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「大阪府財政再建プログラム試案」に対する要望書を、橋下徹大阪府知事に提出しました

2008年4月17日
大阪府知事 橋下 徹 様
財団法人大阪府人権協会
理事長 神尾雅也

要望書

 
 当協会に格別のご支援ご指導を賜り厚くお礼申し上げます。
  さて、橋下徹知事直轄の改革プロジェクトチ−ム(PT)が、去る4月11日に「大阪府財政再建プログラム試案」(以下、改革PT案)を公表されました。この改革PT案によれば、(財)大阪府人権協会(以下、当協会)への補助金を「全面見直し」(2008年8月から廃止)し、各種の人権施策も廃止するとの内容になっています。
  今回の改革PT案は、1100億円の収支改善をめざすコストカットを使命とした、試案としてまとめたものであるとはいえ、これまで積み上げてきた大阪府の同和行政・人権行政のシステムと施策を乱暴に否定してしまうような内容であり、当協会に対する補助金については、いきなり年度途中に人件費を含めて全額をカットするというものです。大きな驚きと疑問を持つものであり、とうてい納得のできるものではありません。
  当協会は、2001(平成13)年9月の大阪府同和対策審議会の答申をうけ、答申の趣旨に沿って大改革を行い、府と府内すべての市町村が参画し、2002(平成14)年度に改革後のスタ−トを切りました。(財)大阪府同和事業促進協議会(府同促協)の50年にわたる同和問題解決の取り組み実績を踏まえつつも、役職員の組織体制・事業内容・事業実施方法を、一新してスタ−トしたのが今日の当協会です。今回の改革PT案の見直しの考え方と同様に、6年前に「全面見直し」をして、大阪府・府内全市町村・当事者住民・学識者が一致協力のもとに、今日まで、人権啓発、人権支援・救済、人権ネットワ−クづくり、人材養成などの様々の事業を進めています。私的な分野だけでは実現が困難であるからこそ、公的な分野である行政が担当している「人権」という価値を守ることを「使命」とすべき行政の協力機関として、様々の関係機関・団体と連携・協力し合って取り組みを進めています。こうした取り組みの結果、啓発、相談、ネットワ−クの形成、相談員等の人材養成の取り組み等の各分野で着実に成果を上げてきています。
  しかしながら、当協会に対し府民が期待することに十分に応えられているといえるのか、常に反省と効果検証を怠ってはならないと考えています。本年2月の大阪府同和問題解決推進審議会の提言では、「平成13年府答申において、府と市町村が人権施策を推進していくための協力機関として位置づけられていることから、NPOや関係機関等との連携を一層強化し、それらの意欲ある取り組みを活性化するとともに、協力機関にふさわしい役割を果たしているか等について常に点検評価を行い、透明性の高い事業執行に努める必要があります」との指摘を頂いており、こうした提言などを受け、当協会として、着実に挙げている成果を根付かせ広げていくと同時に、改善・改革すべき課題こそ自省・自覚して取り組みを進めなければならないと考えています。  なお、こうした観点から、当協会ではすでに人権協会のあり方検討会を昨年7月に理事会の確認のもとに位置づけ、本年3月に検討会報告書もまとめたところです。
  改革PT案の内容がそのまま実行されることがあれば、大阪府と府内市町村、そして府内の多くの人権問題に取り組む関係機関・団体がともに協働して長年営々と築き上げてきた大阪の同和行政、人権行政を破壊してしまうようなことになりかねません。新しいあり方を示し創造することなく、大阪府がこれまでの経過や実態を無視してその役割と責任を放棄するようなことをしてはならないと考えます。
  橋下知事は、「同和問題は解決しておらず、同和審の答申や提言の趣旨を踏まえて取り組んでいく」との意志を表明されており、特に被差別・マイノリティ当事者の立場に立った人権啓発や相談などの取り組みの必要性を深く認識されておられるものと存じます。当協会としても、こうした観点から、大阪府及び市町村、関係機関・団体と協議検討し、事業の見直しなどに積極的に取り組んでいくことを表明しますとともに、以下の点について大阪府に要望いたします。
 
  1. 「安全」「環境」「人権」といった価値を守っていくことは、私的な分野だけでは困難であるからこそ、公的な分野である行政が担当しているのであり、こうした価値を守り、この価値をもとに施策を行うことは行政の社会的責務です。
    大阪府人権尊重の社会づくり条例及び大阪府人権施策推進基本方針、並びに、大阪府同和対策審議会答申(2001年9月)及び大阪府同和問題解決推進審議会の提言(2008年2月)等を踏まえ、市町村補助事業も含めて人権施策を今後とも積極的に実施されたい。とりわけ、様々な困難を抱える人を支援・救済する各種相談事業を廃止することのないよう対処されたい。
  2. 同和問題など各種の人権問題に取り組み、種々の成果をあげてきた大阪の人権行政は、大阪府と市町村、さらには関係当事者との「合意」を何より大切にしてきました。数々の事業効果や成果は、その結果と言っても過言ではありません。今日まで築きあげてきた「合意」とこれに基づく「協働」こそ大きな財産であると考えます。
    まさに、長い歴史の中で関係者の努力で築きあげてきた合意形成の今日の一つの姿が、(財)大阪府人権協会でもあります。 大阪府の「財政再建プログラム案」のなかで当協会の補助金などの全面見直しを行うのであれば、当協会との協議を十分に行うことはもちろんのこと、大阪府同和問題解決推進審議会や大阪府人権教育懇話会など関係機関での十分な審議を経るとともに、市町村・当事者住民を中心とした関係人権団体等との合意を図られたい。
  3. 当協会は、(その代表が理事に就任するなど)大阪府及び市町村が参画する、行政の人権施策推進の協力機関です。大阪府の財政再建プログラムが、こうした公益法人で働く職員の人権を軽んじる事態を引き起こすことのないよう、見直しを実行するにあたっては、大阪府として責任を持って最大の配慮を行われたい。
参 考:府同促から人権協会への改組・改革の経過

 「特別措置法」終了の直前に出された、2001(平成13)年の府同対審答申は、 府同促協をとりまく状況の変化について指摘すると共に、新たな時代の府同促協・地区協議会のあり方について、次のような評価と改革の方向性を示していました。
  府同促協をとりまく状況の変化については、第一に、地対財特法の失効により、これまでの府同促事業のうち、特別措置としての同和対策事業を促進する機能に関する部分は、この限りにおいて終了すること。第二に、大阪府人権施策推進基本方針において「人権施策の推進にあたり、府と市町村が密接に連携し、市町村単位では実施困難な事業等については府が積極的に推進するとともに、企業やNPO等の諸団体との連携を深め、協働関係の構築を図ることが必要である」と示されたこと。第三に、2000年度に実施した実態調査などによると、教育の課題、労働の課題が残されているとともに、府民の差別意識の解消が十分に進んでおらず、部落差別事象も後を絶たないなど、同和問題が解決されたとはいえない状況にある、といった点です。
  そして、府同促協については、2002(平成14)年度以降のあり方として、同和問題を中心とした人権啓発、人権相談等人権問題に取り組んできた貴重な実績とノウハウを踏まえ、府・市町村が共同して、同和問題解決のための施策をはじめ、人権施策を推進していくための協力機関として位置づけること。そして、その役割としては、人権啓発や人権相談活動、これらの活動を通じた同和問題をはじめとする人権侵害の実態に取り組み、地域住民の自立支援、同和地区内外の住民の交流促進を図り、差別のない地域社会・コミュニティづくりをめざす。そして、それに相応しい名称、組織体制、事業内容等に改組する、というものです。
  地区協議会については、これまで同和問題解決に携わってきた貴重な実績とノウハウをもつことから、市町は、今後の府同促の改組の基本方向を踏まえ、地区協議会を周辺地域の住民も参加した地域での取り組みを推進する組織として整備し、人権施策等を推進するための協力機関として引き続き活用することが望まれるとしました。そして、地域協議会の基本的役割として、改組後の府同促と連携し、その支援を受けるとともに、地区施設と連携を図りながら、周辺地域を含むさまざまな相談活動を通じた地域住民の実態・ニ−ズの把握、地域住民の自立支援のための一般施策の普及・定着、同和地区内外住民の交流促進を通じてのコミュニティづくりなどの機能を担うことが期待されるというものでした。

 こうした状況を受けて、早くから進めてきた特別措置の終了に向けた事業改革の取り組みと共に、同促協改革の取り組みが進められました。それは、@これまでの成果を後退させない、A新たな矛盾、差別の予兆(失業に対する不安・新しい環境適応への不安・情報の偏在への不安)に対応する、B人権行政へと事業を拡大する(人権侵害の発見と身近な相談機能を担う・人権行政の「ひとづくり」を担う・人権の「まちづくり」を担う)、C地域人権センタ−(隣保館)のあり方と関連づける、D他の類似法人(団体)との関連を検討する、E独自事業を検討する−−といった視点を柱とした取り組みです。
  そして、これからの「府人権協会・地域協議会」が果たすべき役割を整理し、(1)部落(差別)の実態を把握する役割、(2)同和地区住民などの自立支援機関としての役割、(3)人権尊重のまちづくり支援機関としての役割、(4)人権行政創造に貢献する公益法人としての役割、(5)部落問題解決、人権行政推進のための人づくりの役割−−の大きく5つ役割を認識することを確認しました。

 大阪府は、これらの経過の中で、府答申の趣旨等に基づき、当協会をあらためて同和問題解決をはじめとした人権施策推進の協力機関と位置づけ、当協会に対し積極かつ具体的な提案を行い、市町村とともの財源確保による新しい事業構築と事務局体制の確立を図ったのです。

 当協会は、こうした経過の上に立って今日の組織体制と事業を構築し、新しい事業の定着・拡大などの取り組みを進めてきました。そこで、この6年間を総括しつつ、あらためて今後の人権協会のあり方について、@(財)大阪府人権協会の位置づけについて、A(財)大阪府人権協会が果たすべき役割と機能について、B(財)大阪府人権協会と市町村の人権協会、人権地域協議会等との連携・協働のあり方について、C(財)大阪府人権協会の組織・体制、経営基盤について−−を検討内容の柱に、まず協会内で積極的に論議・検討を重ね、当協会の必要性や役割、新たな課題も含めた取り組み課題・改革の方向性をさらに明確化していく取り組みを進めているところです。

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