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・・・・・第116回・・・・・

                  

今こそ立場を超えて

「働く者」の連帯を

連合大阪

拡大・非正規労働・連帯活動・国際グループ

なんでも労働相談 相談員

 大塚義彦 さん

                 

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sub_ttl00.gif  労働者全体の底上げを目指した活動

                                                               

  連合大阪は、すべての働く人が働くことを通して生活を守っていける「働くことを軸とする安心社会」の実現をめざして活動しています。「すべての」とは立場に関わらずということです。「連合は大企業で正社員として働く、"恵まれた人たち"ばかりが加入している組合」「正社員を中心とした組合員のために活動する組織」だと思っている人もいるようですが、それは誤解です。もちろん正社員の労働組合が基盤にありますが、労働者全体の底上げをしていくのが最大の目的です。

 

  労働市場の規制緩和が進み、今では全労働者の約4割が非正規労働者となりました。不当な扱いを受けても、立場が不安定なために泣き寝入りせざるを得ないという事例が多く起きています。正規であろうと非正規であろうと、働く者として労働問題は共通のテーマです。立場の違いを超えてつながろうと2009年4月に非正規労働センターを設立し、非正規労働で働く人も含めて「なんでも労働相談」として相談を受けています。なお、非正規労働センターは連合本部を中心に各都道府県にあります。


 sub_ttl00.gif  同一価値労働同一賃金を大前提に


  

  また、連合が目指しているのは「同一価値労働同一賃金」です。同じ職場で同じ仕事をしながら、正規雇用と非正規雇用とでは大きく待遇が違います。同じような仕事をしているのであれば、待遇や諸条件も同じにすべきというのが私たちの考え方です。「派遣やパートの人は時間がくれば仕事を中断できるが、そのしわ寄せは正社員にくる。だから待遇が違うのは仕方ない」という見方をする人がいます。しかし問題の本質は「長時間労働」であり、「時間がくれば帰れるのだから身分が不安定でも仕方ない」というのは論理のすり替えです。残念ながらこのような立場の違いからくる感情の行き違いや対立が、多くの職場で起こっています。そこで労働組合が同一価値労働同一賃金の考え方のもとに、一緒に働いている人たちが分断されないような形での解決を会社側に提案しています。

 

  たくさん相談を受けるなか最近つくづく思うのは、多くの職場で「働く人の人権」が尊重されていないということです。経営者や上司が下す業務命令のなかには、長時間労働や休日出勤、サービス残業の強制が多々含まれています。さらにひどくなると「あいつは気に入らないから口をきくな」と他の人たちに圧力をかけて排除したり、「明日からここに転勤だ」と突然通勤できないようなところに転勤させたりします。育児や介護といった生活上の事情を説明しても「従えないなら辞めてもらうしかないですね」と言うだけ。その他、上下関係のなかでのパワハラ、セクハラ、同僚間でのいやがらせなど人権を踏みにじるような内容の相談が絶えません。


sub_ttl00.gif  働く人にも欠けている知識と意識


  
  一方で気になるのは、働く人たちに労働法に関する知識がほとんどないことです。また、人権問題であるという意識をもっている人もあまりいません。ですから嫌がらせを目的とした無茶な業務命令でも断ることができず、無理をして心身を壊し挙句の果てに退職に追い込まれて泣き寝入りするというケースが多くみられます。会社から「明日から来なくていい」と言われ、そのまま本当に翌日から出社せず、何ヶ月も経ってから「解雇されて生活に困っている。どうしたらいいか」と相談電話をかけてくる人が実は少なくありません。

  解雇するには客観的に合理的な理由が必要です。解雇の理由は書面でもらうよう請求できます。しかし多くの人が具体的な理由も聞かず、解雇理由書ももらっていません。こういうときには一人でも入れる組合に加入してもらい、私たちが相談者と一緒に会社と交渉しますが、「私たちはそんなことは言ってません。無断欠勤した末に辞めた人です」と言われてしまえば、それ以上の対処は難しいのです。

  本来、労働者と会社の立場は「対等」です。しかし雇用契約を交わしたとたんに上下関係が生まれ、働く人は経営者や上司に「従わなくてならない」と思い込み、逆に経営者や上司は「思い通りにできる」と考えてしまう。確かに力関係は否応なく生じてしまうのですが、だからこそ法律で労働者の権利は守られています。労働組合と仲間たちも大きな力になります。


 sub_ttl00.gif 支え合う気持ちがみんなの力になる

  
  労働者が労働組合をつくったり加入したりするのを嫌がる会社がありますが、一方で「組合があるほうが助かる」と言われるところもあります。組合が労働者の意見をまとめてくれて聞くことができ、会社側の言い分や事情も労働者側に伝えてくれるからです。

  労働者側にも「組合に入ると冷遇される」という意識があります。実際に嫌がらせを受けるケースもありますが、そうした会社はやはり本当の意味で働く人の権利や立場を尊重するという空気がなく、心身共にしんどい思いをする人が多いようです。若い世代には「組合費を払ってまで加入する気になれない」と考える人が増えています。どちらも大変な状況になってから「どうすればいいのか」「何とかしてほしい」と訴えてこられます。しかし本来、働く者同士が支え合うのが労働組合です。お互いに支え合うという気持ちで連帯することで、会社という組織と向き合う力が湧いてくるのです。

  労働をめぐる状況は厳しくなる一方で、心身を病み、働けなくなってしまう人も増えています。ご本人はもちろん、社会にとっても大きな損失です。本来、働くことは人生に喜びや充実感をもたらすものであるはずです。今こそ、働く者同士のつながりと支え合いを広げていきましょう。 




(2015年3月掲載)