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リレーエッセイ
大森順子さん 第50回
ひとり親家庭の子育て支援は、出会いの場づくりから


大森 順子(おおもり じゅんこ)さん

NPO法人しんぐるまざぁず・ふぉーらむ・関西


子育てが本当に難しい時代

 NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ・関西や子ども情報研究センターのスタッフとして、あるいは堺市の子育てアドバイザーとして、子育てに関する相談を受けることが多くあります。そのなかでつくづく実感するのは、今は本当に子育てが難しい時代だということです。私は900戸からなる大規模な団地に住んでいます。現在22歳の娘が小学生の頃は子ども会活動が活発でしたが、今は「役が回ってくるから」と子ども会に入ることを避ける人が増えています。また、隣近所のつきあいも少なくなり、ここ数年のうちに入ってこられた人は顔も知りません。子育てアドバイザーの集まりで聞いた話ですが、最近は「知らない人としゃべってはいけない」と子どもたちに指導する学校もあるようです。気軽に通りすがりの子どもたちに「おはよう」「おかえり」と声をかけにくくなりました。こうしたなかで、子育ての大半を担う母親へのプレッシャーは強まる一方です。

  なかでも家計と子育ての両方を一人で担うシングルマザーにとって、地域のつながりがないのは大変なことです。私自身もシングルマザーなのですが、子どもが幼い頃は学童保育で知り合った仲間や近所の人たちに夕食を食べさせてもらったり、預かってもらったりしました。仕事が忙しくなった時に母親の入院が重なった時には、親しくしていたゲイの友人たちに交代で保育園のお迎えや夕食づくりを頼みました。こうしたつながりは、私にとっても娘にとってもとても大きな支えでした。学童保育で一緒に育った子たちとは今でも娘の一番の仲良しで、きょうだいのようにつきあっています。
 ですから私は、ひとり親家庭で子育て中の人にはできるだけ子ども会やPTA活動に参加することを勧めています。確かに仕事をもちながら参加するのは大変ですが、チラシ作りや会計など家でやれる仕事を自分からとっていけばいいのです。一緒に活動していくなかで、ひとり親家庭の事情も理解してくれます。そういう関係をつくっていくことが大切だと思うのです。    

シングルマザーにのしかかる子育てのプレッシャー

 いわゆる子連れ再婚のステップファミリーや国際結婚、そしてひとり親家庭など、家族の形は多様です。にも関わらず、「両親と子ども」を理想的な家族とする“家族幻想”は根強くあります。私はシングルマザーからの相談も受けますが、「お父さん役」と「お母さん役」の両方をやらなければという思いや、「後ろ指を指されないようにがんばって育てないといけない」という気持ちがものすごく強いのがわかります。それだけ子育てを母親一人の責任にする社会のプレッシャーやひとり親家庭に対する眼差しが厳しいのだと思います。
 そんな親の思いを子どもは敏感に察します。私の娘は中学1年まで、母親の私にとっては「よくできた子」でした。家事を一生懸命にやり、親の離婚も肯定的にとらえ、前向きな“がんばりやさん”でした。ところが中学2年になって、突然グレたのです。眉毛が細くなり、夜は帰ってこなくなりました。夜遅く帰る途中、家の近くの公園でタバコを吸いながら仲間たちとたむろする娘と遭遇したこともありました。その頃は何度もぶつかり合いました。「一体どうすればいいの」と、二人で朝まで泣きながら話し合いをしたこともあります。
 結局、高校入学を機に距離をおくことにし、娘は一人暮らしを始めました。ところが1年が過ぎた頃、ケロッとして帰ってきたのです。今思えば、娘は私の気持ちを先取りして、期待に応えようとすごく無理をしていたのでしょう。それがしんどくなって思春期に爆発したわけです。当時はつらかったけど、今となってはよく言ってくれたと思います。  

出会いの場を増やし、豊かな子育てを

 自分の経験からも、子育てを親だけが抱え込んではいけない、抱え込ませてはいけないと言いたいのです。子ども家庭サポーター養成講座の講師としてお話することがありますが、「ひとり親家庭は虐待が多いと思いますか?」と質問すると、必ず「多いと思う」と答える人が3分の1はいます。悲惨な虐待事件でひとり親家庭であることや母親のボーイフレンドが虐待していたことを強調されることが多いので、そんなイメージがあるのでしょう。けれど実際にはひとり親家庭かどうかではなく、悩みを話せる友人や近所づきあいのいない、「孤立した母親」が虐待してしまうケースが一番多いのです。母親が多いのは、子育てを担っているのが圧倒的に母親が多いからです。
 孤立がつらいのはシングルマザーも同じです。しんぐるまざあず・ふぉらーむ・関西が大阪府内で定期的におこなっている「おしゃべり会」には、和歌山や神戸から参加する人もいます。子どもたちも楽しみにしていて、何回か通ううちにすっかり仲よくなります。こんなつながりがあってこそ、精神的なゆとりや安心感をうみ、子育てを楽しめるようになるのではないでしょうか。また、子どもたちの成長にとっても豊かな刺激になるはずです。いろいろな人が子育てに関われるような関係づくりとともに、シングルマザーも含めて子育てをする母親たちが出会う場づくりが社会的支援として求められています。  

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