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・・・・・ 第101回・・・・・

発達に課題のある

子どもたちが地域で育ち、

生きていくために

明日へのつむぎ

代表  東村 剛志 さん

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子どもたちの半数が「発達障がい」の診断を受けていた

 

 『明日へのつむぎ』は、発達に課題のある子どもやそのご家族が日々の生活を生き生きと過ごすためのお手伝いをしています。『明日へのつむぎ』を立ち上げたのは2011年12月ですが、そこに至るまでにはさまざまな子どもたちとの出会いがありました。大学院生時代は精神科の病院で働きたいと考えていたのですが、ご縁があり大学院入学前にボランティアをしていた茨木市立沢良宜青少年センターで働き始めたのが発達障がいの子どもたちとの出会いでした。

 ちょうどその年の春、青少年センターに入って来た小学1年生の子どもたちのうち、半数が発達障がいの診断を受けていました。当然それなりの対応が求められたのですが、当時の私にはわからないことだらけでした。そこで発達障害がいについて学ぶとともに、どのようなお手伝いができるのかを考え、まず私にできることは保護者の負担を軽減することなのではないかと思い『発達障がい児の保護者の会 まんママの会』を立ち上げました。

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ムーブメント教育・療法との出会い

 

 そんな時、ムーブメント教育・療法に出会いました。一言で説明しますと、身体を動かすなかで楽しい音楽を使ったりしながら集中力や模倣力、認知力や社会性などを身につけていくというものです。私が強く共感したのは、無理に音楽に合わせたり、みんなに合わせなくても良いというところでした。子ども自身が「楽しそう、自分もやってみたい」と感じ、自ら参加することを尊重するのです。そして保護者が一緒に楽しめるのも大きな魅力でした。「是非自分もやりたい」と『茨木ムーブメント教育勉強会』を立ち上げました。

 一見、楽しく身体を動かしているだけのように思えますが、実はそれぞれの遊びの中にきちんとした理論があるのがムーブメント教育・療法の特徴です。これまで発達に課題のある子どもに対してはさまざまな療育が行われてきました。しかし、社会性という部分は伸ばしにくかったのではないかと思われます。もちろん「ムーブメント教育・療法がすべてだ」などと言う気はまったくありません。楽しみながら社会性を身につけられる一つの方法ではないかと考えています。

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地域の方とともに

 当事者でも保護者でもない私の役割は、情報提供と居場所づくりだと考えています。保護者の方は、目が離せない子どもを育てていると情報を調べる時間もとれません。私が親の会を始めるにあたって初めに行ったことは、発達障がいに関する講演会や催し物などを調べて1枚の紙にまとめることでした。

 青少年センターで「まんママの会」を始めた頃の保護者の方たちの決まり文句に「すみません」がありました。普段の日常生活の中でこの言葉を最初に使うのが当たりまえになっていたのでしょう。ですので、「ここにいる間だけでも"すみません"はやめましょう。」とよくお伝えしたものです。また、わが子のことで泣かれる保護者の方もたくさんおられました。そんな様子もみるにつけ、しんどさを出し合い、ホッと一息つける場所の大切さを思い知りました。

 一方で、閉じられた場所にしても良くないと考え、地域のお祭りやフェスティバルに参加させて頂いたものです。その甲斐あって地域で理解をして下さる方が増えていったことはとてもありがたいことでした。

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保護者とともに、育っていく子どもたちと向き合う

     

  

現在の事業の中心は「塾」です。知的能力は高いけれども社会性やコミュニケーションが取りにくくこだわりが強い子どもたちを受け入れています。キッズ教室(2歳~小学2年生)では集中トレーニングやムーブメント教育・療法を、小学部では工作や料理を通してソーシャルスキルズトレーニングを、中学部では教科学習や日常生活におけるソーシャルスキルズトレーニングなどを行い、集中力やソーシャルスキルズを学んで将来の自立生活に役立ててもらうことをめざしています。学校では叱られたり注意されたりすることが多く、緊張しながら学校生活を送っている子どもたちもいるので、伸び伸びと自分らしさを発揮できる場であることを心がけています。

 また、発達障がいがある大人の当事者会「北摂ホッとサロン」を奇数月に開催しています。発達障がいがある大人の方に会への参加を呼びかけたところ、近畿一円に加えて四国や九州からも参加される方がいらっしゃって、当事者の方が落ち着いて話せる場がまだまだ少ないことを実感しています。基本的には当事者の方に限定していますが、この会には発達障がいがある子どもを育てておられる保護者の方で私と繋がりのある方には特別に参加して頂いています。わが子の将来を不安に思っておられる保護者が、成人した発達障がいがある方と出会うことにより具体的なイメージを持ち、安心して頂けたらと考えているからです。

 臨床心理士や保育士、そして医師などさまざまな専門職の方に関わって頂きながら、当事者でない立場だからこその視点を生かし、発達障がいがある子どもとその保護者さんのお手伝いをさせて頂ければと考えています。

(2014年2月掲載)