温かい食と居場所の提供を通した子ども支援 |
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Habikino children's support network(ちるさぽ)スタッフ
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1.取組~事業内容
子どもたちが安心して居られる場づくりのために活動が行われています。
(1)子どもの夕刻を支える取組
①内 容 子どもと一緒にご飯を食べたり、遊んだり、宿題をしたりしています。
また、映画会やお誕生日会等のイベント、昔遊び等遊びも取り入れています。
②開催日 毎週木曜日17時~20時半(最終週はスタッフ会議)
③参加費 子ども:200円/回 おとな:300円/回
④所在地 羽曳野市南恵我之荘7-2-6
⑤親への説明 初めて参加した子の家には、メンバーが帰りに同行し、活動の説明と参加の同意を得ています。
<ある日のちるさぽの晩ご飯>
(2)時宜に応じた取組
デイキャンプやバーベキューなど屋外の活動も行っています。
(3)メンバーと運営
この取組に共鳴したさまざまな人たちにより、活動が支えられています。
ちるさぽメンバーとして、行政や社会福祉協議会の職員、大学生、民生・主任児童委、大学教員、市民活動団体関係者や活動にご賛同されたボランティアさんたちです。
定期的にスタッフ会議が開かれ、子どもの様子や活動内容について情報共有が行われています。
(4)予算
主な収入は、会費と寄付です。
家賃やスタッフの駐車場代は寄付によりまかなわれています。光熱水費や雑費などは
参加費や寄付などでまかなっています。行政などからの助成金は受けていません。
2.きっかけ~事の起こりや着火点
(1)取組につながるネットワークの存在
福祉に関係する有志の集まりのである「はびきのソーシャルワーク研究会(以下、SW研究会という)」という存在があります。当初は市役所内の福祉に関係する職員が集まる月1回の研究会でしたが、社会福祉協議会、市内の福祉関連の事業所、大学教員や学生へとその輪が広がっていきました。
研究会で培われた人的ネットワークが、ちるさぽスタッフへとつながっていきました。
(2)問題意識の共有
SW研究会や、専門職として行政や社会福祉協議会において困難を抱える世帯への支援を行っていく中で、次の課題が浮き彫りになっていきました。
①貧困による地域社会とのつながりの希薄・孤立⇒問題が潜在化しています。
②友だちづき合いや勉強等の機会が制限されている。
③家庭で安心して過ごせる場がない 等。
そして、問題点として支援体制が不足していることがわかってきました。
(3)子ども支援を業務として行えないジレンマ
学校から社会福祉協議会に、支援が必要な世帯に暮らす子どもへの支援の協力要請がされる場合があります。しかし、個人情報の問題などもあり、業務としてなかなか当該世帯の子どもへの直接支援ができないこともありました。
また、生活困窮者自立支援法施行以後、生活困窮世帯への支援策の一つとしてその世帯の子ども支援の必要性は認識されていました。しかし、市や社会福祉協議会ですぐ事業化というわけにもならず、ちるさぽの現スタッフたちはジレンマを抱えていました。
(4)仕組みがないなら民でつくろう
しんどい状況にある子どもたちへの支援を、「施策や仕組みができてから...」と待つのではなく、「ないなら自分たちでできることをやってみよう」という機運ができていきます。それを形にしていくために、SW研究会のメンバーの中で問題意識の共有をしていたメンバーがコアとなり、任意団体が結成されました。そして、準備会、キックオフ的な取組、本格実施へと動いていきます。
3.取組が実った要素~実現に導いたモノ
(1)仲間がいた
SW研究会含め、それまでの地域福祉の取組の中で培ってきたネットワークと志を共にする仲間がいたからこそ、取組が実現化していきました。
(2)メンバーそれぞれの業務における経験を活用
ボランティアさんや協力者さんになってくれそうな人など、働きかける目星をつくる、実際に依頼をするなど、メンバーそれぞれの業務経験を持ち寄り、社会資源の掘り起こしと活動への協力を集めていきました。
(3)機会をつかまえての説明(会)の積み重ね
話を聞いてくれそうな人や場があればとにかく出かけていき、活動の必要性と支援協力の依頼を行っていきました。そういったきめ細かな説明活動も、地域にこの活動が知られていくきっかけとなりました。
(4)テレビや新聞などメディアを活用
活動をたくさんの人に知ってもらうために、テレビや新聞などの取材は断らずに受け
てきました。メディアで取り上げられることにより、幅広い人に活動の存在を知ってもらうことができ、支援の輪の広がりにつながりました。
(5)地域・関係者からの支え
地域や関係者からのさまざまな支えにより、取組はスタートをできていきます。
<リフォーム前のキッチン部分>
<リフォーム後>
例えば、活動場所(上記写真)は地域の不動産屋さんが間に入り、取組の趣旨を理解してくれた家主さんが無償貸与をしてくれました。
キッチン部分などリフォームが必要な部分も、さまざまな人の協力で行ってきました。
他にも、備品等の提供をしてくれる方、地域の精肉店や小料理屋さんから食材やお惣菜の寄付や、ちるさぽに参加する子ども達の学校農園で取れた野菜など食材の提供、活動資金の寄付などにより活動は支えられています。
また、季節感や子どもたちの希望を組み入れながらご飯をつくってくれる調理ボランティアさんのおかげで、子ども対応にメンバーが専念できるなどの体制がとれています。
(6)できる人が、できることを、できる分だけお手伝い
買い出しだったらできる、食事つくるだけだったらなど、できる人ができる部分だけでも協力することができる仕組みがあります。
それは、そういった支援をつなぎ合わせるコーディネーター的役割を担うメンバーがいるからこそ成り立つ仕組みでもあります。
また、調理ボランティアさんなど直接子どもたちと関わる時間が少ない支援者さんと、子ども達を結びつける仕掛けがあるなど、何のための誰のための支援かを関係者で共有できる取組が行われています。
(7)見守ってくれる人たちの存在
ちるさぽの活動に共感してくれ、「見てるよ」「応援しているよ」という声をかけてくれる人たちの存在は、メンバーにとって活動をやめずに続けていこうとする力になりました。
そんな声かけも含めて、多くの人たちからさまざまなアイデアや助言がもらえたことが活動に役立っていきました。
4.事業による変化
(1)子どもたちの変化
①不安や楽しみなどを本音で話してくれるようになりました。
②例えばちるさぽのブログの更新は、参加する子どもたちの中で得意な子どもがしてくれるなど、役割を持って参加してくれるようになりました。
③安心できる場所として参加してくれるようになりました。
一例として...
不登校に取り組むNPOの居場所にいる子どもたちに、ちるさぽへの参加の声かけをする中
で来てくれた子どもがいます。ちるさぽに来てもほとんど話さず、小さな部屋に閉じこもりゲー
ムばかりしていました。周りの子ども達から「ゲームがすごいお兄ちゃん」と言われるようにな
り、そしてゲームを通じて会話ができるようになりました。ふと気づけば、閉じこもっていた小
部屋から、みんながいる広い部屋で過ごすようになっていました。
その子は、ちるさぽが始まって以来皆勤賞なのです。
(2)保護者の変化
①メンバーに学校や生活での心配なことを話してくれるようになりました。
②毎週この居場所に子どもが参加するのを楽しみにしてくれるようになりました。
また、保護者のレスパイト(一時的休息)機能ともなっています。
③支援で関わるご家庭の保護者に、ちるさぽでの子どもの様子を伝えることによって、家での様子を教えてもらうことができるなど、支援に向けたキャッチボールのきかっけとなっています。
(3)地域の変化
子ども支援への理解から、連合区町会として市に子ども支援の拡充を求める意見が届けられるなど、地域からの施策提言につながりました。
5.課題や提言、展望
(1)小学校区に1つの居場所が必要
子どもが徒歩や自転車など、自分の生活圏域に1つの居場所があるほうがよい。
(2)ご飯を食べることが目的ではない~活動に哲学と目的の共有化がある
子どもが貧困状態なのは、その子自身の問題ではなく、その世帯が貧困であるからです。お腹いっぱいになって終わりではなく、貧困状態におかれる世帯をつくりだしている社会構造への視点が必要となっていきます。スタッフ間でもそのことを共有し、ソーシャルアクション(社会発信)をしていくことが必要です。
(3)資金面と継続が課題
助成金などの支援がない中、活動を継続させていくためにも安定的な資金を得ること
が課題です。
メンバーは仕事を持ちながらの活動のため、いっぱいいっぱいな状況です。また、関
わる人たちの間でちるさぽへの思いや考え方がそれぞれ違います。個々人の状況や思い
の違いをどう合わせながら進めていくかが課題です。
(4)やりたいという思いが集まって広がっていく
「その問題を何とかしたいねん」という熱い思いを持った人が集まり活動することが、
活動を始めたり続けたりするエネルギーになります。また、その思いが色々な人に伝わ
ることで、活動が広がっていきます。
(2016年3月掲載)