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具体的な人権相談事例

(5) 子どもに関する人権相談

~浪費癖のある保護者家庭での生活困窮問題と子どもの就学保障問題~

<相談のあらすじと対応のポイント>

  • キーワード:
    浪費癖の保護者家庭への生活支援、子どもの就学保障支援と虐待防止
  • 相談者:夫(父親)、長女、夫の母の3人からの相談
  • 家庭状況:夫(41歳)、夫の両親、妻(44歳)、娘(小学6年生12才)
  • 相談の主訴:妻の浪費のため生活困窮状態となっている。
家庭状況の図

●相談の経過

 市広報に載せられていた人権相談窓口情報を見て、夫、娘、夫の母の3人で市人権協会へ相談を受けに来所。


●相談内容および生活歴

  • 結婚当初から妻の浪費癖があり、以前は夫の収入が40万円ほどあったにも関わらず、生活ができないような状況であった。夫は現在、以前の職を退職し、収入は30万円となっている。
  • 妻の影響で固定資産税、ガス代、水道代、電気代、電話代、住宅ローンなどを滞納するようになっている。前職を退職した際に退職金もあったが、妻が何に使ったのか1か月ほどで使いきってしまい、貯蓄もなく、お金の管理ができない状況であった。
  • その後、お金の管理をめぐり、たびたび夫と妻との間で揉めるようになり、妻は娘を連れて実家へ帰ってしまい、現在は、弁護士から離婚同意書も届いている状況である。養育費についても請求されているが、夫としては退職金で浪費したお金を返してもらってから、払いたいという意思であった。
  • また、実家へ行ってから妻が子どもを小学校に通わせていないことがわかり、夫は娘を引き取りたいという意思がある。

●対応

  • 初期対応
     緊急的な対応として、娘の就学状況及び生活状況の把握を行うため、市の教育委員会と子ども支援課に連絡をとり対応を進めていくこととした。すぐに、就学保障と生活状況の把握として、まず小学校の担任教員が家庭訪問をし、勉強を教えることから始め、就学復帰への準備を図り、生活状況の把握に対し要保護対策地域協議会を通じて行うこととした。
  • 弁護士相談への誘導
     夫に離婚対応について弁護士相談を行うよう調整し、養育費支払いの義務、財産分与や養育費支払いの際に妻の浪費分を差し引いて行うこと、義務教育を確保できない環境であるならば引き取ることを伝えること、話し合いでめどがつかない場合は速やかに離婚調停を行うことなどのアドバイスを受けた。

●評価および今後課題

  • 妻の浪費癖という問題の中で、子どもの就学保障、生活の安定保障といったことを考え、相談機関が速やかに、専門機関と連携した事例である。就学保障や生活の安定ということは虐待状況にもつながるものとして、すぐに対応する必要がある。教育委員会や市の子ども支援課を通じて要保護児童対策地域協議会も動いており、人権相談窓口がネットワークの一つとして機能していることが伺える。また、弁護士を通じて離婚時の専門的な相談機能がある関係機関に伝えており、外部資源を積極的に活用している。
  • 今後の課題としては、子どもの就学および生活の安定のために要保護児童対策地域協議会を通じた継続的な状況把握が重要である。また、母親の浪費癖について、離婚時の財産分与にもかかわってくるため、詳細な状況の把握が重要である。浪費癖ということについては精神的な疾患となっている場合もあるため、母親の状況においては医療機関の紹介なども行うべきである。
  • また、離婚ということになれば母子家庭となるため、母子家庭のための様々な福祉サービスの必要性についても検討しなければならない。児童扶養手当をはじめとして母子家庭へのヘルパー派遣、就業への支援など福祉事務所等との連携も必要になってくる。

●連携が想定される資源

  • 教育委員会
  • 要保護児童対策地域協議会
  • 子ども家庭センター(児童相談所)
  •  
  • 小学校、スクールソーシャルワーカー
  • 福祉事務所
  • 社会福祉協議会
  • 精神科等の医療機関
  • 弁護士

●利用が想定されるサービス

  • 児童扶養手当
  • 母子家庭等日常生活支援事業
  • 母子福祉資金貸付金
  • 生活福祉資金貸付制度
  • 母子家庭への就労支援サービス