(2)大阪で起っている差別の現実 ~実際の差別事象から~
同和地区に関する問い合わせ
【事例 その1「同和地区かどうかを知りたい」】
◇事例の概要
- ご紹介する事例は、2009年に八尾市で起こった差別事象で、引っ越そうとする地域が同和地区かどうかで、購入時や購入後にマンションの価値に影響しないように、市役所へ問い合わせた事例です。
■発生日時:2009(平成21)年8月31日(月)午後1時40分
■場 所:八尾市役所 人権文化ふれあい部 市民課・人権政策課
女性:そちらに今度引越ししますが、答えにくいことでお答え頂けないかもしれませんが、部落地域はどこにありますか?町名だけでも教えてもらえませんか?
職員:お答えしていません。ちょっとお待ちください。(市民課から人権政策課に電話をつなぐ)
職員:お電話代わりました。人権政策課です。先ほど市民課にお電話頂いていたんですよね? 何故、同和地区の所在地をお知りになりたいのですか?
女性:なんでそんなん聞くの?教えてもらえるのか?
職員:差別につながるのでお答えできません。どこかで何か、お聞きになられたのですか?
女性:マンションの購入を考えてて、金額も変わってきますし、どこの市でもあるって聞いたので、待ってたんですけど、教えてもらえないならいいです。
◇事例の差別性
- この事例では、購入しようとするマンションについて、問い合わせた女性が「金額が変わってきますし」と発言していることから、この女性は"同和地区は土地の値段が安い=マンションの資産価値が下がる"と考えていると思われます。
これは、社会にある同和地区への忌避意識や偏見が、この女性にも影響を及ぼして"社会から差別されている同和地区は土地の値段が安い"と、女性の中に基準を作ってしまっています。 - また、最初に「答えにくいことでお答え頂けないかもしれませんが、」と断りを入れています。「答えにくいこと」とは、「同和地区の地名を答える=間違いである=差別につながる」ことを知っているからこその発言です。
- これらのことから、この女性には、同和地区に対する「排除」の姿勢がある、と言えます。それは、①堂々と市役所にまで問い合わせていること、②問い合わせることが間違いであることを知っているからこそ、指摘を受けそうになると一方的に電話を切って、市役所の啓発に応じようとしないことから、そのことがわかります。
- この様な同和地区を問い合わせる背景には、購入するマンションの所在地が同和地区であると、社会(世間)から「部落出身者と見なされてしまう」と感じてしまい、同和地区を避けようとする意識が生まれていると言えます。
◇事例の対応
- 最初に対応した市民課職員が問い合せには答えられないことを伝え、「問い合わせることの背景に差別意識があること」や「差別される立場になりたくない気持ちに気づき、この問題を市民一人ひとりが考え、間違っていることを認識し、差別をなくすために部落問題を理解するために一緒に取り組みましょう」という、「啓発」につなげる必要があることから、市民課より人権政策課へ対応を引き継ぎました。
- 人権政策課にて発言者に対し、問い合せが差別につながることを説明しました。そして、問い合わせの理由を確認した後、「啓発」につなげようとしたところ、一方的に電話を切られました。
- 市庁内会議において差別事象の報告を行い、各部局との情報共有をはかっています。
- また、同和地区の問い合わせ事象に対する「初期対応マニュアル」を、各部署(所属?)で活用してもらうように努めています。
◇その他の問い合わせ
- その他にも、同じような問い合わせ事象が、堺市、茨木市、松原市、忠岡町において発生しています。