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   ・・・・・ 第104回・・・・・ 

SSWを組み入れた

「福祉と教育の協働」で

子どもたちの

      育ちを見守る

太子町教育委員会学務指導グループ長

大門和喜 さん

大阪府太子町教育委員会

スクールソーシャルワーカー

森本智美 さん

 
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学校教育に福祉的な視点を

 

  

 大阪府南河内郡太子町は人口14000人余りの小さな町です。教育委員会の指導主事という私の仕事内容は教育課程や学力向上、人権教育、生徒指導、教職員人事等と多岐にわたります。着任してまもなく、学校現場が抱える課題に対して細やかに対応できないことにはがゆい思いを抱くようになりました。そんな時、課題を抱えた子どもを教育と福祉との連携でサポートするSSW(スクールソーシャルワーカー)の存在を知りました。教員時代も含め学校教育という枠組みだけで子どもを支援することの限界も感じていたので、ぜひ太子町にもSSWをと考えました。

 太子町には小学校が2校、中学校が1校あります。現在は、小学校と中学校に1名のSSWを配置し、週1回という限られた回数ですが日常的に学校や子どもたちに関わってもらっています。 

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保護者との交流を通じて具体的な困難を知る(SSWより)

 

 中学校は生徒指導が組織的に機能していますが、小学校は担任がクラスの問題を一人で抱えてしまい、孤立しがちです。経験年数が少なく、虐待や貧困の問題に関わった経験のない教員もいます。SSWが福祉の観点で問題をとらえてアドバイスをしてくれたり、児童相談所や役場の福祉室など関係機関につないでくれたりすることが大きな助けとなります。これまでは、「この子を何とかしたい」という共通の課題はあっても、それぞれの立場から協力が潤滑に進まなかったところが、SSWが関係機関の通訳となり調整し意思統一をするコーディネーター役となることで、支援がスムーズになりました。また、1人の子を支援するために役場内の関係課が集まり話をできるようになったなど、別々に支援することでの無駄も省かれるようになりました。

 1年目は学校中心の関わりでしたが、2年目から地域と連携した取組みを始めることができました。そのきっかけとなった事例をご紹介します。

 ある児童が不登校気味になりました。その背景には保護者の生活体験や社会体験の少なさがあり、それが子育てに影響し子どもとうまくコミュニケーションがとれないことにありました。思春期にさしかかった子どもが親のいうことを聞かなくなるのはよくあることですが、保護者自身が生活上の困難を抱えていることによって問題がこじれる場合があります。

 この場合も子どもと十分に話し合うことができず、結果として不登校が続いている状態でした。実は以前から学校側も保護者のしんどさは認識していましたが、福祉的な観点からの支援ができず、家庭訪問をして保護者を励ますという支援にとどまっていました。

 SSWもケース会議に入り、保護者ができる範囲と子どもたちの生活状況を知る必要があることを確認しました。さらに主任児童委員とも地域として何ができるかを話し合いの中でアイデアを出し合い、子どもも保護者も一緒に参加できる取り組みを行ってきました。そのなかで親子の関わり方や親子それぞれの得手不得手が見えてきて、支援の方法がわかってきました。

 sub_ttl00.gif 早い段階の支援で将来の困難を未然に防ぐ

 

  子どもの学力向上をめざした取組みがさまざまになされていますが、学力向上を進めるためには、指導方法の工夫改善を進める一方で、子どもの生活と気持ちの安定を図ることも必要不可欠だと実感しています。特に家庭生活に係る課題は深刻で、小学校入学時に必要なものが揃わない子どもたちもいます。教員は授業に入る前に持ち物の確認に時間をとられます。また、生活に追われる保護者は保護者自身も精いっぱいで、家庭で宿題をみてやる時間がとれません。低学年のうちは教員がどうにかフォローできても、家庭学習の習慣が身につかないまま高学年になると、やがて授業についていけなくなります。家庭生活は子どもたちの学力や将来の進路選択にも影響を与えます。すべての子どもたちが必要な教育を受けながら成長していくために、福祉的な視点を学校教育に組み入れることはもはや欠かせません。その要であるSSWの養成と勤務体制の整備も含めた改善が社会全体として急がれます。福祉と教育、そして地域との恊働をさらに進め、子どもたちの育ちを町全体で見守っていきたいと思います。

(2014年3月掲載)