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![]() ![]() ![]() 中野 冬美(なかの ふゆみ)さん 特定非営利活動法人 しんぐるまざぁず・ふぉーらむ関西 事務局長 |
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先日、厚生労働省が「2006年度全国母子世帯等調査結果」を発表しました。そこで2003年度の調査結果と比べて、常用雇用が増えたとされています。けれども「しんぐるまざあず・ふぉーらむ関西」に集まってくる声や私たち自身の実感とはずいぶんかけ離れています。2003年度の調査結果でも、臨時・パートは常用雇用より10%ぐらい多いだけだとされていて、ずっと違和感を持ち続けてきました。これはどういうことなのだろうと検証してみると、「常用」という言葉の使い方に問題があることに気づいたのです。 |
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平均年間就労収入についても同じ「言葉の使い方のカラクリ」を感じます。今回の調査結果では全国の母子世帯の平均年間就労収入が171万円であり、前回よりも9万円増えたとされています。また、児童扶養手当などを含めた平均年収は213万円で、こちらは前回より1万円増です。こうした数字を挙げられると、母子家庭を取り巻く状況が改善されてきているかのように思われるでしょう。しかしこれはごく一部の高収入の専門職に就いている人たちを含めた数字であり、実際には収入ゼロから150万円前後の人たちが一番多いのです。データの真ん中の値を表す中央値としては、就労収入が140万円前後、年収は190万円弱となっており、母子世帯の年収の実態としてはこちらのほうが私たちの実感と重なります。全世帯の平均年収564万円の3割強に過ぎず、その差は歴然です。 |
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自立支援事業の最も大きな柱が「自立支援給付金事業」で、自立支援教育給付金と高等技能訓練促進費のふたつがあります。しかし高等技能訓練促進費を受けられるのは、看護師、介護福祉士、保育士、理学療法士、作業療法士の5業種の資格取得に限られています。市町村の裁量で業種を広げることも可能なのですが、うちへ相談に来られた人は「司法書士の資格を取りたい」と申し込んだところ、「なれるかどうかわからないからダメです」と言われたそうです。 |
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社会全体で非正規雇用が増えている今、正規雇用だけにこだわるのも無理があります。大阪市が以前行った調査では、1ヶ月に必要な収入として、平均20万円という数値が出ています。そのためには1,400円から1,500円の時間給が必要です。非正規雇用でも生活できるだけの賃金を最低賃金として定めるという方向に、日本の労働システム自体を転換していく必要があると思います。また、1日休めば仕事を失う可能性すらある母親のために、有給の看護休暇制度の充実と、病気になったときすぐ預かってもらえる病児保育の制度が必要です。そしてどうにも立ちゆかなくなった時に頼れるセーフティネットも欲しいのです。 |