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人権のコミュニティづくり事例報告・交流会を

 開催しました


 平成30(2018)年2月16日(金)、人権尊重のコミュニティづくりの活動が起こり、進み、根付いていく仕組みやポイントについて考える、「人権のコミュニティづくり事例報告・交流会-コミュニティづくりのすべての道は人権に通じる-」をHRCビルで開催しました。人権、福祉、まちづくり等を担当する行政関係者や地域で福祉や人権問題に取り組む民間団体等40人が参加しました。


 第1部は、「大阪府内におけるコミュニティづくりの事例紹介とパネルディスカッション」として、まず、本事業で収集した事例の概要報告を行いました。
 次に、本事業の推進にあたり専門的な助言をいただいている検討委員によるパネルディスカッションでは、「子ども」、「地域福祉」、「持続可能なまちづくり(防災を含む)」という各ご専門の観点から、民間や行政それぞれの立場で人権が大切にされたコミュニティづくりに取り組むヒントをお話しいただきました。また、参加者との意見交流の中で、コミュニティづくりのポイントについて深めていきました。

 第2部分散会では、上記3つの観点で小グループに分かれ、各検討委員が進行して、更に内容を深めていきました。



第1部「事例報告とパネルディスカッション」

■報告 大阪府内におけるコミュニティづくりの事例紹介 IMG_6884 (640x480).jpg 

報告)一般財団法人大阪府人権協会  
  

■パネルディスカッション                  

パネラー

郭理恵さん(大阪人間科学大学)

玉置好徳さん(梅花女子大学)

寺川政司さん(近畿大学建築学部)

コーディネーター

一般財団法人大阪府人権協会    


第1部のパネルディスカッションでは、パネラーである検討委員から、コミュニティづくりのヒントとして、次の内容が出されました。


1.子どもの取組に関して 
郭理恵さん(大阪人間科学大学)

 貧困等様々なしんどさを抱える子どもたちの中には、社会や家庭に居場所を持てなかったり、適切な支援つながっていない場合があります。生活困窮世帯への公的支援として、生活保護がありケースワーカーが支援を行っていきますが、世帯を対象とした支援であるため、その家庭の子ども向けに別途支援を行うことは難しく、またそれに丁寧に対応するような行政サービスは不十分であるのが現状です。

 こういった狭間の問題、行政サービスでは十分にまかないきれないに課題に向きあい、何とかしたいという思いでつくられていった取組の一つが子ども食堂です。

 子ども問題に総合的に取り組もうとした場合、民間ができることと行政ができることをつないでいこうとするキーパーソンが、民間と行政のどちらにも必要です。

 また、情報連携として民間と行政の情報共有も非常に大事になってきます。民間と行政が信頼をお互いに得ていきながら、目の前の一人の子どものために何をすべきか、またどのようなことが子どもを守る仕組みづくりにつながっていくのかをイメージし、対応していくことが重要です。

 子ども食堂は全国で増えていますが、開いてすぐに閉じてしまう場合もあります。子どもを支えるため取組を継続していくためには、金銭面だけでなく、ボランティアやスタッフの「目の前の子どものために何かできることがあれば」という最初の思いを継続させていく事などをしっかり捉え、取組を進めて行くことができるキーパーソンが必要な存在となってくるのです。


2.地域福祉の取組に関して
玉置好徳さん(梅花女子大学)

 親の介護だけでなく、80代の親と50代の無職の子の同居世帯の「8050問題(ひきこもりの長期化により子どもも親も高齢化し、支援につながらないまま孤立していく)」など、ダブルケアの課題を抱える家庭が地域には見受けられます。こういった問題の複合化は、必ずしも経済的困窮世帯だけではなく、一般世帯に広がっているという状況があります。

 世帯が抱える課題が複合化し、多方面の支援が必要だとの認識が高まる中、国では個人の尊厳が尊重され、多様性を認め合うことができる地域共生社会を住民主体でつくりだすことをめざす方向にあります。福祉単独で行う縦の取組ではなく、関わる行政部署や民間団体、分野も横断した横の連携の中で包括的な取組にしていくことがめざされています。

 福祉と人権は同じ方向をめざしているはずですが、協働した取り組みは少ないです。

 そのような中、福祉と人権をあわせた取組例として、同和地区の隣保館を拠点に行われた地域福祉活動で、個人を支援するに留まらず、課題を抱える地域全体を支援する地域福祉活動等があります。特に大阪では、人権と福祉が手を取り合い課題の解決を行っていこうと、同和対策における特別対策の法律が失効した平成14(2002)年から、府内の同和地区をモデル地区に、地域福祉計画づくりが行われた事例があります。

 本事業における事例でも、その取組が「支援」か「啓発」か、目的を限定せず包括的に展開されているものがあります。地域福祉を目的とした「地域共生社会」づくりと、人権啓発を目的とした「人権のコミュニティづくり」は、それぞれが別の取組としてではなく、そこにWin-Winの関係を築き、互いに共存・共栄で取り組んでいくことが重要です。


3.持続可能なまちづくり(防災含む)の取組に関して 
寺川政司さん(近畿大学建築学部)

 持続可能なまちづくりの取組では、課題への固定観念で思考停止してしまうのではなく、地域にある施設など地域資源含め様々なものを再価値化し、活用するということが一つのポイントとなります。

 このことを、空き家の問題から考えていくとよくわかります。まちづくりの分野における空き家は、「社会が持つ課題を解決する仕掛けやシステム」を再構築する動産、動的媒体でもあります。マイナスの視点で捉えるのではなく、逆にコミュニティの社会資源として引き寄せ、いかに使いこなすかという視点で捉えることが非常に重要となります。また、様々な社会資源としてマネジメントしていくことや、マネジメントする人の存在により、今まで個別では困難な社会課題が乗り越えられるという視点が非常に大事です。

 まずは1件で良いので事例をつくることが必要です。それまで価値がないと思われていた不動産が、例えば子ども食堂、寺子屋、コミュニティカフェ等になるなど、福祉や教育の分野で使われると価値が出てきます。事例がきっかけになり、ヒトがつながりモノがつながりコトがつながっていきます。このように多様な経験や立場を持った人が参画する中で、つくられた場は、様々な人の居場所になります。まちづくりの分野では、居場所づくりは非常に重要な取組でもあります。

 上記の取組を進めていくためには、縦割りである課題や機関など社会資源にどう横串をさすかが重要であり、その横串を仕組みにしていくことが大切です。防災など災害への取組、子どもの問題は違う立場の人でも共通課題として捉えてもらえやすく、非常に横串でさしやすいテーマだと思います。コミュニティづくりの中でも、こういった横串をさしやすいテーマをきっかけにして、取組を拡げていくこと視点が必要になってきます。



第2部分散会

 パネラーの報告別に3グループに分かれ、各パネラーがファシリテーターとなり、参加者それぞれの取組や課題を共有し、地域でいかに人権尊重のコミュニティづくりの活動を進めていくかについて考えていきました。

 最後に各グループが、グループ内で出た意見を報告し、全体で共有しました。


1.子ども

・子ども支援は、届けたい子どもに実は届きにくいことがある。

・「学習支援」というアプローチ方法ではまず来ないので、「遊んでくれるおにいちゃん、おねえちゃんがいる」や「そこに行ったらご飯を食べられる」等の工夫が必要。

・しんどい層は子どもだけではなく保護者もしんどい場合も多いので、保護者も一緒に来ることができる手法が必要。

・子ども食堂への参加が、就労支援や社会体験、社会教育につながる場合があり、「食」の持つ力は大事な要素。


2.地域福祉

・人権という一人ひとりを大切にする視点は、人権啓発や人権擁護や福祉の自立支援等、何であれ共通している。

・人権というものをベースにして、その上に福祉、教育、防災等が成り立っている。

・そういった様々な活動が、小さな単位で言えばコミュニティづくりとなり、大きな単位ではハードも含めたまちづくりにつながっていく。


3.持続可能なまちづくり(防災含む)

・行政内の横串と民間団体の横串をマネジメントしていく人や仕組みが必要。

・行政だけでは限界もあることから、民間団体や行政のそれぞれの局(部署)が持っている情報や事業をつなぎ合わせる必要がある。

・上記取組を行うにはマネジメントが必要であり、かつそれを業務として行うことが必要。

・後継者や担い手として、若い人の参加が少ないという意見が多かった。思いこみや固定観念が影響しており、そこから脱却するために、地域活動を中心的に担っている人と若者が、少しずつでも互いに歩み寄れる仕掛けや、リアルに出会える場をつくるなど、活動への参加のハードルを下げる取組が必要。