主な人権侵害事象(差別事象を含む)状況

(2)大阪で起こっている差別の現実 ~実際の差別事象から~

同和問題に関するインターネット上における差別書き込み

ポイント

  • インターネット上では、無責任に同和地区の地名を書き込む悪質な行為が後を絶ちません。また、同和地区のリストをネット上に公開する悪質な行為も発覚しています。
  • 同和地区出身を理由に、結婚や就職の際に差別する意識は残念ながら今も完全にはなくなっていません。そうした社会環境の中で同和地区の地名を公開することは、そこに住む人たちの生活を脅かす悪質な人権侵害です。
  • インターネットを利用して不特定多数の人々に対して差別的な書き込みをすることは、差別を助長・拡大することにつながり、極めて悪質な差別行為であると言えます。
  • 差別書き込みや差別を助長する書き込みが増加している一方、残念ながら今の日本においては、こうした悪質な行為を直接的に取り締まる法律はありません。
  • 部落差別を助長するインターネット上での差別書き込み等をなくすため、同和地区に対するマイナスイメージなどを要因として、府民の忌避意識が生まれていることから、その解消に向けた府民の人権意識の高揚を図るとともに、人権問題についての正しい理解と認識を深めていくことが重要です。
  • また、インターネット上における差別書き込みの実態や問題点を明らかにしていくため、こうした同和地区の地名情報の記載などを発見された場合は、大阪府、各市町村などの人権担当窓口へ通報してください。

◇事例の概要

【注意事項】

下記の問題書き込み内容の括弧内の記述は、実際の地名、個人名等が書かれていましたが、ホームページ作成にあたって事務局が記号化したものです。

1.インターネット上での差別書き込み事例1

市職員が動画投稿サイト上に市内○○町の映像が流れており、その書き込みの中に下記の差別書き込みを発見した事例です。

〔問題の書き込み内容〕

「◆◆〔地名〕は、名実ともにコワイところ門番のエタ〈*1〉に私はじっと見られあわてて逃げました。」

〈*1〉「エタ」は、穢れ(ケガレ)意識に基づくものであり、社会的背景により偏見や忌避意識の現れとして同和地区出身者(被差別部落の人々)のことをさす差別用語です。同和地区(被差別部落)は、中世の社会的差別によって形づくられ、江戸時代には法的、制度的に「穢多(えた)」身分などとして固定され、今日の一般的な同和地区につながり、同和地区出身者を「エタ」と称していると考えられています。 (一部、NPO法人ニューメディア人権機構「ふらっと~人権情報ネットワーク~」より引用、当協会が編集)


2.インターネット上での差別書き込み事例2

市民より電話で、「インターネット上の掲示板に同和地区を誹謗中傷する書き込みがある」との連絡があり、電子掲示板の中に下記の差別書き込みを発見した事例です。

〔問題の書き込み内容〕

ア)○○町〔町名〕ってB〈*2〉でしょう?」

イ)○○町〔町名〕って・・・。
〔市町村名〕市民なら誰だって知っている超B〈*2〉地区。
差別されるべき人間しか住んでいないような所。
道の真ん中を塞ぐように駐車してる奴が当たり前のようにいて、それに因縁つける奴もいて結果殴りあいに発展する」

ウ)□□部落〔地名〕ですね。皆さん知っているので隠す必要はありません。」

エ)〔市町村名〕の巨大○落〈*3〉ですね」

オ)■■■■〔人名〕が□□(今の○○町)〔町名〕の出らしいが、やっぱB〈*2〉?」

〈*2〉「B」は、書き込んだ人が「部落(ぶらく)」の「部」をローマ字に変え、暗号のように「B」として表していると思われます。また「B地区」は、同和地区(被差別部落)のことを表していると思われます。 これは、「部落」や「同和地区」と書き込むと、書き込んだ内容が差別であると言われないようにして、書き込んだ人自身の責任を回避するために使用されていると考えられ、「B」や「B地区」と暗号にしていると思われます。

〈*3〉「巨大落」の「落」は、書き込んだ人が「部落」の「部」の部分を「」にして「落」と表記し、同和地区を表しています。これも、書き込んだ人自身の責任を回避するために使用されていると考えられます。


◇事例の対応

〔事例1〕
  • 大阪法務局支局に本事案を報告するとともに、サイト管理者に削除依頼し、削除されました。
〔事例2〕
  • サイト管理者に対して、何度か削除依頼を実施。後日、管理者から「一部削除した」旨の回答がありました。削除されなかった「書き込み」については、法務局を通じて最終的に削除してもらえるよう現在も粘り強く対応しています。

◇事例の差別性

〔事例1〕
  • 具体的な地名をあげ、その地名は「コワイところ」とつなげており、電子掲示板の利用者に対して「同和地区=怖い」という意識を植え付けており、部落差別を助長しています。
  • 「門番のエタに私はじっと見られあわてて逃げました」と書き込まれています。ここでは、たまたまその場にいた人を門番と見なして、差別用語である「エタ」と結び付けて、マイナスイメージを強めようとしていると思われます。そして最後の「あわてて逃げました」は、「名実ともにコワイところ」と掛け合わせており、さらに差別を助長しています。
  • これらの書き込みは、書き込まれた地域や住民に対して怖いというマイナスの印象を与えるとともに、忌避意識〈*4〉や偏見、差別意識を広げる要因にもなります。

〈*4〉同和地区を「避けよう」、「遠ざかろう」、「関わらないでおこう」とする意識。部落や部落の人を避けるという行動の背景には、この忌避意識があり、その根底には同和地区への偏見や差別意識、差別的な感情があるといえます。


〔事例2〕
  • 書き込みアの「B」は同和地区を指しています〈*2〉。
  • 前後の脈絡もなく唐突に町名だけを取り上げて、その町が同和地区であることを伝えていることから、部落差別となります。また、不特定多数の人に地域を特定して同和地区であるという情報を広げ、偏見をあおろうとしていると捉えることもできます。これは、極めて悪質であると言えます。
  • 書き込みイは、「○○町って・・・。市民なら誰だって知っている超B地区。差別されるべき人間しか住んでいないような所。」と書き込まれています。この「超B地区」とは「超部落地区」のことであり、この地区は「差別されるべき人間しか住んでいない」と明記されていることから、明らかに部落差別を助長しています。
  • さらにインターネット上の地図でその地域がどこにあるのかを誘導しており、不特定多数の人に同和地区の場所を地図で教えていることになります。これにより、掲示板の書き込みを見た人が、その町名がどこにあるのかがわかり、部落差別を助長させる行為となります。
  • また、「道の真ん中を塞ぐように駐車してる奴が当たり前のようにいて」というように、同和地区は車を道路の中央に駐車している人が当たり前で不法地帯である、というような偏見を広げる書き込みがされており、差別を助長しています。「因縁つける奴」「殴りあいに発展する」と書き込むことによって、同和地区の人は暴力的である、という誤った情報を流し、偏見や差別を助長する行為と言えます。
  • 書き込みウは、「□□部落ですね。皆さん知っているので隠す必要はありません。」と書き込まれています。この書き込みは、「□□部落」と地名を書き込んでおり、どこが同和地区かがわかるようにしており、極めて悪質で部落差別であると言えます。
  • 書き込みエは、「〔市町村名〕の巨大落ですね」と書き込まれています。この書き込みは、ウの書き込みを強調していると思われます。「〔市町村名〕の」という具体的な市町村名をあげてつなげ、どの地域かを特定させており、部落差別と言えます。
  • 書き込みオは、「■■■■□□(今の○○町)の出らしいが、やっぱB?」と書き込まれています。「■■■■が」の部分は人名を具体的に書き込まれていました。「■■■■」の人物が「□□(今の○○町)の出らしいが、」とつなげて、同和地区出身者であることを強調、さらに「やっぱB?」とつなげて、同和地区出身者であるかどうかの確認をしています。つまり、特定の人物を同和地区出身者かどうかを調べようとしている、と言えます。

◇今後の課題

  • 書き込みの原因となった出来事と同和問題とは何ら関係がないにもかかわらず、そのことを契機に同和地区やその住民に対し、誹謗中傷をおこなうというところに、人々の間にまだまだ差別意識が根強く残っていることを示しています。
  • 今回の事象を踏まえ、市民一人ひとりが同和問題や人権に対する正しい認識を身につけ、差別をなくし、人権が尊重される社会を築くため、今後も粘り強い啓発活動を続けていかなければなりません。
  • インターネットでの書込みを不特定多数に発信することで、差別を拡散しているのが現状である。
  • 発覚した差別書込みは、一つひとつ削除していき、社会に対して部落差別がまだまだ存在していることや差別をなくす必要性があるとの声を常態化していく必要があります。
  • そのためには、多くの府民・市民からの通報が必要であるとともに、一層の情報収集が求められています。

◇相談窓口などの関連情報

○インターネットに関連した相談機関窓口

〔1〕違法・有害情報相談センター(社団法人テレコムサービス協会内)http://www.ihaho.jp/
 (概要)インターネット環境における違法・有害情報および、安心・安全に関わる相談等
   電話相談:03-5644-4800、メール相談:24時間受付


〔2〕人権相談受付窓口(法務省) http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken20.html
(概要)全国の法務局・地方法務局及びその支局で開設している電話やメールによる相談
 ・電話相談(全国共通人権相談ダイヤル)0570-003-110   
           (大 阪 法 務 局)   06-6942-9496
 ・メール相談(法務省インターネット人権相談窓口)http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken113.html


〔3〕サイバー犯罪対策(警察庁)
①警察庁「サイバー犯罪対策」 http://www.npa.go.jp/cyber/
 (概要)サイバー犯罪の取締り、サイバー犯罪の予防対策に関する広報活動等
②警察庁「インターネット安全・安心相談」http://www.npa.go.jp/cybersafety/
 (概要)インターネット上での困りごとについて、基本的な対応策等 
③インターネット・ホットラインセンター http://www.internethotline.jp/
 (概要)インターネット上の違法・有害情報の通報受付窓口 
④大阪府警「インターネットトラブル相談と対処方法」http://www.police.pref.osaka.jp/05bouhan/high_tech/taisho01.html

 (概要)サイバー犯罪に関する情報や相談 


〔4〕その他の相談機関
 ・最寄りの市町村の人権相談窓口  http://www.pref.osaka.jp/jinken/talk/index.html#01
 ・大阪府府民文化部人権室  http://www.pref.osaka.jp/jinken/shokai.html
 ・(財)大阪府人権協会などの人権相談機関  http://www.pref.osaka.jp/jinken/link/index.html


○インターネット上の差別書き込みの削除について

 ・プロバイダ事業者に対する削除要請 http://www.isplaw.jp/
 ・プロバイダ事業者に対する発信者情報の開示請求 http://www.isplaw.jp/


○大阪府「インターネット上の差別書き込みに関する情報提供」

 大阪府ではインターネット掲示板上等のにおける差別書込みが増加している状況を踏まえ、
 「インターネット上において実際にどのような差別書込みがなされているのか」、情報収集、分析を進めています。
 府民の皆様からも、人格を傷つけるなどの悪質な差別書込みを発見した場合には、下記メールまで情報提供いただきますようお願いします。 
  メール情報提供先(大阪府)http://www.pref.osaka.jp/jinken/talk/it-sabetu.html


○大阪府部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例の一部改正 

対象となる土地やその周辺の地域に同和地区があるかないかを調べたり、報告することは、その内容の真偽か事実の有無に関わらず、差別助長行為であることは明らかです。
大阪府では、土地調査等を行う者によるこのような行為を制限するため、大阪府部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例の一部を改正し、2011(平成23)年10月1日から施行しています。
http://www.pref.osaka.jp/jinken/measure/kojin10.html