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・・・H30(2018)年度 第4回・・・

本人はもとより、家族や支援者もサポートすることで

尊厳ある人生を支える



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特定非営利活動法人

認知症の人とみんなのサポートセンター

代表理事 沖田 裕子 さん

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認知症は「病気」ではなく「症状」


 私が代表を務める特定非営利活動法人「認知症の人とみんなのサポートセンター」は、介護保険ではニーズが満たされない若年性認知症や、初期の認知症の方の支援をしています。また、ご本人や家族だけでなく、支援する人のサポートもという意味をこめて「みんなのサポートセンター」と名付けました。社員の方が認知症と診断され、とまどっている企業の方からも相談があります。

若年性認知症とは、18歳以上、64歳までに発症した認知症を指します。「認知症」という病気だと誤解されがちですが、認知症というのは「症状」です。原因となる何らかの疾患があり、その結果としてさまざまな認知症状が出てくるわけです。ですから認知症が疑われるような症状が出てきた場合は、認知症疾患医療センターのような専門医の診察を受けることが大切です。原因疾患を治療することで、認知症も改善することが多々あります。



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 若年性認知症の人が直面する経済的な問題

 若年性認知症の方や家族が真っ先に困るのは、経済的な問題です。育ち盛りの子どもがいる人もいますし、老いてきた親を支えている人もいます。家のローンを抱えている人もいます。本人も家族も働けるかどうか切実な問題です。

 ところが若年性認知症や初期の認知症の人が使えるサービスがほとんどないのが現状です。認知症といえば介護保険という認識が根強く、「介護保険を使うかどうか」だけで話が終わってしまうことが少なくありません。初期には介護はほとんど必要ないので、介護保険は使われません。この、診断を受けてから介護保険などのサービスを利用するまでの何の支援もない期間を支援の「空白期間」と言われています。私は、仲間とこの空白期間を埋めるための支援として、特定非営利活動法人で若年性認知症の人を中心とした生きがいとしての仕事の場「タック」という活動を実施しています。

 認知症は少しずつ進行しますが、進行の度合いや症状は千差万別です。診断された時点では体は元気で、今までの仕事はできないけれど違う仕事ならできるという人も多くいます。その人の状態に応じて適切なサポートをすることで、余計なストレスを抱えず、認知症と折合いをつけながら生活していくことができます。

 使えるサービスは介護保険に限りません。障害者医療や障害者福祉サービス、介護保険を3つの柱として使うことができます。就労に向けてはハローワークを利用することもあります。

 私たちは大阪府と連携して『本人・家族のための若年性認知症支援ハンドブック』を作成しました。大阪府のサイトからダウンロードができます。


http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/24893/00227472/handbook2017.pdf




sub_ttl00.gif  看護の原点は「本人とともに」




 私自身は看護師で、最初に就職したのが全国から難治性のてんかんの患者さんが来られる国立療養所でした。そこでの私の仕事は、患者さんとともに過ごしながら、てんかんの発作が出た時にどういう状態かを観察し記録することでした。とにかくずっと一緒に過ごすので、運動療法の時間には患者さんとソフトボールをすることもあります。私はスポーツが苦手なので、患者さんは手加減をしてボールを投げてくれました。生活をともにし、時には助けられる立場になるわけです。そして発作が起きれば、私が患者さんを支えます。こうした医療現場からスタートしたことが、「本人とともにいる」という私の看護の原点になりました。

その後、友人のお母さんが今でいう若年性認知症になり、大変な生活をされているのを目の当たりにしました。当時は介護保険もなく、若年性認知症という概念もありません。どこに相談に行っても居場所がなく、やがて自宅のお風呂で亡くなってしまいました。悲しみと同時に、この日本で自分は安心して老いることができるのかと痛切に思ったのです。そこからスウェーデンの高齢者施設介護や認知症について学び、介護現場を職場とするようになりました。誰もが最後まで尊厳をもって生きられる社会をつくりたい。それが私の思いです。




sub_ttl00.gif  その人に合わせた支援が何より大切

若年性認知症や初期の認知症の人たちやご家族と日々出会うなかで、認知症に対する偏見がまだまだ根強いのを感じることがあります。たとえばとても悲観的になったり、「これ以上、認知症が進行しないように」とご本人に過度な努力を求めたり。現在のところ、認知症を完治させる薬はありません。けれどアルツハイマー型やレビー小体型認知症に対しては、脳の神経細胞を活性化させ、現在の働きをある程度保つ薬があります。こうした薬を上手に使いながら、自分の状態に合わせた活動や仕事をしている人たちがいます。

 認知症の進行を完全に止めることは、今のところできませんが、適切なサポートによってその人らしく暮らすことは可能です。しかし家族がその人が認知症であることや進行していくことを受け止めることができないと、さまざまなストレスがかかり、かえってトラブルになることがあります。

 繰り返しになりますが、認知症は人によって違う進行の度合いや症状をよく見極めながら、その時々の状態に合ったサポートをすることがもっとも重要です。専門家の力やサービスを使い、家族だけで抱え込まずに支えていきましょう。最近は当事者の方が自ら発言する講演活動も広まってきました。若年性認知症や初期の認知症と診断を受けてとまどっている方やご家族、あるいは支援者の方はぜひ私たちに相談してほしいと思います。

 

大阪府若年性認知症支援コーディネーター

(大阪府における若年性認知症の専門相談窓口)

電話 06‐6977‐2051

毎週 月曜日、火曜日、木曜日、金曜日

10時から17時まで(電話による受付は16時まで)

面接・訪問もいたします。




H30(2018)年12月掲載