2003年に『ビッグイシュー日本版』を創刊しました。「ホームレスの仕事をつくり、自立を応援する」と謳っている通り、1冊90円でホームレスの販売員さんに卸し、200円で売ってもらいます。差額の110円が販売員さんの収入となります。最初の10冊は無料でさし上げ、その売り上げ2000円を元手にしてもらいます。
『ビッグイシュー』発祥の地はイギリスです。1991年にロンドンで創刊され、今では27カ国で発行されています。ちなみにアジアでは日本だけです。
『ビッグイシュー』に興味を持ち訪ねたスコットランド・グラスゴーで、街角に立って雑誌を売るホームレスの人の姿が自然に街に溶け込んでいたのが新鮮な驚きでした。その様子をそのまま大阪にもってきてもまったく違和感はないと感じました。むしろ「おはようございます」などと声をかければ、街角の風景として楽しいし、にぎやかでいい。「日本でもぜひやってみたい」と思いました。
ところが周囲は「止めたほうがいい」「失敗するに決まってる」と言うばかり。出版不況や若者の活字離れ、ホームレスの人から本を買うというなじみのない行為への違和感など、不安材料はいくらでもありました。ただ、私は若者向けのいろいろな雑誌を読み、政治や社会問題を正面から取り上げた若者向けのオピニオン誌がないことに気付いていました。そういう読み応えのある雑誌を求めている若者もいるはずだから、いいものを作れば売れるはずだと考えたのです。