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新型コロナウイルス感染症による偏見や差別をなくしましょう


 新型コロナウイルスの感染拡大と同時に、感染者やその家族、医療従事者や交通関係従事者など社会のライフラインを支える人たちへの偏見や差別、排除が起こっています。人権相談にも
、差別や排除などに関するケースが寄せられています。
 被害者である感染した人が、本来得られるべきいたわりや共感、支援ではなく、病気になったことを非難されたり、その責任を問われたりして、その上に差別や排除に怯えながらの生活を余儀なくされる状況で良いのでしょうか。

 このような感染症に関わる偏見や不当な忌避、差別、排除は決して許されるものではありません。このような感染症への偏見や差別は、これまでハンセン病回復者やHIV陽性者に対する差別でも同様のことが起こってきました。その背景を "忌避、排除"の視点をもってみれば、部落問題など様々な差別問題との共通性も見えてきます。

 この偏見や差別の背景には、感染症は「恐ろしいもの」、「避けなければならないもの」といった漠然とした病気への無理解や偏見、よくわからないものは避けておきたいという心理があります。しかし、感染症にかかるのはその人の責任ではなく、ウイルスの責任です。また、医療従事者やライフラインを支える人たちに感謝の意を送る行動が呼びかけられたり、感染で亡くなった人を追悼しその家族を差別しない国があったりもします。感染症による偏見や差別は、不安や不満からくる人間の当然の心理ではなく、人々の意識がもたらす対応であり、その意識を変えていくことが求められているのです。


 さらに、新型コロナウイルスによる生活などへの影響は、貧困や非正規雇用、母子家庭など、もともと社会的に不安定な立場に置かれていた人たちにより大きく現れるなど、社会の構造に組み込まれた差別や格差の問題も浮き彫りにしています。「緊急事態宣言」に基づく自粛によって、売り上げが大幅に減少する中で経営が困難になったり、解雇や雇止めをされたり、雇止めされた非正規雇用の多くが女性であったり、学校が休校になる中で母子家庭で子どもの世話ができなかったりなどの課題が明らかになっています。

 
 このようなことから、無理解や偏見、忌避、差別など、社会にある様々な課題を社会構造からとらえ、個人の問題ではなく、社会の問題として捉えた施策が求められています。特に、人権教育や啓発は、差別や排除などの"おかしさ"に気づける土台をつくる、言わば予防の役割を果たすものであり、社会の中で広く取り組まれることが求められます。

 新型コロナウイルスによる無理解や偏見、差別、排除をなくし、生活困難などへの支援を進めるために、被差別・社会的マイノリティをはじめ人権問題に取り組む団体や行政、企業や民間団体とのネットワークで、人権教育や啓発を進めるとともに、相談と支援を進めていきましょう。

(2020年6月)