し、調査業者に販売していたことが発覚。弁護士、行政書士など8つの資格職は「職務上請求書」によって個人の戸籍謄本等を取得できるが、これらの行政書士は調査業者の依頼を受け、「職務上請求書」を悪用して大量の戸籍謄本を取得・販売していたもの。調査業者は取得した戸籍と部落地名総鑑を照合することで差別身元調査を行っていたと見られる。
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