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・・・・・ 第113・・・・・

地域で働き、地域を支える仕組みづくりに取り組む

しらさぎ夢テラス

 所長 有田祐子さん

 

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高齢化が進む団地の再生をめざして


  

 

 

 UR白鷺団地は75棟からなる大規模な団地です。2500戸ありますが、現在、自治会に加入しているのが約1000世帯です。空き家率が年々高くなってきました。

 規模が大きいので、75棟を3つの地区に分けています。活動拠点「しらさぎ 夢テラス」はB地区にあります。線路を隔てたC地区は土地の売却、B地区の一部は取り壊して建て直すことが決まりました。C地区に住んでいたみなさんはA地区へ移りましたが、エレベーターがないのに上層階の部屋になった、近くに住んでいた人と離れてしまったなどの問題も生まれています。

 高齢化率も高く、65歳以上の方が全体の37%を占めます。女性だけをみると、47%にのぼります。堺市のなかでも高齢化が進む東区において、白鷺団地の高齢化はさらに際立っています。「みんなが安心して長く暮らせるいい知恵はないか」と堺市からNPO法人ワーカーズコープにご相談があったのがきっかけとなり、堺市東区役所地域福祉課とともに「堺版新しい公共創出事業」モデル事業として「しらさぎ夢テラス事業--高齢者と団地再生の取組み」が2013年度から始まりました。

 ワーカーズコープは、高齢のためなかなか仕事に就けない人が自分たちで仕事をつくろうと事業を始めたものです。1970年代から活動を始め、1986年からは現在の連合会という形となり、事業も幅広く展開してきました。

 

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地域を支える人を地域で育成する

 

  

 ワーカーズコープは「3つの協同」を理念に掲げています。働く者どうしの協同、利用者・家族との協同、地域との協同です。利用する人も地域のみなさんも「お客さん」ではなく、当事者として参画してくださいということです。そのため、みんなが安心して長く暮らせる地域づくりとして、住民同士のささえあいの仕組み「ちょこっとヘルプサービス」の担い手として「くらしのサポーター養成講座」を開きました。地域を支える人を地域のなかで育成するためです。現在、16名のサポーターのみなさんが活動しています。

 ほかに、夢テラスの主な活動として高齢者の孤立を防ぐ「見守り事業」と「相談事業」があります。近接する大阪府立大学に働きかけ、学生と住民との交流にも取り組んでいます。大学の食堂でランチを食べる企画「府大deランチ」は、家に閉じこもりがちな高齢者に好評です。学生が校内を案内してくれ、食堂で好きなものを選んで食べるというのが好評です。今後は栄養士さんによる簡単な栄養講座なども考えています。

 

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持続可能な仕組みを模索しながら

  

 見守りや相談はこちらからの働きかけがポイントです。講座の報告や案内を掲載した「しらさぎ夢テラスだより」を配り、おしゃべりをするなかで夢テラスの活動を伝えます。また、「夢テラス」ではコーヒーを無料で提供しています。冷暖房も完備なので、住民のみなさんが買い物帰りなどに休憩場所として立ち寄られます。その時の会話等で、認知症が進行しているように見受けられる方に気づくこともあり、その場合は行政と連携しながら見守りを意識します。

 生活状況をできるだけ把握したいので、住民のみなさんには入会をおすすめしています。同居家族の有無や緊急の場合の連絡先などを記入していただくだけで、入会金や会費などは無料です。同時にアンケートで特技を教えていただき、講座のリーダーとしてボランティアをお願いしたりもします。水墨画やパソコン、手芸など多彩な講座が開かれ、好評です。

 「ちょこっとヘルプサービス」は暮らしのなかのちょっとした困りごとをお手伝いするというもので、夢テラス事業における最大の柱です。通販で買ったパイプハンガーの組み立てや切れた電球を取り替えなど、若い頃は当たり前のようにできていた家事が年齢とともに困難になります。従来は自治会や民生委員さんが担ってくれていましたが、高齢化が進み難しくなってきました。そこで地域で支え合う仕組みとしてサポーター養成講座のなかで考えました。課題は料金についての合意形成です。持続可能な仕組みにするためには好意に頼る無償ボランティアも高額な料金も無理があります。話し合いの結果、試験的に1時間500円と30分300円という料金設定にしました。利用の様子をみながら、さらに議論を重ねていければと思います。

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誰もが支え、支えられる地域に

  

 私たちの社会は長い間、支援する側とされる側に分かれていました。けれど少子高齢化が進む今後は、誰もがある時は支え、ある時は支えられる社会でなければ成り立ちません。地域福祉とは総合福祉です。高齢者だけでなく、障がい者、生活困窮者、若者、子どもなどあらゆる人が対象です。それぞれの課題をみんなで担う。それも継続するにはボランティアではなく、仕事として成り立たせていく。それは決してドライなものではなく、地域の活性化とつながりを生み出す土台となります。

 このモデル事業は2014年3月に終了します。以後は自分たちで仕事をつくっていくことになります。住民のみなさんが地域で働きながら地域を支える仕組みづくりに引き続き取り組んでいきます。

 

(2015年1月掲載)