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具体的な人権相談事例

うつ病を抱える妻への夫からの精神的・経済的暴力(DV)

<相談のあらすじと対応のポイント>

  • キーワード:DV、うつ状態
  • 相談者:妻からの相談
  • 家庭状況:妻(本人)20代半ば、息子5歳、夫30代後半
  • 相談の主訴:うつ病を抱えている状況であるが、夫の浪費癖から生活費がなく、言葉としての暴力を日常的に行われている

          家庭状況の図

 

●相談の経過

  • 市の女性相談室に本人が来談し、女性総合相談カウンセラーが対応。行政手続きが必要な事案であることから、カウンセラーから人権部局につながった。

 

●相談内容および生活歴

  • (1)背景・経緯
    • 家庭状況
      • 本人は妻20代。他市で夫の両親と息子の5人で同居していたが、義母との関係が苦しく、新居を購入し夫婦で転入し、現在は持ち家での夫妻と息子の3人暮らし。
      • 夫は30代で、再婚で本人と結婚。本人は、初婚で結婚してから3年以上経過している。
      • 出会った頃の夫の職業はパソコン関係の仕事であったが、その後、職をいくつか変えている。相談時の勤務先はわからない状態であった。
      • 性格は、周りの人が持つもの(車や家)を欲しがる、インターネットオークションで買ったものが毎日届く、収入に見合わない買い物をするなど、子どもっぽい。
      • 以前、夫は前妻の玄関に生ごみを運び、灯油をかけるなど嫌がらせをしたと聞いたことがある。しかし外受けはおとなしく真面目
      • 夫は、おそらく別の女性と同居しており、飲みに行くといっては3日開けて帰るという日が続き、ここ半年は夫が出て行ったまま帰らず。
      • うつ状態が強く、薬を飲んでおり、働くことができない。現在はお金がないため、薬もあまり飲めていない
      • 病院での受診は、相談中お金がなく受診できていない。うつ状態がどの程度であるか診断できなかった。以前受診したときは医師からは極度のストレスによるうつ病と言われている。
      • うつ状態が強くなると、相談ができない、あるいは自分の進むべき方向性を決断できない。
      • 結婚以前は、飲食店に務めていたことがあり明るい・活発な人物であったと思われる。
      • いずれ離婚をと考えているが、住居設定するにも、自宅が持家で生活保護の申請ができないうえ、一時保護も集団生活が困難なため決断できない。
      • 家を借りて子どもと2人暮らしを希望している。*「夫からのDV状況」から移動
      • 本人の父は他市で暮らしている。
    • 生活状況
      • 夫の給料は家や車のローンを払えばほとんど残らない。相談があったときには千円のみ所持で生活できない状態。
      • 食事は、親戚に送ってもらった白米にふりかけをかけて食事をしている。
    • 夫からのDV状況
      • 夫から「家を出て行け」、「借金だけ残したるわ」と言われたことがある。
      • 腕を強く握りしめられアザもできた。
      • 夫からは、「お前は働いていないのでおかずは食べなくてよい」「生活保護もらったろか」「たたきだしたる。その辺でのたれ死んどけや」とも言われたことがある。
      • 夫は生活費を渡さないという経済的暴力のみでなく、深夜に突然、自宅に戻り大声ですごむので恐ろしい。インターホンに答えないと30回以上ピンポンを押すなど執拗である。
      • 家にゴルフクラブがあり、「人叩いたら大変や」と言ってくることもある。夫が怖い。
      • 実家の父も生活保護を受けていて頼ることができない。

 

●対応

  • 夫名義の自宅に住んでいることで生活保護をうけることが難しく、父と同居することや一時保護利用をすすめたが、病気のこともあり、なかなか決断することができなかった。継続相談となり、3回目の面談の際に、久しぶりに帰ってきた夫から家を出て行けと言われたことにより、一時保護をしてもらうことを決断する。
  • そこで、子ども家庭センター、女性相談センターと連携し、一時保護を実施。その後、他市への引っ越しを行う際、転入先での生活保護費支給まで社会貢献制度での費用確保を検討したが、困難であった。
  • 当初は、一時保護の申請には否定的であったが、根気強く説明を行うことにより納得された。夫からの行方不明者不受理届や離婚届の不受理届を提出した。他市において、相談者の生活の自立とともに離婚の手続きなどの課題があるため、継続的支援が実施されるようにケースの移管を行った。

 

●評価および今後課題

  • DVによる一時保護の事例であるが、被害者はそれぞれ一時保護後の生活について大きな不安を抱えている。相談援助者は、様々な制度利用の中で新たな生活構築へ支援をしていく必要があるが、そのことを本人が理解できるようきちんと説明していくことが求められる。
  • また一方で、利用できる制度の選択肢は複数存在することがあるが、それが実際に利用できるか不透明な場合も多い。この事例においても、一時保護後に他市へ転居し生活を築いていく過程には、いくつかの方法が考えられる。社会貢献制度や生活保護、生活福祉資金貸付制度を利用した生活費用の確保、母子生活支援施設やDV被害者への公営住宅の利用など様々な方法がある。
  • 相談援助者は、そのような制度を理解し、実際にどうマッチングさせていくのか優先順位つけて、支援へと展開する必要がある。



●連携が想定される資源

  • 子ども家庭センター(DV担当)
  • 市生活保護担当部局
  • 社会貢献制度
  • 地域のコミュニティソーシャルワーカー(CSW)
  • 大阪府女性相談センター
  • 警察署生活安全課
  • 転入先自治体のDV担当

 

●利用が想定されるサービス

  • 一時保護
  • 行方不明者不受理届
  • 生活保護
  • 離婚手続き(具体的には進まず)
  • 自立支援医療