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・・・・・ 第99回・・・・・

機関支援や専門家育成

通じて発達障がい

への理解と支援を広げる

社会福祉法人北摂杉の子会

大阪府発達障がい者支援センター アクトおおさか

センター長  堀内 桂 さん

sub_ttl00.gif 相談を受ける一方、専門機関との連携を

 

 大阪府発達障がい者支援センター アクトおおさかは、ご本人とご家族に対する相談の受付と助言をおこないつつ、就労や医療、保健、福祉といった各分野の専門機関に対する研修や情報提供などをおこなっています。中でも、私たちが積み上げてきたノウハウを地域の相談機関でも生かしていただく意味でも、すでに地域に存在する支援機関をバックアップする意味でも、機関の性質に合わせて、幾つかのコンサルテーション(問題や課題を評価・整理し、解決に向けての支援を行う相談)の事業もおこなっています。

 すでに相談機関につながっている方が、さらに専門的な相談を求めてこられることもあります。そうした場合はその相談機関と連携していくことになります。現在、10カ所以上の事業所と事例検討などを通じてネットワークを築こうとしています。以上、本人や御家族からの相談、就労支援機関との連携、機関コンサルテーション、普及啓発などが現在の事業の柱です。

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自分の特徴を知ることから、支援が始まる場合があります

 

 私たちのところへ相談に来られる成人の方の多くは、生活や職場の中で何らかの「生きづらさ」を感じている方です。ご自分やご家族がいろいろ調べるなかで、その生きづらさが発達障がいによるものではないかと思い至り、診断を希望される方が多くおられます。

 私たちは、直接診断や検査はおこないませんが、まずできる限り、小さなときから現在に至るまでの行動の様子をじっくりと聴き取ります。その中で、ご本人も自覚していなかった発達の凸凹がわかってきます。「発達障がい」という言葉も場合によっては使わず、「発達や能力の凸凹」という表現をしています。そして必要な支援や情報の提供をするのが私たちの役割です。

 こちらから伝えるチャンスがあれば、「あなたにはこういう特徴がありますね」と確認し、場合によっては作業体験を通じて実感してもらい、どんな工夫をすれば上手くいくかを一緒に考えます。そのために何度か通っていただく場合があります。発達の凸凹や、対処の仕方などがある程度わかってくれば、その方の住む地域にある支援機関などをご紹介します。地域で日常的にサポートを受けていただくためです。

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専門家の古い概念による弊害も

 子どもの発達障がいについてはかなり認知が広まり、早い段階で診断を受けられるようになってきましたが、成人の場合は、まだまだ性格や「やる気」の問題にされがちで、そのために孤立し、問題が複雑化、長期化することが珍しくありません。

 医療機関をいくつも回って、最終的にアクトおおさかへ来られる人も少なからずおられるのです。悩みながら何軒も同じようなクリニックを受診しても困りごとは改善せず、その末に私たちのところへ来られるのです。

 こうしたことが起こる背景には、自閉症に対する古い観念が今も根強く残っていることが考えられます。現在、発達障がいとされる障がいの中で、広汎性発達障がいに含まれる自閉症が1940年代に発見され、以来自閉症の人は「ほとんどしゃべらない」「目が合わない」などと言われてきました。しかし今では、自閉症は連続体障がいといわれ、むかしではおおよそ発達障がいと思われないような人まで診断を受けるようになったのです。そういった人は、目を合わせて話す人も多いし、むしろよくしゃべる人も多いのです。そういったことが、まだよく知られていないのです。そのため、診断に携わる医療機関や心理士の養成も今後は課題になると思われます。

sub_ttl00.gif 理解を深め、得意な部分を生かせる環境づくりを

     

   もうひとつ、発達障がいに対する理解が足りないと感じるのが、脳の仕組みの部分です。特に、広汎性発達障がいの人は、ある種の記憶に優れた脳の持ち主で、これは自閉症が発見された頃から言われていることですが、すごく優れた一面もあるのです。この記憶と密接に関係しているのが海馬といわれる場所や、社会脳や感情中枢といわれる扁桃体という場所です。広汎性発達障がいを持つ人たちは、普段の面接でも、わずかでも記憶に違えたことを言われると極端に不安になる人が多いのです。もともと、こういった脳の部位が働きすぎているので、わずかな物事の変化がストレスとなり、うつ的な状態を引き起こすので、精神病としてのうつ病とは性質が違うように思われます。

 しかしこうしたことも、一般にはあまり知られていません。そのために、精神病と同様の治療を受けることになり、多量の向精神薬を処方されている人もいるのです。

 発達障がいを「障がい」としてではなく「発達の凸凹」としてとらえ、凸つまり人より得意な部分を生かせる勉強や仕事のやり方を習得すれば必ずしも医療、特に服薬は必要ないという人も多くいます。まだまだ「障がい=マイナス」という認識が根強く、子どもの頃から褒められたり認められたりした経験の少ない人、そのために自分に自信のもてない人が多いのがとても残念です。発達の凸凹に対して、本人はもちろん、家族や学校、職場、地域がうまくつきあっていくことでその人らしい生活を送ることは十分に可能です。支援にかかわる人たちの育成や関係機関への研修を通じて、そのことをしっかりと伝えていきたいと考えています。

(2014年1月掲載)