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‥リレーエッセイ第11回‥


コミュニティづくりをめざした自主防災活動


高槻市東五百住さつき自主防災会

1.地域や団体の概要 

(1)所在地 高槻市東五百住町(公民館)

 天井川(川底が周辺の地面の高さよりも高い位置にある川)である女瀬川が地域を走り

 過去に水害の被害を受けたこともあるなど河川の氾濫の可能性がある地域です。

(2)世帯数 216世帯 約550人

 住民における75歳以上の高齢者18%、また65歳以上の人が多いなど、高齢化が進行しています。

(3)立ち上げ 平成20(2008)年4月

(4)防災委員 8人(平均年齢68歳)


2.取組~事業内容

(1)取組内容東五百住さつき自主防災会写真①(放水訓練).jpg

取組の概要は次の通りです。

① 地域とのコミュニケーションを図る

訓練。

...近隣自治会・自主防災会や介護施設職員への指導。

②個人の防災知識・技能を向上させる

訓練。

...防災基礎・総合訓練(救出・救護なども含めた体験等総合的な訓練)。

③行政等と共に取り組み、学ぶ訓練。

...市の自主防災連絡会主催の防災訓練や880万人訓練。

医師会が中心になった訓練。

④外部施設を利用して学ぶ行事。

 ...防災センターなど外部研修。

東五百住さつき自主防災会(避難訓練).jpg

⑤子どもを対象に楽しみながら参加してもらう行事。 

 ...自治会で行う地蔵盆などの行事に子ども防災訓練をセットで実施。

⑥防災だよりの発行(毎月)と広報活動。

 ...自治会の掲示板に「防災だより」を

  掲示。

掲示が浸透してきたことにより、住民が注意して掲示板を見てくれるようになり、活動の認知度を高めるツールとなっています。

⑦役員会議の開催(毎月)。

⑧世帯台帳の登録 

 ...毎年世帯調査(人の数と個人の基本データの収集)を自主防災会として行い、

  災害時のための基礎資料としています。

  特に介護が必要な方や独居の方、障がいのある方を把握し、地図に記載して

  おくことで、災害発生時に救助する人の明確化を図っています。  

  また、独居の方は緊急時の連絡先を聞いておくことで、その方に異変が起こった

  時の対応をスムーズに行えるようにしています。

  この取組を始めた当初は、登録に難色を示された方もいましたが、

  現在では提出率100%となっています。

(2)関係機関や関係性

  自治会の下部組織であり、予算や取組への協力などを受けています。

  また、近隣の自治会・自主防災会、介護施設の訓練に協力をしています。

  地域の公民館は古くバリアフリーな建物ではないため、地域内の介護施設に災害

  時の避難所としての利用をお願いしておくなど、相互協力の関係ができています。

  他にも行政や医師会などとも連携を行っています。

(3)予算

 自治会予算で対応


3.きっかけ~事の起こりや着火点

(1)住民の高齢化と災害時への不安

 住民の高齢化による災害時要援護者の増加の中、災害時への対応を不安視する声が出てきました。また、地域には若い人たちがいますが、平日の昼間には働きに行っているため地域にはいません。災害が起こった場合は地域に残っている人(多くは高齢者や子ども)で地域を守っていかないといけない、という意識が芽生えていったのがきっかけです。

(2)'地域のことは地域で守る' という意識の高まりと担い手の思いが一致

 自主防災への機運が高まった時に、防災関係の仕事をしていた人が住民にいて防災の話を聞くことができたり、地域のために何かしたいという思いを持つ人たちがいて、防災会の初期メンバーとなりました。また、同じように地域のために何かをしたいという思いを持った現在の主要メンバーの定年退職などにより、活動メンバーの確立につながりました。


4.取組の実現、深まりや発展などに影響した要素

(1)取組に適した自治会サイズ

 活動をやっていく規模として、東五百住さつき地区の自治会の規模がやりやすかった点があります。

(2)ミッションが明確

 地域の近くの川は氾濫する可能性がある中、自治会活動の中で一番大切なのは命を守ること、という意識が自主防災会を作ったメンバーの中で一致していました。

(3)メンバー自身が楽しみ、活動自体が居場所の一つになる

 メンバーにやらされ感が少なく活動自体を楽しんでいます。

 また、防災委員の家族も取組のスタッフとして大きな役割を果たしていくなど、活動自体がメンバーや家族などの一つの居場所となっています。

(4)自治会活動との連動

 自治会において、自治防災会の活動費用の予算化、世帯台帳登録の取組を自治会の一声見守り活動とも連動させて行っていくなど、資金や人、地域状況の情報共有などにおいて連携した活動となっています。

(5)ちょっとしたことでも聞きやすい関係性がある

 地域での防災活動の講師を自主防災会の防災指導員が務めるため、防災について気楽に何でも質問できる状況となっています。

(6)個人情報を扱うメンバーをなるべく固定化することで、情報保全の安心度を高める

 世帯台帳など個人情報を扱うメンバーがよく入れ替わると住民が嫌がるので、情報を扱うメンバーを絞り固定化するような配慮がなされています(現在は委員長と書記が担当)。

(7)取組に住民参加率を上げる要素を入れる

 取組には必ず何らかのお土産を付けるなど、参加の動機付けとなる要素を盛り込んでいます(防災グッズや炊き出しの試食など)。また、お土産と次の取組を連動させる試みもなされています。例えば、お土産に防災用三角巾を渡しておき、次の取組をその三角巾を使う内容にするなど、続けて訓練に参加してもらえるような仕掛けをしています。

 また、子どもが喜ぶような取組にすることで、子どもの参加率が上がっています。子どもが来ることで、子どもの付き添いで来る親の参加にもつながります。そうしたことで、通常の防災訓練では集まりにくい層の参加につなげています。

(8)子どもを防災の担い手として育成していく取組がある

 昼間や夕方に地域にいる子どもが守られる存在だけでなく、自分と地域を守っていく主体となれるような取組があります。例えば、子どもにAEDの訓練を行い、おとなが倒れた時に対応できるよう準備をするなど、困った状況になった時の具体的な対応策を学んでもらっています。

(9)住民が持つ'弱さやしんどさ'をみんなに知ってもらう取組がある

 自治会の班では、班長さんが何かあるごとに「自分が弱ければと弱いほどそれを隠すのではなくみんなに知ってもらって助けてもらおう」と呼びかけています。

 家族に何らかの課題があっても、周囲への相談をためらい、逆に周囲との関係を絶っていく場合もあります。住民全員に参加を呼びかける自主防災会の活動に参加してもらい、たくさんの住民が集まる場に、例えば認知症の方と家族が参加することで、その家族の存在を自然と住民みんなが共有するきっかけになっています。そういった積み重ねにより、何らかの課題を抱える家庭が何かあった時に誰かに相談できるきっかけづくりを防災活動が担っています。 


5.取組による変化

(1)何らかのしんどさを抱える住民の可視化のきっかけになっている

 自主防災会の取組が、ふだんは出てきにくい災害時要援護者の方も地域のみんなと取組む機会となりました。

(2)住民の防災に関する関心が高まった

 自主防災会の予算を承認してもらう自治会総会で、出席者から防災活動への予算について積極的な意見が出るようになりました。

また、防災訓練の参加率が上がっているなど、これまでの取組が防災に関する関心を高めています。


6.課題など

(1)防災意識を高める活動

 子ども、高齢者、障がい者など多様な参加者で取り組める行事の立案が必要となってきます(例えば、従来と一味違った訓練内容や関心度を高める講習会・研修会を計画)。

 また、これまでの広報・PR活動を更に強化して防災意識の高揚を計っていくことが求められてきます。

(2)後継者の確保・育成に向けた取組など

 防災委員の高齢化への対応(若年層の人材確保と育成)、要援護者の救出・救護支援に向けた担当防災委員の明確化などが求められます。

 他に、個人(会員)情報の取り扱いと維持・管理方法など、継続して個人情報保護の取組が求められてきます。

(3)活動の維持・向上のための取組

 高価な防災資機材の購入資金捻出や資機材の定期的な始動点検及び防災委員の資機材スキル向上など、自主防災会の取組を円滑に行える整備が必要となってきます。

平成30(2018)年3月掲載