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   ・・・・・ 第103回・・・・・ 

誰もどこかに

     参加できる

自治型福祉で

      地域を支える

堺市御池台校区連合自治会長

校区福祉委員会委員長

 戎谷悦子 さん

 
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 阪神淡路大震災をきっかけに

       「要援護者リスト」作成に取り組む

 

 

 堺市御池台では自治型福祉に積極的に取り組んでいます。子育て支援から高齢者支援まで生涯を通じて地域とつながり、安心して暮らせる地域を目指してきました。現在のように幅広く事業をおこなうきっかけとなったのが1995年の阪神淡路大震災でした。大きな災害が起きた時、置き去りにされがちなのが障がいや高齢で体の不自由な方々です。こうした要援護の状態にある人たちとふだんからつながっておくことで、いざという時に孤立させない仕組みづくりが必要だと痛感しました。そこで御池台校区福祉委員会で、「要援護者リスト」の作成に取り組みました。リストへの掲載者は、住民から希望を募る「本人による手あげ方式」としました。

 個人情報保護の観点からリストをつくるのが難しいと言われますが、どこにどんな課題を抱えた人が住んでいるのかがわからなければ、いざという時には命に関わります。私たちは自治会ごとに要援護者マップを作り、障がい者(児)には顔写真も入れたリストを作成することになりましたので本人の申請により進めていきます。この作成に関わっては、地域にある障がい者の保護者の会だけでなく、民生委員児童委員も一緒に進めています。

年末や敬老の日などには自宅へ記念品を届けます。年に数回訪ねることで信頼関係ができ、受け入れてもらいやすくなります。また安否確認や情報の見直しにもなります。

 

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地域との接点がなかった人を事業につなげる

 

 

 現在、御池台校区福祉委員会の事業としては、毎月発行する「すきやねん御池台ニュース」、高齢者や一人暮らし世帯が対象の「ふれあいお食事会」をはじめ、「男性の料理教室」「歩こう会」、就園までの子どもを対象にした「ぞうさんクラブ」、障がいのある子どもと親の交流、地域でのネットワークづくりをする「みいけ・レインボー」など14を数えるまでになりました。拠点の中心である地域会館の貸室は常に何らかの教室や集まりが開かれていて、借りるのも大変な状況です。

 こうした活動には「お金」と「人」が不可欠で、お金と人がないために「できない」「続けられない」という話をよく聞きます。

 私たちも決して恵まれた環境にあるわけではありません。ただ、どの事業も必要に迫られて生まれたものであり、必要である以上「お金も人もないから」とあきらめるのではなく、「じゃあどうすればやれるか、続けていけるか」を考えてきました。

 お金は行政などからの助成金や補助金等と自治会費をやりくりし、そしてできるだけ外注せず、しんどい思いをしてでも自分たちが動くことで節約してきました。

たとえば大きなイベントではテントを設置します。高齢化が進んだ今、テント張りを業者に頼む自治会が多いようですが、とてもお金がかかります。私たちはニュースで協力を呼びかけたり、直接お願いに回ったりして自分たちでやってきました。自分からは手を挙げにくいという人でも、依頼を断る人はあまりいません。普段は地域との接点がない男性もイベントの手伝いをきっかけにいろいろな形で参加してくれるようになります。そこから山歩きや飲み会を楽しむグループもできました。

 

 また、福祉に使う予算の捻出のために、自治会加入の世帯から「福祉会費」をいただき、独自財源づくりにも取り組んでいます。

 

 sub_ttl00.gif 好きなことや得意な部分関わることで無理なく参加

 

 

 高齢化が進む社会で、地域の福祉を担う人、活動を引継いでくれる人がいるかどうかが大きなポイントです。私たちはイベントに参加してくれた人や手伝ってくれた人に積極的に声をかけています。お祭りが好きな人、歌が好きな人、電気や建築関係の仕事をしている人など、好きなことや得意な部分に参加してくれるだけでいいのです。たとえば映画サロンでは、映画について教えてくれる人もいれば、イスを並べたり暗幕の設置をやってくれる人もいます。最初こそ自分たちで悪戦苦闘しながらやっていましたが、「この人は」と思った人に声をかけていくうちにいつの間にか自主的に関わってくれる人が出てきました。

 

 また、高齢化により自治会の役員や班長を引き受けられないと断る人も増え、3年か4年に1度という速いペースで当番が回ってくるようになりました。これも多くの自治会に共通することだと思います。確かに負担はありますが、引き受けることで地域のことがよく見えるようになり、人間関係が広がるのも事実です。どうしても無理だという事情はあると思いますが、できるだけ自治会には加入してほしいと思っています。実際、私たちのところでは、役員を経験した人が1年の任期が終わった後も何らかの形で事業に関わってくれています。

 

 sub_ttl00.gif 生まれた直後から成人までを地域で見守る

 

 

     

 子どもたちに地域への愛着をもって育ってほしい、そして地域の将来を支える一員になってほしいという思いも強くもっています。そのために子育て支援にも早くから取り組んできました。まず、子どもさんが生まれたら民生委員がお祝いをもって訪問します。少しでも地域のお店に還元したいという気持ちから地域の薬局で紙おむつと交換できる引換券をお祝いとしてお渡ししています。毎月お誕生日会を開き、就園前までは親子で交流できる「ぞうさんクラブ」、小学校に入学したら「子ども会」「青少年指導部」、成人の日には小学校と中学校の同窓会を兼ねた「成人を祝う集い」と、一人の子どもが生まれてから成人するまで地域で見守ります。

 

 長年の取組みの成果として現在は活発に活動していますが、やはり経済的な問題はあります。このまま高齢化が進めば、現在のような無償ボランティア中心の活動では継続が難しいでしょう。今後はNPOとして自治型福祉を安定して担っていける仕組みづくりと、若い親世代に引継いでいく世代交代が課題です。

(2014年3月掲載)