わたしの地元である茨木市豊川地区には、知的障害者通所授産施設「あゆむ」があります。焼きたてのパンを販売する「スワンベーカリー」にはパンを食べられる喫茶コーナーが併設され、地域の人たちが訪れます。また、近くの企業や役所などへの配達もしています。メンバーは30人で、ベーカリー担当のパン工房班のほか、公園の清掃やアルミ缶収集、畑での野菜づくりをする園芸リサイクル班、2階の工房でクッキーやゼリーをつくるハンドメイド班に分かれて作業をしています。
パン工房班は、園芸リサイクル班とハンドメイド班とは賃金体系を分けています。というのも、「スワンベーカリー」は利益をあげることを目的とした「普通のパン屋さん」という位置付けだからです。メンバーたちは、路線バスに乗って通勤しています。なかには始発バスで到着し仕事に入る人もいます。
「あゆむ」は地域の運動から生まれました。1991年、知的障害をもつ輝(あきら)くんが、中学3年生の時に「ぼくは高校を我慢するねん」とクラスで発言したのがきっかけで、「地元高校に養護学級を」という取り組みが地域をあげて行われました。結果的には実現できなかったのですが、交流生として高校生活に参加しました。また、「地域に居場所を」と、地域の人に頼み込んで土地を借り、10坪ほどのプレハブ作業所を建てました。こうして無認可作業所「あゆむ」の活動がスタートしたのです。