・・・・・H28(2016)年度 第11回・・・・・
障がい者や外国人と共に取り組む避難訓練・防災訓練
八尾市高美南小学校区まちづくり協議会
1.地域や団体の概要
(1)まちづくり協議会の設立
平成22(2010)年12月設立準備会、平成25(2013)年1月31日に設立総会を開催。
(2)まちづくり協議会におけるまちづくりの目標
1)誰もが「安心」して暮らせ、「住み続けたい」と思えるまち
2)誰もが「いきがい」をもって暮らせるまち
3)「子育て」「親育て」を見守り、支援できるまち
4)人権感覚豊かなまち
5)防災・減災を考えるまち
(3)構成団体
(4)校区(八尾市立高美南小学校)の様子
1)エリアは、八尾市の中央よりやや南に位置します。
2)校区の人口は、5,527人・2,768世帯で、市内29小学校区のうち25番目で、比較的人口の少ないエリア。市平均より高齢化率は高く(市26.9%、高美南30.8%)、14歳以下の人口率は市平均より低く(市平均12.91%、高美南10.3%)、少子高齢化が進んでいます。*平成27(2015)年9月30日現在。
3)ベトナム籍の人をはじめとする外国人市民が多く住む地域です。
4)校区内には、福祉や教育に関する様々な施設があります。
①福祉・医療関連 八尾市立障害者総合福祉センター、八尾市立安中老人福祉センター、安中人権コミュニティセンター、介護有料老人ホーム「さとやま」、安中診療所、地域包括支援センター
②教育関連 八尾市立高美南小学校、八尾市立安中青少年会館
?その他 消防署本部、清掃庁舎
2.取組~事業内容(平成27(2015)年度事業実績*今年度も同様の事業を実施中)
(1)全体の取組内容
1)誰もが「安心」して暮らせ、「住み続けたい」と思える まちづくり事業
①地域一斉清掃(年2回)、②あいさつ運動、声かけ運動(年10回)
③歳末夜回り運動(2日)や夜回り運動、④ふれあいまつり(10月)開催への協力。
⑤夏祭り(7月2日間)や八尾国際交流野遊祭(10月)開催への協力。
⑥ふれあい農園が児童と地域の人との交流の場となるよう充実させる取組、種イモの植え込み(2月)。
2)誰もが「いきがい」をもって暮らせるまちづくり事業
①高齢者に対する取組検討のため、校区内の高齢者を対象にしたアンケートを実施。
②ふれあいまつり(10月)で世代間交流を通じた生きがいづくりの取組。
③保健師を講師とした健康講座(年1回)。
3)「子育て」「親育て」を見守る事業
餅つき大会の実施(1月)。
4)人権感覚豊かなまちづくり事業
多文化共生の地域社会の実現に向けた取り組み等についての検討。
5)防災・減災を考えるまちづくり事業
高齢者・障がい者等の震災弱者・避難弱者及び外国人住民を中心とした避難訓練及び
防災訓練(8月・3月)。
(2)防災・減災に関連する取組
平成23(2011)年度 防災センターへの見学
一人暮らしの高齢者・高齢者のみの世帯の把握の大切さを感じます。
避難経路の確認、(緊急)避難場所への誘導など、どうすれば被害を最小限に食い止められるか等について協議会内で議論を行いました。
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平成24(2012)年度
①防災マップ作りの説明会及びワークショップ
各町会長(自治振興委員)、民生委員や青少年指導員の
方々、八尾市地域安全課、高美南小学校区の地域担当
者、コミュニティ推進スタッフ(地域のまちづくりの支
援を担う市職員)、コンサルの方々の参加を得て実施し
ました。
②八尾市立障害者総合福祉センターと合同で防災訓練を実施
地域の方、障がいのある当事者の方など多くの方の参加を得て実施しました。
平成25(2013)年度 「障がい者理解のための勉強会」実施
昨年度に実施した『障がい者のための防災訓練』において、地域住民から「実際に障がい者の方にどう接したら良いのかわからないので、車いすの押し方などを知りたい」という意見があったことを受け開催しました。
車いすの押し方や聴覚障がい・精神障がい・多動性障がい・自閉症といった見た目では、すぐに判断できない障がいのある方への避難誘導方法等も含めた勉強会の内容としました。
平成26(2014)年度 防災訓練を実施。
障害者総合福祉センター利用時に、震災が発生したという想定で、利用者を小学校(指定避難場所)まで避難誘導。また、避難所(小学校)での訓練を実施。
平成27(2015)年度 防災訓練を実施。
安中老人福祉センターを利用して実施。今回は障がいがある方、高齢の方、同じく災害弱者である外国籍住民、外国にルーツのある方にも呼びかけ、防災訓練を通じてコミュニケーションの取り方や交流を図りました。炊き出しでは地域のベトナムの方にフォーを作っていただき参加者に食べてもらいました。
(3)関係機関や関係性
構成団体(前掲)だけでなく、校区内の公共施設や福祉・医療に関わる民間団体、市役所の関係各課などとも連携して事業を実施。
(4)予算
八尾市校区まちづくり交付金*を活用
*「校区まちづくり交付金」(校区まちづくり交付金って? 八尾市ホームページより)
校区まちづくり交付金とは、八尾市市民参画と協働のまちづくり基本条例に基づき、補助率を設けない交付金として、校区まちづくり協議会が作成した「わがまち推進計画」をもとに自主的・主体的に取り組まれる地域活動に対する財政的支援を目的として平成25年度から始まり、市の施策及び関係法令に整合するものであれば活用できます。
対象団体 各校区まちづくり協議会、所管課 八尾市人権文化ふれあい部市民ふれあい課
3.きっかけ~事の起こりや着火点
(1)まちづくり協議会の事業の柱に防災への取組があった。
(2)防災センターの見学を契機に、高齢者・高齢者のみの世帯に対する災害時の誘導など、地域における防災の取組の必要性への機運があった。
(3)障害者総合福祉センターから、「自分たちだけで防災訓練を行うのは不安があり、一緒にやらないか」という声がかかった。
(4)障がい者問題だけでなく、高齢化、外国籍住民と地域で暮らしていく上での課題など取り組んでいくべき課題への認識があった。
(5)市の施策との連動があった。*多文化共生推進計画(平成26年度~32年度)
4.取組みの実現、深まりや発展などに影響した要素
(1)校区内の組織間の連携や協力し合える顔の見える関係づくり
安中人権コミュニティセンター、安中老人福祉センター、障害者総合福祉センター、安中地域協議会、小学校や各町会などといった、校区内における組織間連携や、顔の見える関係を作っていく積み重ねがありました。
例えば、多くの高齢者に参加してもらうため地域住宅に住む単身高齢者への声掛けや安中老人福祉センターに来館されている方に積極的な参加を呼びかけ、取組みへの参加勧奨への協力がありました。
(2)これまでの取組の積み重ねがあった
まちづくり協議会の活動の以前から校区福祉委員会活動などでの取組や、同校区にあるNPO法人トッカビが八尾市より受託し実施する外国人相談での対応などの実績がありました。
(3)団体のミッションが明確
まちづくりにおける目標の一つに「人権感覚豊かなまち」が掲げられています。
まちづくりの重要課題として校区にある人権課題を考えていかなければならない、という姿勢があるからこそ、高齢者や外国人の方が参加したらOKの防災訓練の実施ではなく、学習会やフォーの炊き出しを訓練に組み込むなど人権問題の理解につながるような企画が生まれています。
(4)活動に学習会も取り入れ、様々な人権問題の理解を深める
実際の訓練のみを行うのではなく、「障がい者理解のための勉強会」やベトナムの方も参加した平成27(2015)年度の訓練前にベトナム人の方を対象に地震や防災の学習会を開催するなども含めて実施されており、訓練だけでなく障がい者理解や、外国人理解を深める機会となっています。
(5)資金確保に八尾市の制度を活用
取組み実現に必要な活動資金として、八尾市から校区まちづくり交付金の助成金を受け、活動が行われています。
(6)八尾市の施策とのリンク(八尾市多文化共生推進計画(平成26年度~32年度))
多文化共生推進計画の取組みのモデル事業として実施しました。
事前に、地域に住むベトナムの方を対象に災害地震についての勉強会を実施し、地域の組織や取組を理解していただいただいた上で、訓練に参加していただきました。
(7)訓練実施後の参加者アンケートで出てきた課題(参加者の不安やニーズ)課題を補いながら取組んでいます。
(8)「防災をちょっと考えよう、関心を持とう」という趣旨で行い、かつ参加したら炊き出しがある、非常食を食べるなどの「おまけ」もつけて参加動機を高めました。
5.取組による変化
訓練が社会的マイノリティと接するハードルを下げるきっかけになりました。
(1)障がい者にどう接するのか戸惑いがあった住民が、実際に接したり、学習会に参加することで、その戸惑いが弱まってきました。
(2)訓練によりベトナムの方と出会ったり、炊き出しでフォーの試食をすることで、人や食文化を知るきっかけづくりができました。
また、ベトナムの方にとっても、訓練の場でそれぞれが住んでいる町会長を知ることで、地域で相談する顔が見える関係作りのきかっけとなりました。
6.課題など
(1)避難場所の整備
第二避難所となっている安中人権コミュニティセンターには、災害備蓄品が保管されておらず、保管する場所もないという課題が浮き彫りになっています。こういった課題を行政と調整しながら早期に解決していく必要があります。
過去の台風接近時に、住民の方が、指定避難場所である近隣小学校ではなく、安中人権コミュニティセンターへ避難されたという例があります。どの施設に誰が避難するのかできるだけ状況を把握し、地域の現状をきちんと見据えながら取組みを進めていく必要があります。
(2)子どもの協力が不可欠
災害を乗り超えるためには、子どもたちの協力が必要になってきます。小学校に対して防災訓練への協力の依頼をしているが、まだ実現できていません。多くの子どもたちが取組みに参加できるような仕組みづくりをしていく必要があります。
(3)外国人と共生していくために
言葉や文化、生活習慣の違いから地域における取組が理解できない外国籍住民の方との交流の継続や、その方達が参加できる仕組み作りをすることで、お互いの文化を尊重し共生していけるような地域にしていく必要があります。
*例として、ベトナムには町会という概念がないので、よくわからないから参加したくない、関わりたくないという気持ちがあります。様々な取組の中で、そういった地縁組織などの説明をし、理解をしていたいただく中で、町会などへの参加にもつなげていく必要があります。
(4)単身高齢者の不安を軽減
校区内は、八尾市平均よりも高齢化率が高く、かつ独居の方が多く、日常的な生活においては様々な不安や暮らしにくさを抱えています。防災も含め、様々な取組を実施していく中で、少しでもその不安を解消できるようにしていくことが必要です。
(2017年3月掲載)