~「思いやりをもちましょう」「がんばれ」は何の効果もありません~ (その2)
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 「いじめてもいい理由」なんて絶対にない 「ガンバレ!」は残酷な言葉です。よく、いじめられている子に「ガンバレ」「いじめに負けるな」と言う人がいます。けれど、その子はもう十分にがんばっています。がんばってがんばって、我慢して、だけどもうどうしようもないから苦しくてたまらないのです。それ以上、どうがんばれというのでしょうか。いじめられている子に「ガンバレ!」と言うだけなら、加害者を野放しにし、「自分は責任を負いませんよ」と言っているのと同じです。いじめは、常にいじめる側の問題です。「いじめてもいい理由」なんてありません。いじめられている子を叱咤激励するのではなく、いじめている子に「やめなさい!」と言うべきなのです。  いじめは心がけや思いやりの問題ではありません。 いじめとは、相手がつらいと感じることをわざわざやるものです。ですから「相手の気持ちを考えましょう」「思いやりをもちましょう」などと言うのは無意味です。逆にいじめを助長することにもなりかねません。大事なのは、学校や会社の中で「たとえどんなに気が合わない人でも、暴力や無視や仲間はずれは絶対にいけない」というルールを徹底することです。そしてルールを破った人は、立場や年齢に関係なくペナルティを受けなければなりません。人の物を盗んだり、わざと壊したりすれば罪になります。人をわざと痛めつけるいじめも「罪」としてルールを明確にし、「仲間うちの論理」を飛び越えて対応する必要があります。
辛淑玉(しん すご) 1959年東京生まれ。人材育成会社「香科舎」、「人材育成技術研究所」代表。人権に関わる講習・講演会を多数行っている。UCSD(カリフォルニア大学サンディエゴ校)の客員研究員として人権問題に取り組む。「怒りの方法」など著書多数。
内藤朝雄(ないとう あさお) 1962年東京生まれ。愛知県立東郷高校を中退。山形大学、東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。現在、明治大学文学部助教授。専攻は社会学。著書に「いじめの社会理論」(柏書房)、「いじめと現代社会」(双風社)など。 |
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