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具体的な人権相談事例

セクハラ被害の相談を入口とした障がい特性のある女性職員からの相談

<相談のあらすじと対応のポイント>

  • キーワード:強迫性障害、自律神経失調症、自分の障がい特性を家族から理解されない職場でのセクハラ、医療費等の支出による生活困窮
  • 相談者:女性 30歳
  • 家庭状況:母親75歳、父親78歳、兄32歳と同居
  • 職場内でのセクシュアル・ハラスメントに対する会社の対応について改善してほしい

   家庭状況の図


●相談の経過

  • 人権文化センターの相談員が、過去に地域就労支援事業を担当していた時から継続的に相談を受けている相談者から、相談を受ける。

●相談内容等

  • (1)相談内容
    • 2年前(当時28歳)に、今働いている職場でのセクシュアル・ハラスメントを受けていたとの訴え。
       内容は、相談者が常勤社員として働いている職場で、職場の同僚である男性社員A(加害者)から背中を手で摘まれ、声も出せなかった。その日に女性社員Bに事実報告をし、セクシュアル・ハラスメントの事実についての相談をした。その際、上層部にも伝えてもらうようにお願いをしたが、その後どうなったかについて聞いても、会社としての対応がなく、加害者に伝えただけであった。
    • このことをきっかけに、相談者は精神科を受診し、会社を欠勤したり、会社へ遅刻することも多くなった。また、強迫性障害や自律神経失調症の症状も抱えるようになり、仕事も効率が落ち、会社にも居づらくなった。
    • また、医療費がかさみ支出が増えたため、生活も苦しくなってきた。
    • 現在は、自分のことが職場の人間にわかってもらえない状況に苦しんでおり、仕事内容で上司から言われたことが頭に入らず、仕事ができない人という見方をされているように思い、悔しい気持ちである。他の女性社員も信用できないため相談相手もいない。 
    • セクシュアル・ハラスメントの問題はこのままでは済ませたくない気持ちと、この問題を会社の上層部に伝え、加害者からの謝罪を求めたい気持ちがある。
  • (2)相談者の状況
    • 大学生のとき(19歳~22歳の間)に、大学内のカウンセリングを受け、強迫神経症や自律神経失調症が疑われたことがあり、今の仕事に就く前に相談員(当時は地域就労支援コーディネーター)に相談したところ、その相談員から医療機関を受診するようアドバイスを受けたが、本人に障がいや病気といった診断について抵抗があったことから、今日まで病院には行かなかった。
    • 相談者は、人とのコミュニケーションは、苦手であり、こだわりが強く他(た)責(せき)傾向がある。プライドが高く、自分を受け入れることができずに苦しんでいる。薬のせいで2つや3つのことを一度に言われると、対応できなくなっている。
    • 相談者は家族にも相談をしているが、仕事を早く辞めて、結婚するように言われている。家族は、現在、精神科に通っていることは把握しておらず、伝えても受け入れてくれないだろうとのこと。両親は自分の話を聞かず、いつも一方的に決めつけて話をしてくる、と相談者は感じている。

●対応

  • セクシュアル・ハラスメントの相談を最初に受けた際、セクシュアル・ハラスメントの問題に対して、人権文化センターが間に入ることも伝えたが、本人から、もう一度、女性社員Bに事実の伝達を行い、上層部へ対応を求めるとのことであった。
  • 2度目の相談の際、上層部にセクシュアル・ハラスメントの事実が伝わっていなかったこと、その後上層部に伝えたものの納得のいく対応がなされていないこと、の訴えがあった。
  • また、医療費がかさんでおり経済的にひっ迫していること、仕事が効率的にできていないことの訴えがあったことから、相談員から障害者手帳についての説明を行うと、医師に相談してみるとのことであった。
  • 今後について、人権文化センターの相談員から会社や家族に対して何らかのアプローチを希望するかどうかを確認したところ、まだいらないとのことであった。
  • 後日、相談者から、精神保健福祉手帳3級を取得したこと、「自立支援医療費」を利用すること、会社へは今後、障がい者雇用という形で継続して働きにいくこと、勤務について障がい者であることの配慮を求めていくことの連絡があった。
  • 今回のセクシュアル・ハラスメントの問題に対する人権文化センターとしての具体的対応の方向を検討するため、大阪府総合労働事務所や「女性に対する暴力電話相談」(大阪弁護士会)などから情報収集をおこない、相談者が希望すれば相談者をつなぐなどとの今後の連携内容について確認し、対応を判断していった。

●評価および今後課題

  • セクシュアル・ハラスメントの相談対応として、人権相談窓口が対応した例である。
     この事例では、常に相談員は相談者と関係性の構築に努め、相談者の希望や自己決定に応じて、対応するという姿勢で臨んでいる。また、具体的な支援として、障害者手帳の取得を提示し、取得に至っている。
  • 相談者は手帳の所持に消極的であることが伺えるが、相談の中で真摯に相談者と向き合い、相談者が自分の障がいを受容し、情報提供をすることで手帳の取得に至っていることが想像される。
  • また、この事例では具体的なセクシュアル・ハラスメントへの介入を提示するとともに、他機関との連携の中で人権文化センターとしての対応の可否についても判断を行っている。

●連携が想定される資源

  • 大阪府総合労働事務所、同事務所南大阪センター(職場のハラスメント等の相談)
  • 「女性に対する暴力電話相談」(大阪府弁護士会。セクシュアルハラスメント等の相談)
  • 大阪労働局 雇用均等室(職場のセクハラ等の相談)
  • 相談者が受診している医療機関(強迫性障害、自律神経失調症)
  • 福祉事務所または市障がい福祉担当課(相談支援事業、精神障がい者相談員等)
  • 障がい者相談支援事業所(計画相談支援)
  • 市保健センター、市精神保健福祉担当課(自立支援医療費、相談支援等)

●利用が想定されるサービス

  • 障がい者計画相談
  • 大阪障害者職業センター(職場定着相談、ジョブコーチ支援等)
  • 地域就労支援事業(就職困難者の就労支援)
  • 大阪府障がい者自立相談支援センター(障がい者相談支援アドバイザーの派遣等)