国民生活審議会は2008年4月に『消費者・生活者を主役とした行政への転換に向けて(意見)』を発表し、「就職困難者について、厚生労働省において、よりきめ細かい実態把握を行うとともに、一人別のチーム支援体制について、就職困難者の属性に応じた支援チーム(労働・福祉分野の行政及びNPO等の民間団体で構成)を着実に整備する取組を進める必要がある」と提起しました。
2002年度から大阪府と府内各市町村が取り組んできた地域就労支援事業は、まさにこの指摘を先取りして実施してきた先駆的な事業です。しかもまた、同様の事業は、他府県の市町村へと広がりつつあります。地域就労支援事業は、福祉政策と雇用政策の狭間でいずれの政策からも漏れ落とされてしまった就職困難者に光を当てた非常に重要な施策であり、今こそ全国に広めていくべき事業であると認識しています。しかし残念なことに、大阪府では、財政的な議論のみが先行した結果、この先駆的な事業が廃止されることになりました。(2008年度より「総合相談事業交付金」の対象事業の1つとなり、実施するかどうかも含めて、事業の規模や内容については、各市町村の判断にゆだねられることになりました。)
この地域就労支援事業の対象となる人びとのかかえる問題は、若者のフリーターやニートの問題、非正規雇用の人びとの問題、母子家庭の母親や障害者、長期失業者の問題と重なり合っており、決して特別なものではありません。他方、これらの問題の解決には、対象者ごとに組み立てられた既存の政策にあわせて対応するのではなく、当事者の目線や考え方を大事にしながら、当事者とともに解決していくことが重要であり、地域就労支援事業は教育制度や福祉制度なども活用しながら、就労の実現をめざします。それは、社会との間で切れたさまざまな関係の紡ぎなおしの事業と言えるでしょう。
お詫びと訂正
このエッセイの、第3章「地域就労支援事業の対象者」の本文を、事務局のミスで違う人の文章で掲載しておりました。
福原宏幸様をはじめ、皆さまにご迷惑をおかけいたしましたこと、深くお詫び申し上げます。
2008年10月7日に、原文通り訂正いたしました。