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具体的な人権相談事例

(2) 女性に関する人権相談

職場におけるセクシュアル・ハラスメントの事例

相談者の主訴

 上司からセクシュアル・ハラスメントを受け、精神疾患に罹った。

相談の経過

 所属部署の飲み会の帰りに上司から送ると言われ、タクシーの中でキスされた。
 その後、勤務時間中に会議室に呼ばれ、「好きだから気になる」と言われたり、食事に誘われたり、ときには、体を触られたり、キスされたりした。
 その都度、「セクハラはいや」、「困ります」と拒否の意思を伝えていたものの、強く断れば上司が何らかの不利益な扱いをするのではないかとの心配から何度か食事の誘いに応じた。
 その後、食事の誘いを断った日に、同僚と食事をしているところを上司に見られ、「嘘をつくな」と怒鳴られた。それまでの上司からの言動による苦痛にあわせ、怒鳴られたショックが加わり精神疾患に罹った。このままでは働き続けることができなくなるのではないかと心配になり相談に至った。

対応

 上司の言動は、職場での地位を利用した私的かつ性的な興味・関心に基づく職場のセクシュアル・ハラスメントであり、相談者の人格を傷つける不法行為である。
 また、上司からの一連の言動が精神疾患につながり、勤務に具体的な支障が出ており、事業所としても早急に適切な対応を行うことが必要である。
 取り急ぎ、病気の治療を優先しながら、事業所の相談窓口(なければ人事担当責任者)に概況を説明し、男女雇用機会均等法に基づく対応を求めること、また、自身での対応が難しいのであれば、家族や信頼できる同僚などに対応を依頼してもよいのではないかと助言した。

課題・問題点

 職場のセクシュアル・ハラスメントとは、「業務に関連する場面で相手方の意に反した性的な性質の言動を行い、仕事を遂行する上で一定の不利益を与えたり、またはそれを繰り返すことによって就業環境を著しく悪化させる人権問題であるとともに労働問題」である。
 男女雇用機会均等法第11条では、「事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう...(略)...雇用管理上必要な措置を講じなければならない」として、事業主に対し、セクシュアル・ハラスメント防止のための措置義務を定めている。
 事業主は、職場のセクシュアル・ハラスメントに関する相談・苦情を受けたときは、事実関係を迅速かつ正確に確認するとともに、事案に応じ、配置転換、行為者への懲戒、被害者の労働条件の回復等、適正に対処しなければならない。また、再発防止の取り組みも義務付けられている。
 厚生労働省は、「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」の中で、事業主に対して、職場におけるセクシュアル・ハラスメントを防止するため、事業主の方針の明確化及びその周知・啓発、相談・苦情に応じ適切に対応するために必要な体制の整備、セクシュアル・ハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応などの措置を講じなければならないと定めている。