★2019年度人権NPO協働助成金★
活動紹介②
<プレ>持ち寄りワークショップ"教材"ってなに?
団体名 /大阪市内識字・日本語教室連絡会
今回は、本事業で実施する学習会のプレとしてワークショップを中心にした学習会を開催しました。
周知の通り、ここでいう識字学級・識字活動・識字運動とは、被差別部落において1970年ごろから積み上げられてきた教育活動で、文字の獲得を出発点にしながら、人生全体を切り拓くために繰り広げられてきた実践を指します。
学習のながれと事務局からの提案については以下のとおりです。
<学習会のながれ>
1.この20年間の大阪市における識字学級をめぐる変化について出し合おう
2.ユネスコが提唱する3つのスキルについて
3.ワークショップ"わたしの手"
4.ワークショップ"わたしたちの教室にある「活動としての教材」"
<事務局からの提案>
5.今年度の取り組みについて
6.全体会(大阪市内識字学級の交流会)での取り組みについて
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●取り組みのまとめ●
1.この20年間の識字をめぐる変化について
この20年間の識字学級をめぐる変化についてそれぞれが感じていることを出し合いました。最近、識字学級に参加した人は、その時点から感じている変化などを出してもらいました。出てきた項目・内容は以下のとおりです。
①学習者の変化
・外国人が増えた ・地域の人が減った ・高齢化 ・子どもたちの参加
②学習パートナーの変化
・学校教員が減った→市民ボランティアが増えた ・部落解放運動を知らない人が増えた
③学習場所の変化
・活動場所が地区内施設から小学校の多目的室へ変更
④地域の変化
・施設がなくなった ・戸建て住宅などが増え、住民層が変化してきた ・部落解放運動の変化
⑤行政の変化
・一泊研修会などがなくなった ・謝金など
①~⑤のような変化とともに、教室のあり方や学習内容が変化してきています。かつては社会教育の専門職である社会教育主事が、地域の社会教育や識字学級の取り組みに関わっていましたが、そういった人たちが現場に関わることが少なくなっています。
学習内容・教材については、従来のように生い立ちや生活交流が行なわれている面もありますが、大阪府の調査などによると、積み上げ式のテキスト・例えば「みんなの日本語」や日本語能力検定試験対策に関するものが増えています。「生活者としての外国人」のための学習内容・教材として例えば文化庁5点セットなどがありますが、あまり活用されていない状況があると言われています。
2.ユネスコが提唱する3つのスキルについて
a.基礎スキル(いわゆる読み・書き・算)
b.特定場面スキル(仕事や生活の場面で必要なスキル)
c.人生スキル(悩みの解決などに必要なスキル)
ユネスコでは、a.b.cは常に同時に学ばれると言っています。ですから私たちが自覚的にこの3つを取り上げないと学習が結局今の社会で、はしごを登るためのようなものに終わってしまいかねません。はしごをのぼる、つまり「個人」の出世を目的とした「受験勉強」などの応援することが大阪の識字活動が目指してきたことではありません。
大阪における識字運動もそのような問題意識で生い立ちや生活を大切にしてきました。
3.ワークショップ"わたしの手"
a.4人1組のグループにわかれる
b.講師が"わたしの手"についてのエピソードを話す
※今回は、講師が風呂屋でケガをして左手の小指が取れかけたという話を例示
c.配布された紙に手の絵を書き、そこに各自の手にまつわるエピソードを書く
d.書いたそれぞれのエピソードをグループで共有
e.グループで出てきたエピソードを全体で共有
a?eの流れで、ワークショップを進めました。それぞれのグループで話し合ったことを全体で共有する際、あるグループは、ケガの話題が多く、また他のグループでは、小さい頃の生活や親のことを思い出したりして書いている人が多くでたとのことでした。「学習者さんの手は働いている手だ。教室でも色々な仕事をしてきたと話してくれる」、「自分の手だけど母の手を思い出す」、「今の手を見て書いたけど、過去を振り返る機会になった」との気づきもありました。
このワークショップは、昔、横浜・寿識字学校を主宰されていた大沢敏郎さんが行っていました。それぞれの手にまつわる"経験"を書き綴り、出し合い、わかち合う学習です。それぞれの生活や経験を語り合い、それを中心に教材を組み立てていくということは、これまで大阪の識字運動でも大切にされてきたことです。それを参加者同士で実践し、再確認しました。
各教室でもすぐに実践できる活動です。
この学習活動をとおして、教材観のとらえなおしを話し合いました。この教材の特徴は、プリントなどではなく、学習活動自身が教材になっているという点にあります。
4.ワークショップ"わたしたちの教室にある「活動としての教材」"
そこで、わたしたちの教室にある「活動としての教材」を出し合う活動に移りました。
a.同じ教室の人が一緒のグループにならないようにグループ替え
b.各教室で実践されている"わたしたちの教室にある「活動としての教材」"を各自ポストイットに書き出す
c.書いたポストイットをグループ内で共有・模造紙に貼り出す
d.それぞれが書き出したポストイットをグループ分けする
e.各グループで話し合ったことを全体で共有
各グループから出された学習活動については、以下のとおりです。
各グループ内でポストイットをグループ分けした際の項目は以下のとおりです。
(グループ1)
・身近な人権 ・みんなで力を合わせて! ・大切な仲間・教室 ・教室から飛び出そう! ・ものづくり ・食文化
(グループ2)
・食文化 ・体験 ・文章を書く ・ものづくり ・外へ出かけた
(グループ3)
・調理活動 ・ゲーム ・うた ・遠足 ・季節のイベント ・作文 ・色々 ・アート・表現
5.今年度の取り組みについて
事務局から、今年度、大阪府人権協会の助成事業として教材に関する学習会を開催し、それらをまとめて冊子にしていくことなどについての説明と協力のお願いをしました。
ここでいう「教材」は、プレワークショップで共有された「活動としての教材」だということが重要なポイントです。
6.全体会(大阪市内識字学級の交流会)での取り組みについて
6月に予定している本事業・学習会(交流編)となる全体会(大阪市内識字学級の交流会)の内容について話し合いました。開催日程は以下のとおり決定しました。また、活動内容のひとつとして、参加者が歌や手話などで交流できるよう、楽器演奏の提案がありました。
今回のワークショップ"わたしたちの教室にある「活動としての教材」"で、ある教室では、学習パートナーがギターを弾いて教室参加者みんなで歌を歌っているということがわかりました。その学習パートナーの特技をいかしてもらい、ギター演奏をお願いしました。また、ワークショップ"わたしの手"で、ピアノやアコーディオンの演奏ができる学習パートナーもいるとわかったのでその特技をいかして演奏してもらうことになりました。演目は、全体会(交流会)参加者が歌いやすいものにする予定です。
全体会(大阪市内識字学級の交流会)開催について
日 時:2019年6月29日(土)
場 所:すみよし隣保館寿 大会議室
対 象:識字・日本語教室関係者
参加費:検討中
7.事務局の気づき・感想
「活動としての教材」という問題意識を共有できたおかげで、それぞれの教室で豊かな学習活動が具体的にどのように実践されているかを知ることができました。また、参加者のふとしたつぶやきの中に識字学級で学んできたことの意味を考えさせられるものもありました。学習者の生い立ちから学習者パートナーが深く学ぶ・そういった取り組みを識字学級として実践している教室がある、ということがよくわかりました。ふとしたつぶやきには宝となることばや思い、願いがこめられています。今後の学習会の中でも大切に集め、まとめていければと思います。
今回講師に行ってもらったワークショップは、そのようなつぶやきや各教室で実践されている学習の豊かさがどんどんでてくるものでした。
※なお「活動としての教材」という考え方は「生きた字がほしいんや」(部落解放研究所発行)に掲載されています。この冊子は、1996年に発行されたものなので、現在の教室の状況に即した新たな冊子づくりが急務であると改めて思いました。
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①2019年度人権NPO協働助成金の募集案内
(http://www.jinken-osaka.jp/2019/01/2019npo.html)
②2019年度人権NPO協働助成金の助成事業が決定しました。
(http://www.jinken-osaka.jp/2019/03/2019npo_1.html)
③2019年度人権NPO協働助成金「事業説明会」開催しました。
(http://www.jinken-osaka.jp/2019/04/npo_10.html)
<活動報告>
① 「ドラァグクイーンによる絵本の読み聞かせ事業」
(DragQueenStoryHour in大阪実行委員会)
(http://www.jinken-osaka.jp/2019/05/npodragqueenstoryhour_in.html)
この人権NPO協働助成事業は、人権に取り組むNPO等のホップ・ステップ・・・を応援するために、大阪府人権協会の事業収益の一部を活用して自主事業として取り組んでおります。
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