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![]() ![]() ![]() 木村達也(きむら・たつや)さん 弁護士 |
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30数年前に「全国クレジットサラ金問題対策協議会(略称:クレサラ対策協議会)を立ち上げて以来、消費者金融の債務者の救済に取り組んできました。多重債務を生み出す背景には、貸金業界による過剰融資、高金利、違法取り立てという3つの要因があります。いくら被害者を救済しても元を絶たねば本質的な解決にはならないという認識のもと、多重債務者を生み出す営業姿勢を法律によって改めさせる運動を続けてきました。 |
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こうした流れは貸金業界に大きな影響を与えており、大手消費者金融も含めて、経営規模の縮小が進んでいます。また、2007年以降、5件以上の業者から借りている人たちが約100万人減りました。あと50万人ほどの多重債務者がいるといわれていますが、改正貸金業法の本格施行によってさらに減少するはずです。 |
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また、多重債務問題には依存症がからむことも多くあります。長時間労働や低賃金、不安定雇用のような雇用状況や、それによって陥る「貧困」などで家庭が崩壊すると、辛い思いをまぎらわすためにギャンブルや薬物、買い物、飲酒といった行動に走ることがあるのです。この問題にも正面から取り組もうと、2007年に「依存症対策全国会議」を立ち上げました。そのほかにも「多重債務による自死をなくす会」「セーフティネット貸付実現全国会議」「生活保護問題対策全国会議」など、「貧困」から派生するさまざまな問題に取り組む運動を展開しています。 |
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強者の論理がまかり通る社会で弱者が声をあげていくには、運動をマイナーなものに終わらせず、社会の表に引っ張り出すことが必要です。たとえば私は多重債務者の救済に自己破産という手続をとりました。破産者といえばかつては「怠け者」「借金を棒引きにしてもらったずるい人間」というイメージが強かったのですが、自己破産者の数が増えるにしたがってそうした偏見や差別のまなざしは薄れてきました。現在、自己破産経験者は100万人を超えたといわれています。多くの人の身内や知り合いに1人ぐらいは経験者がいるでしょう。すると国民は自然に破産の効用を学び、破産者に対する偏見や差別意識が薄れていくのです。生活保護も同様です。このように、偏見差別意識をなくしていくには、社会がもっているシステムについて社会全体が認知することが重要なのです。そのためには現場をよく知っている人間の絶えざる努力と闘いが求められます。マイナーな運動をメジャーにするのは地道でしんどい作業の連続ですが、問題を先に知った者が広く社会に知らせていくことは、人間としての責任だと私は考えています。 |